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イレギュラー

遅いですけど、無職転生のアニメ観ました。構成力にテンポ、話しの膨らませ方とか正直嫉妬しそうな位に凄くてとてもおもしろかったです。ゼニスママンかわゆい

――冒険者とは大変だと思う。

身一つが資本で、地元を飛び出し夢見て都会へ。

何もない若者は地味な仕事を請けて装備やアイテム、冒険者としての心得、常識を覚えていざ晴れやかにモンスター退治!

と、ゲームでやるならばこんな感じに順当に事が運ぶのだろう。

でも、現実ってのは蓋を開ければ思う程キレイなものではなく、夢に破れて就職する路上シンガーが如く皆んなどこかで身を引くのが普通だ。

生き残ったのはそういう才能があったか、あるいは辞めるに辞めれない理由があったのだろう。

例えば、そう――悪~い人に出会って借金でがんじがらめにされて、返済の為に冒険者稼業を続けさせられて生き残る悪運が強いヤツとか。

――私だ。

いや、借金ではないし辞めれない理由が別にはあるんだけど、それでも気分は先輩に騙されて借金させられた大学生、、、、先輩は先輩でもバカの方の先輩じゃなくて普通の先輩の方。


今日も今日とて賠償金返済に追われる日々に、山を登って間もなく私はドクに聞いた。

「一応、確認するけどさ、どうするの?デカイ群れの討伐は?」

ドクに、聞いた筈だが返答は前から返って来た。

「んー?何ソレ?もしかしてわたしじゃ倒し切れないとか、そういう話し?」

「いや、そうじゃなくてな、昨日までの1,5倍の相手だから逃さない自信がなくて」

あーと、カナーは納得する。

「コホン。突入要員は私とカナーとお前だろ?残りは包囲要員だとして、、、、それで足りるの?」

「なるほど。つまりは、群れが三つあるとしたら包囲要員が心許ないって事だな」

「そうそう。先輩は一応石投げたりで役には立つけどさ、火力というよりかは拘束力が低いから。というか全体的に皆んな拘束力が低いかな?セレナさんは強いけど武器としては棍棒だけだし、ハリィは、、、、うん、そんなに強くないかな?」

拘束力が強いとしたら、多分にキドだろう。魔法でゴブリンを横転させてたし、もう少し力を使えばツタそのもので拘束も可能だとは思う。


「そうだな、キドは拘束力が高いが、ソレ以外のメンバーはからっきしだな。負けはしないが逃しかねない」

「あぁ、キドってやっぱり強いんだ」

「アイツは俺達唯一の魔法使いだ。自然魔法の使い手で、多種を扱うのを得意として、手管が多いぞ」

ドクのそのセリフに、後ろでキドが少し嬉しそうに笑う。

「だが火力的な面では非常に弱い。一人個人ではダメダメだ」

グハァ!と、ダメ出しされたキドはダメージを受ける。

「支援がコイツのメインの仕事だな。地味な、姑息な嫌がらせに近しい魔法で敵を妨害しながら、その間そ俺とカナーが狩るといった感じか?」

その言葉の通り、昨日の戦いでキドの魔法でゴブリンを拘束した間に、セレナさんが止めを刺していた。

どうやらこの運用方法は既知のものらしい。それと、『地味な、姑息な嫌がらせに近しい魔法』って言葉にまたダメージ受けてるぞ!


「――そういえば、ふと思ったけどニマはなにやってるの?」

あまりにも影が薄くて忘れてたが、ソイツが何をやってたか私は知らない。

「ニマか、アイツは積極的に参加はしてないが、十分に戦ってるぞ」

「積極的には参加してない?」

「アイツはなんというか、報告書作成の方に力を入れてるな。どれだけ殺したか、どう殺したか、どう戦ったかを詳しく記録している。非常に戦果が不明瞭なクエストにてギルドに成果を認められるには、一人位は観察に徹した人員が必要だと思ってな」

という事は、先輩みたいに積極的に包囲に参加してるセレナさんから一歩引いた位置で戦っている訳か。

「まぁ、心配するな。包囲は今まで通りで問題はない筈だ。今回の相手も同じ量しか相手しない。運が悪ければ違うが」

同じ量を相手?群れが三つなのに?

「、、、、時間ってのは便利だな。そして、共有してるってのは、それだけで驚異となる」



――意味が分かった。


時間、私の世界で定めてる一秒ってのはセシウム原子が電磁波を約92億回数放射する時間、とかだった筈。

現代で何気なく使ってた一秒というのは、割となんだかよく分からないが凄いもので、定義されている。

時というのは本当に緻密なものであり、それの狂いが時折大事故を引き起こす事になる。

例えばそう、別に大して緻密ではないが学校のイベント事の集合時間に遅刻して、一人だけ現地集合するような。

あるいは1時集合って言ってるくせに、5分前集合しなくて先生に怒られたり。

でも、これも全て時間が“共有”されてるから起こる事だ。

お互いの中で別の時間が流れてばいつに集まろう、なんて相談さえ成立しない。

したとしても、一方が待つか、待たされるかとなる。


ゆっくりと、音を立てないように私は茂みを掻き分けながら、私はゴブリンの宴が開かれる広場へ向かう。

中腰で、草木に紛れ、見張り番のゴブリンに見付からない様に、一歩一歩。

自分の歩に気をつけながら、それとは別に私の向かいにいる筈だろうカナーの挙動に気を配る。

作戦はいつも通り、カナーの突撃に合わせて群れを分断、恐慌状態で連携が出来なくなったゴブリンを掻き乱しながらこちらは外と連携して殲滅。

(本当は手を変え品を変えたいんだけどねぇ~)

同じ手を使うのは愚策らしいが、まぁ今の所討ち漏らしは多分ないし、相手に戦術を覚えさせる機会もないだろう。

まだ宴を開かず辺りを警戒してるゴブリンを隠れて見ながら、カナーの判断を待つ。


と、その時。

「とおぉぉ!このゴブリン共!俺が全員ぶっ殺してやる!」

警戒も解いてないゴブリンに、奇襲決行の合図のカナーの叫び声が聞こえる。

(随分と早いな。大丈夫か?でも、まぁ私も突撃――)

ん?“俺”?

「俺の名は鋼鉄の『パンサー』!ナブルカ村民の明日が為、お前等ゴブリンを討伐致すぜ!」

小豆色の髪と緑色のバンダナ、剣士風の装束を着た『パンサー』と名乗った男は、何を血迷ったかゴブリン相手に名乗りを上げ、たった一人で“真正面”から突貫した。


――理解が出来ない。

なぜゴブリン相手に名乗りを上げる。

なぜゴブリン相手に単騎で挑む。

いや、分からないのはこの際どうでもいい。

重要なのは――

私は“何をすればいい”?


突如発生した想定外の事態。

その予想外こそが私に戸惑いを与え、混乱させる。

(何を、、、、するべきだ?)

分からない。イレギュラー1つが、私と、見えない仲間との分かり合っていた筈の連携を、絶たれた気がした。

身一つ、深い山の中に捨てられ、ゴブリンの群れと真隣、味方との連携を絶たれたそれは――1人、世界から孤立した、途轍もなくちっぽけな人間の様だ。

怖い、身悶えした。

自分は何をすればいい?

このまま突撃か?それとも様子見か、はたまた別の何かか?

何をすればいいか、私には判断が出来ない。


ここで、ここで判断を誤れば――“人が死ぬ”。


人の生き死にが関わるこの選択に、今の私に出せる答えは、ない。

後悔の念が過る。

やはり別の戦術をとっとけばよかった、と。こんな結果になると知らなくとも、方法を変える事は出来た。

なのになのになのになのに――――――


「ヘイヘイヘェーイィ!!わぁたしの、ダンスパーティーに乱入する無礼者は君かね――ェッ!!」

鞭を振るい、ゴブリンを倒しながら叫ぶ。

普段よりも大きな声、歌う時の様な腹から声を出した“音”に。

私の意識は引き戻された。

鬱陶しくて、うるさくて、やかましい声が、見えない皆んなとの、繋がりを意識させた。

「っぐ、うぁっ、、、、うおおぉぉ――――ぉぉおお!!」

喉を震えさせる。

自分がここにいるのを、皆んなに教える様に。

剣を振りかぶって一閃、点検した剣は柔らかい果実を踏み潰すみたいに頭蓋を叩き割った。


「うおっ!なんだお前等!どこから現れたんだ!」

名乗りを上げた男は、私達が飛び出したのを見て悠長に声を上げる。

「へへ、まぁ別にカンケーねー事だな。俺は変わらずゴブリンを殺せばいいだけダァー!」

剣を抱えて私と同じ様に突撃。

戦いに慣れてるのか、硬直してた私と違い速攻で判断からの滑らかな行動。

だが――「ゴスッ」

バカが正面きって宣言したせいで、混乱しなかったゴブリンが冷静に石斧を一つパンサーの頭に投げ撃った。

重たい音が響いて、パンサーはよろける。

「ギャギャっ!」

よろけた横に、ゴブリンが石槍を突き出される。

石斧を皮切りに石槍、石剣、拳、歯がパンサーへと向かう。


結果は容易に想像が出来た。

――振り返る事はしない。

見るべき敵は、前にいる。

「ギャアアァァァ!」

恐れで逃げてた昨日と違う、人を襲う為だけに生まれた、醜い小鬼が武器と悪意を向けている。

「ふんッ!」

剣を素早く横に薙ぐ。

重い剣が沈む様にゴブリンの頭を切る。

途中半分まで剣が入り、剣に脂に脳髄、血潮がベットリと纏わりつく。

「シッ!」

「ガァっガァァ、、、、」

視界端にゴブリンが映った。

石斧を握り、私を殺そうと襲い掛かるゴブリンが。

脳に刺さった剣を抜き取って、大きく振るう。

断末魔と共に、ゴブリンは胸から血を滝の様に流す。胴を斬り、心臓まで達した剣に血液が伝う。


近くのゴブリンを三匹倒し、少し息をつくが――そうとはいかない。

ギャアギャア、ギャッギャギャッギャ。

幾つものくすんだ黄色い瞳が、私をギョロリと見詰めてた。

10に近い数の悪意を孕んだゴブリンが、狂気を手にして取り囲む。

昨日まで感じなかった数の不利を、今強く感じている。

「――――ウオォォ!!」

鬨の声を張り上げ、拳を振りかざす。

「ッグげっ!」

この数相手ならば、剣よりも素早く打ち込める拳の方が有利だと判断した。

だが、打ち込まれた拳は剣と違い、ゴブリンを一撃で殺す程ではない。

私は魔力を腕先に集中させる感覚をイメージしてもう一撃打ち込む。

叩き込まれた拳は、とても打撃による攻撃とは思えない感触と衝撃を与えてゴブリンを死に至らしめた。


「ゥウウオオオォォォォォォォ――――――――!!」

拳を叩き込んだ瞬間、やっとかという速度でアイツがやって来る。

雷轟の様な衝撃に、小鬼共は震え上がる。天敵が現れると。

だが、誰一人として逃走する事はなく、天敵を迎えようとしている。

小鬼にとっては絶大なる勇気であろうそれは、棍棒の一振りで覚悟を決めた諸共を肉塊へと化した。

「――ゥゴウン」

棍棒が風を震わす音と共に振るった一撃は、鎧を纏った騎士さえも叩き潰すかの如き質量を纏ってた。

棍棒を受けたゴブリン4匹、右から左、全員がグシャグシャに骨が折れ曲がり、皮の外へと突き出して吹き飛んだ。


「遅いよ。もう少し早く来れなかったの」

ドクに向かって、私は愚痴ついでに吐く。

「、、、、悪い。だが、数は俺の言った通りだろ」

「あぁ、本当だよ。全く、つくづく時間は便利だと思ったよ」

私達が今相手してるコイツ等は、数として群れが2つの規模だ。

何故三つの群れが集まると予想が出来る地点に、集まってるのが2つか。

本当に、本当にしょうもない位に単純な事だが、大前提としてモンスターには時間を表す明確な指標はない。

勿論朝や昼とか夜は分かる。だが、時間はモンスターには正確には測れないのだ。

だからこそ、彼等はもしも待ち合わせをするならば確実に“片方は待たされる”。

故に、その待たされる間の時間を突く――それだけの簡単な事で、私達はもう一つの群れを相手にしなくて済む。


「私、帰ったら今度は時計でも作ろうかな?」

あっ、やっべフラグ、、、、

「時計?もしかして持ち運べる小型な物か?」

「、、、、あぁ、そうそう。出来れば腕時計――いや、懐中時計なんかもいいかもしれないな」

死亡フラグ臭いセリフを誤魔化す様に、私は極めて明るく取り繕った。

異種族話しって結構想像力膨らませないといいの作れないんですよね。オークとかもう少し凝ってみたかったです

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