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種族差

実は今メチャクチャ疲れてます。

もう今すぐ寝たい位です。

――「さて、少し戦況を、、、、戦況と言う程ではないな。現状を纏めるか」


雨はまだ止まず、息が白くなる様な寒さに身を寄せる私達に、ドクはこんがり肉片手に語り出す。

「今の所俺達が前の偵察で発見した繁殖スポットは4つ。叩いたスポットは2つ。うち一つはアマツグのメンツの戦力を測る為に群れの集合前を叩いたので、もう一つが先程叩いた群れの集合体だ」

通常繁殖スポットにて集まる群れは2つが基本だが、3つ集まる事はよくある事で、4つの群れが集まるのも稀にだがありはする。

「一応事前にスポットに集まるであろう巣を確認した時、どのスポットでも2つの群れだとは予想される」

つまり、群れは計8つ。それを全て討伐すれば終わりだ。


だが――

「俺がここ一年のギルドのゴブリン退治の要請と、寄せられたゴブリン被害を見る限り、多分この山に群れは“もう一つ隠れている”」

「なっ!」

つまり、群れを一つ多く相手する事になるのか。

驚きも束の間、それだけではないとドクは口を動かす。

「それと、確認した巣の一つに通常の倍近い大きな群れがある」

ガブリ。現状を纏め終えたドクは、ゴブリ、、、、こんがり肉を骨ごとゴソッリと喰らう。うわっ、何か変な汁が出たよ。


半分グロ映像みたいな汚食事を見せ付けられながら、私は地味に寄って来る先輩を避けながら零す。

「うん。あ――家に帰りたい」

「よし、歯を食い縛れ」

「イキナリ強硬手段!?」

本音一つ零しただけなのに、ドクは指をパキパキと鳴らしながら返す。というか、オークも鳴るんだ指って。

「ちなみに、その群れはどうするの?」

「集合が予想されるスポットがある。次の次にそこを叩く」

「最後、ではないの?」

「最後はお前の戦力を分析する為に逃した群れを――あぁ、そいつ等を叩く」

何かを隠した様な言い方、追求してやろうかと思った時。


「おっ、ちょっと雨の勢いが弱くなったよ」

「よし、出発するか。キド、ニマ直ぐに発つぞ」

と、外の様子を見ずにカナーが言う。音でも聞いたのか、実際に確かに勢いは弱まっている様だ。

「休息は終いだ。続けて奴等を討つぞ」

急かす様な喋り方に、私は違和感を一段を感じる。

「えー。もう少し休みたかったな~」

「先輩石投げてるだけですから休憩はこれ位でいいでしょ」

「うへぇ~。ヒドイよぉ空ちゃん」

と、先輩はフザケて言うが、スクっと立ち上がる。

「では、あっしも」

「、、、、ん」

と、続けてセレナさんとハリィも。

「さぁ、さっさと行くぞ」

「――なぁ、何か誤魔化していると思うのは私の気のせいか?」

このオーク、絶対に良くない事を隠している。私の第六感がそう告げる。


「――――――、、、、行くぞ!」


こっ、この野郎、、、、



一発オークをどついて帰ろうとしたが、皆んなに全力で止められ結局また山中を歩く事になる。

しっかし――ダルい。

歩いてすぐ分かった。疲労で体が重い。

更に雨天によって体力を削がれ、ぬかるみに足を滑らせる。

戦いによる傷や怪我はないが、それでも体力は減る。

短い時間だけの休憩では、どうも体がキツイ。


「なぁ、一回帰った方がよくないか?雨が降り過ぎたぞ。気温も寒いし、これが祟って怪我をしたら洒落にならないでしょ」

疲れている。とは口に出さず、だが事実このまま更に多くのゴブリンの集団を相手にするならば、きっと何かボロが出る状況に私は異を唱える。

「帰還はしない。日が暮れるまでは続けるぞ」

またこのオーク、、、、

「思ったよりも早く大雨が来そうだ。まいていかんとクエストが続行不可能になる」

そう言ってドクは、真剣な表情でまた一歩踏み出す。

「酷い環境だとは分かるが、それでも俺達にはクエストを遂行する義務がある」

と、オークがそこまで言うと、前から斥候スカウトの二人が戻って来た。

「、、、、なるほど、集合はまだか。分かった」

報告を聞いたオークが頷き、皆んなに告げる。

「戦闘の準備をして待て。まだ群れは集合していない。集合の報を受け次第戦闘だ」

私は眉を潜めながら、もう一度剣の点検を始めた。



群れるゴブリン。その数や群れが2つ――総数50にも及ぶ多勢。

雑草を抜き、小さな木を伐り倒して作った広場は、今やそのゴブリンによる下劣な宴が始まりつつある。

一丁前に肴を囲い、粗末な楽器を鳴らして盛り上がる。

年に一度のイベントに、彼等は大騒ぎする。

しかし、その大騒ぎもある程度の階級か。やはり何匹かは番兵として突っ立てる。

そんな番兵に、幾分と派手な格好をした長と思わしきゴブリンが食べかけの肉を投げつける。それを彼等は渋々拾って咥える。

彼等にも肴がない訳ではないが、それは大きく中央の集団に劣る。

そして、長と思わしきゴブリンは、食事もそこそこにメスのゴブリンに近付き――押し倒す。

まるで肉を食うように身体を貪り、肉欲をぶつける。

長の行動を引き金に、またもう一匹の長もメスを襲う。

続けて一匹、二匹、三匹――――


――反吐が出る。

無性に怒りが湧き出る光景を、私は茂みに伏せて待つ。

波の様に伝播する欲の嵐。

それを享受するゴブリン共を尻目に、番兵はおもしろくなさそうに見詰める。

そわそわと、集中力がなくなり、軽快が疎かになった時。


鞭が風を凪いだ。

番兵の興味が中央に移った瞬間。

肉欲で頭一杯のゴブリンの一匹を、飛び出したカナーが鞭を一振り。喉笛をエグリ飛ばした。

糸が切れる様に血を吹き出して倒れるゴブリン。

ソイツをカナーは蹴っ飛ばし、中央にブチ込む。

お盛んなゴブリン達は一変、喘ぎ声から叫び声が狭い広場に木霊する。

長なんて下半身丸出しでスッ転んで逃げ回る。

逃げて逃げて、部下を踏んづけ回りながら逃げて――首が飛ぶ。


ぬかるむ土を全力で踏み込んで、剣を振るった私は、醜く逃げ惑う長の首を切り飛ばした。

「――うっッらアァァァァァ!!」

血と骨髄を撒き散らしながら飛ぶ首を掴んで、私は逃げるゴブリンの一匹に当てる。

ぬかるむ地面と相まって、転んだゴブリンに、私は直様剣を突き立てて殺す。

「ぎゃぅぐ、、、、」

たった二匹切っただけだが、もう刃物として期待出来そうにない剣を私は投げる。

「ぐげっ!」

「がグッ!」

投げた剣は二匹を巻き込んで地面に突き刺さる。

だが、私は剣を回収せず、装備したガントレットで近接戦に挑む。

中央へ向かって駆け、勝鬨を上げて二撃、三撃と前にいたゴブリンを殴り殺す。

魔力による強化で青白く光るガントレットが、残光と共に振られる。


戦術は先程と同じ、中央に私とカナーが飛び込んで群れを掻き乱し、周りを他の皆んなが包囲を作る。

逃げるゴブリンも、先程と同じく外の攻撃に撃たれ、殴られ死んでゆく。

「ソラ!」

武器のない私を見かねてか、某スレイヤーさんよろしく拝借した武器を私に投げ渡す。

「サンキュー、カナー!」

雑に作られた石斧をシッカリと握り、横に薙ぐ。

骨をかち割る鈍い音を立て、子鬼の頭蓋を陥没させる。

拳と石斧、2つを用いて私は淡々と狩る。

ゴブリン共が大いにハッスルした甲斐あり、戦闘準備を取れてない奴等を殴るのは簡単だった――


――「ゴスッ」

だが、唐突に不幸は訪れた。

ゴブリンが投げただろう石が、カナーの頭部にクリーンヒットした。

クリティカルヒット。

そう呼べるタイミングの攻撃は、カナーが油断した瞬間に打ち込まれ、側頭部から血が流れる。

しかし、ゴブリン程度の投石では気絶する事はあっても、死ぬ事はない。

カナーは辛うじて気を取り留め、地面を踏んで――“滑った”。

「――――っ!!」

雨でドロドロになった土が、カナーの足を滑らせた。

いけない。彼女はダメだ。

私が滑ろうが、転ぼうが、ハッキリ言ってどうでもいい。どうせ死なないから。

だが、彼女は違う。このままコケれば、ゴブリンの餌食となる!


「カナ――「ッカアァァナァ――――――――――――!!!!」


手を差し伸べ、助けようとした時。森を揺るがすかの如き咆哮が轟いた。


野太く、獣の様な声が、ゴブリンを震わせる。

記憶の奥底にある、天敵の声だと、ゴブリンは理解する。

地を鳴らし、緑色の巨人が進撃する。

一匹、その巨人の進路に偶然いたゴブリンを、巨人は鎚の一撃でグシャグシャに殴殺した。

巨人の戦鎚はゴブリンの骨を砕き、内臓を破り、筋肉を裂いた。

風船を割る様に子鬼を殺す鎚を、カナーに群がる子鬼に何度も、何撃も入れる。


「オオオオオォォォォォ――――――――!!」


吹き飛ぶ四肢、噴水の水が如く吹く血潮。

地獄の惨状を呈す中、一匹のゴブリンが巨人に噛み付いた。

武器もなく、己よりも遥かに強大な敵に立ち向かったゴブリンは、その意趣返しと言わんばかりに巨人に前頭葉ごと生きたまま“顔面を噛み喰われた”。

そして、顔肉と舌と眼球と脳髄のシェイクが、ゴブリン達へと血霧として吹き掛けられる。

叩いて叩いて、一人で20近い数を葬った巨人、ドクは思い出すかの様にカナーへ駆け寄る。


「カナー!大丈夫か!?」

心配で、普段見せない声色でそう訴えるドクに、カナーは冷静に返した。

「ドク――落ち着いて」

冷静さを欠き、まるで狂人みたいに暴れ回ったドクに、カナーがそう諭す。

「――――――、、、、悪い、俺とした事が熱くなってしまった」

「いや、そういう事じゃないんだけどね」

側頭部を抑え、立ち上がったカナーは奇跡的にと言うべきか、血潮まみれではあるものの、ドクによるフレンドリーファイアが一切なかった。


「さーて、残るは後少し。大分ドクにやられちゃったけど、わたしは負けてらんないよー!」

改めて鞭を握り、カナーは持ち前の元気を発揮する。

「これに勝ち負けもあるのか?」

「ある!わたしがナンバーワン!」

「ほう?まさか、この状況で俺に勝る算段があるのか?」

「ははは。そんな手段があるなら、私にも教えて欲しいもんだな」

散り散りと逃げるゴブリン。その数はどう贔屓目に見てもドクが潰した数には及ばない。

だが――「残りを全部わたしが倒せばオッケー!」

それをドクどころか、私にも一匹も倒させなければ、可能な数だ。


「イ――ッツ、ダンスタ――――イム!」



「むー。負けた」

何故勝てると思ったのか、と聞きたくなる事をカナーが呟く。

「フン、まだ俺に勝てると思うなよカナー」

「お前は、、、、少しは大人気ないとは思わなないのかよ!」

疲れ切った私は、へたり込みながら、私は吐く様に叫ぶ

「悪いな、Pとしてまだアイドルに越される訳にはいかんのでな」

「やめろ、プロデューサーをPを訳すのをやめろ」

「次は!次はわたしが勝つよP!」

「お前も――いや、そんなんよりもどんだけ元気あんだよ、、、、」


血潮と、肉に臓物――半分はドクが作ったものが、目の前に広がる。

生き物だったものが、等しく全て肉塊として転がってた。

腕も、身体も、頭も元の形を留めない形で。

(これが、種族特性の差なのか?)

大鎚を軽々と振る筋力に、頭蓋を噛み砕く顎。

戦車みたいな突撃は、正直味方である私でさえも恐れる突撃だ。

今まで亜人は人間しか見てこなかったが、まさかここまで性能差があるのか。一応悪魔は見たが、アイツは戦闘力は雑魚だったし。

「――怖ぇな」

オークでこれなら、巨人ギガント食人鬼オーガとかはどうなるんだろうか?


「ねぇ、先輩。今って何時だと思いますか?」

「んーと、多分午後三時かなぁ?」

「午後三時、ですか、、、、」

その言葉を二度三度口の中で転がして、意を決して口を開く。

「ドク。もう、帰えろう?さっき見たでしょ、滑って危ない事になるって」

日が経って本格的な雨期の到来でクエスト続行が不可になるとしても、それが仲間の命に代えられるか。

「クエストを行かなくちゃいけない理由に、確かに私の責任が大きいけど、無意味にそれでも続行するってなら、、、、私の判断で私達は“退くよ”」

ズルズル引っ張る形でコイツの指示に従ったが、流石にこれ以上は従えない。

撤退する意志を、私は表した。


――「もし、俺達が続行してクエストを遂行した時、お前等に金が入らなくてもか?」

脅しと取れるセリフ。だが、どこかおちゃらける様な。

「それで、命を拾えるのなら、私はどんな大金でも安いと思うよ」

随分とありきたりで、よく聞く言葉が出た。

ありきたり。そう、ありきたりだ。

けれども、私は一度死んだんだ。


「人生って、本当に一度しかないんだぞ」


例えもう一度あっても、知っている同じ人生は歩めないんだ。


「、、、、、、、、分かった。俺達も下山しよう」

そう言ってオークは踵を返して下山ルートへ向かう。

「あまりにも急ぎ過ぎた判断でカナーを危険な目に合わせたのは俺の責任だ。俺が指揮し続けていい筋はもうない。それに、カナーで滑るなら次は絶対に誰かが滑る」

素直に間違えを認める態度に、私は少しだけ意外だなと思った。

オークに続きカナーとキド、ニマも下山する。

「ごめんね、ソラ君。ドクは変に突っ張っている感じだけど、本人はそれなりに考えている事があるんだ。だから、少し多めに見てくれるかな?」

「まぁ、少しだけなら」

すれ違いざま、キドは申し訳なさそうに仲間を擁護する。

「ドク殿は頭はキレるんですが、いかんせん色んな知識なり経験なりが足りていないので、レディ相手にもあんな失礼な言動をとってしまって。本当にすみませんでござる」

と、更にはニマから謝罪も入る。

一応、コイツは仲間に慕われているのは傍目からも分かってたが、擁護と謝罪が入るとは。

コイツ等は一体どうやって出会ったのか、少し不思議だ。あと、カナー。お前も何か言っとけ。


「――なぁ、さっきのアレ、本当なのか?」

私も踵を返して、今度はドクに聞く。

「アレ?あぁ、報酬云々か」

「うん、ソレ。もし本当にやるなら私も手段を考えようかなって、、、、」

「そうだな、それが正しい。どんな手段を使うのか?」

なぁ、冗談って分かってくれよ。頭がキレるって言われたんだから。

「ジョークだよ。でも、本当にやるなら考えないとな」

危うく犯行の手筈を考えるところだったが、どうやら真剣に考えなければならない様だ。

「安心しろ、嘘だ。そんな筋の通らん事はしない」

キッパリと、真っ直ぐに正面を向いて断言する。

「一度手を組んだ相手を切るのは俺の流儀じゃない」

「その姿で流儀を語ると何だか変だな」

「人間にはそう見えるだろうが、オークの俺にも流儀はある」

それと、そう前置いて歩みを止めないままドクは私を見詰めて突き放す様に言った。


――「お前の仲間を守る流儀は誇れるものだ」


言い切って、ドクは視線を前に戻して歩き続ける。

誇れるもの。

随分と昔に聞いた様な響きに、私は振り返って見る。

そこには一人、私が命を懸けて守れたカナーがトボトボと転ばない様に歩いてた。

隣にはセレナさんに、少し奥に泥だらけの先輩。

皆、私が誇れる守るべき者で、私に誇れる誇りを与えた人達だ。

遠く、現代生活でどこかへ行った誇りを、今抱きしめながら、私は下山した。

なろうって評価ポイント上がれば沢山の人に見られやすくなるらしいです。色んな人に見られたいので評価とかレビューとかお願いします。

まぁ、見られたら恥ずかしい部分が沢山あるけど。

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