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変化

読者の皆様遅れて申し訳ありません。何分忙しいのと、新たな作品の執筆で遅れてしまいました。

前の様な友達に悪巫山戯で見せる様なのと違い、少し自分が書いてみたい話しを書いてみました。

タイトルは『PB:αテスト版』です。多分明日投稿ですが、、、、

涙が流れている様な濡れた頬。小さな白い翼。

そして、血をベットリとついた剣。

ゴブリンへ向ける無情な瞳。


――天次空だ。

「、、、、次」

剣を握り直し、次の獲物に照準を合わせる。

だが、そうはさせるまいかとゴブリンは一斉に襲い掛かる。

けれども、その突撃は金属音と共に弾き返される。

空を覆う青白く輝く白い翼に。

「やはり、雑魚には有効だな」

靴が地を蹴る、雨水が弾ける。

強く踏んだ足が推進力を生み、前進と共に剣を振り下ろす。

「――ぐぎゃッ」

いかにゴブリンと言えども、柔らかくはない強度を誇る頭蓋が、剣撃一つでバックリと割れる。

ブシャリと吹き出す脳漿が剣の切れ味を殺す。

拭き取ろうと一瞬立ち止まるが、どうやらゴブリンはそんな時間をくれない様だ。

振り向き様にやって来た二匹を殴って殺す。


中央で暴れる空、ゴブリンたちの視線は空一人に釘付けになり、その対応に迫られる。

――空以外奇襲を忘れて。

空気を切り裂く風切り音が鳴り響いて影が踊る。

「イーッツ、ダンシングタ――――イムっ!!」

踊る影、カナーはそう叫んでゴブリンの首を、その自慢の鞭で抉り切る。

革の鞭がその摩擦でゴブリンの薄皮を裂き、筋繊維を切断し、頸動脈を断つ。

運良く首を外し、事なきを得たゴブリンだが、直ぐに違和感を覚える。

僅かな痙攣の後、動かなくなる筋肉――麻痺毒だ。

不規則に、無起動に、舞う様に飛ぶ鞭は、頭の弱いゴブリンには避けるのは不可能という話しだ。


外からの新しい襲撃。それはカナー一人では終わらない。

サッと、音を立てずまた一つの影が忍び寄る。

一匹の、混乱するゴブリンが逃げようと森へ走った時、足がもつれた。

恐怖でもつれたのではない。何か、物理的な物でもつれた。

「――『蔦糸の罠(ライン・アイビー)』っと」

どこか遠くの声、その声に呼応して複雑に足を絡める様に蔦が成長する。

倒れて藻掻くゴブリン。起き上がる直前、杖が振り下ろされる。

円錐状の木の棒が淡く光り、転けたゴブリンの脊髄を穿つ。

死体となったゴブリンを足で払い、続け様に杖で逃げるゴブリンの頭部を殴る。

ボキッと、首の骨が折れた。

「ふぅ、、、、。――っ、、、、――――――――」

軽く息を飲み、影は駆ける。

本当に影の様に黒い修道衣をなびかせ、足音を立てずに広場の外周をセレナは走る。


空とカナー、二人が群れの中央に打ち込み暴れ回る。

その外をセレナがフォローし、更に外から鉛玉と石礫が飛ぶ。

チームプレーとはまだ言えないが、個々が尽くす役割が小さいながらも連携を果たし、数で勝るゴブリンを圧倒する。


「――ふぅ」

雨が降り、冷える山中だが私の体は熱く、汗もかいていた。

最近は地味に強敵揃いで忘れがちだが、私の体はゴブリン程度の攻撃では傷付かない。

「ぎゃぎゃ!」

一匹のゴブリンが、私の脇を通り過ぎた。

逃がすかと、羽を動かしてそのゴブリンを掬う様に押し出して、私の前に座らせる。

そして――

「ぅぐげっ」

血と油で切れ味の落ちた剣で、殴るが如く叩き切る。

だが、叩き切りも叶わず脊髄を打撃で割る。

「次、、、、」

ゴブリンの武器を拾いながら私は口にした。

だが、「もう終わりだ」


「もう終わりだ。まさかここまで活躍するとは正直思ってなかったぞ」

遠くで見物していたオークが私のすぐ後ろまで来ていた。

「まさか、あれだけ受けて傷一つ付かないとは」

「そりゃあ魔力障壁マナ・フィールド使ってるからね」

周りを確認しながら、ゴブリンの拾った武器を捨てて私は言う。

「違う、魔力障壁の強度ではなく、発動速度と反応速度だ。前々から思っていたが、お前は本当に魔力障壁の発動がうまいな」

カマを掛ける様なセリフ、しかしコイツが事情を知る訳がない。

「才能だよ、才能」

「、、、、そうか」

そう言って、私は逃げる様にオークから離れる。

「才能、か、、、、」

呟いたオークの声を忘れる様に。



「えっと、つまりは――ゴブリンと“洞窟で戦わなくていい”のか?」

出発前、私はあまりにも意外な事実に驚愕していた。

「うん。少なくとも今回は戦わなくていいと思うよ」

優しそうに言うキドの話し――というか、コイツ等の話しを纏めるとこうだ。


曰くこの地方は毎年この時期になると、大規模な雨が数週間降り続けるらしい。

昔は毎日雨が降る湿地だったらしく、気候の変動で毎日ではなくなっているらしいが、名残からかある時期になるとそのシワ寄せが如く降るんだと。

勿論強い雨なので人々の活動は一時ストップ。冒険者も一休みの時期だ。

そんな人が活発に動かない時期を見計らってか、山に潜むゴブリン達はこの時期に入る直前に積極的に繁殖をするらしい。ちなみに、この世界のゴブリンは某小鬼退治と違って雌個体がちゃんといるのだ。

その繁殖だが、いつ頃からかは分からないが、他の群れと落ち合ってえっと、あ――なんだ、あっ新しい血を入れる様になったらしい。ある種の、この地域の特徴の一つだ。

困った事にこの雨季が明けたら秋の季節、そしてゴブリン達は子の為に秋には意欲的に略奪をするのだ。

という訳で、それじゃ困るので駆除しておいてくれと――それがこのクエストの概要だ。


「群れ同士が落ち合うのは基本的に外だから、その時に襲撃すれば一網打尽に、しかも野外で戦える訳」

「へぇー。なんか、凄い新鮮な気分」

群れ同士でゴブリンが交流するなんて考えもしなかった事だ。

「そう?あと、君が心配した――ええと、うん。カナリエ君や、セレナ君、ハリィ君が攫われて酷い目に会うってのも、そんなに心配しなくてもいいよ」

恥ずかしい。何が恥ずかしいって、コイツが無駄にオブラートに包んでくれるのが恥ずかしい。

「そんなに心配しなくていいって、、、、やっぱりはそういう事をしたりはするの?」

「、、、、うん。ゴブリンだからね」

幾ら繁殖の時期で、人間が出産に使えなくとも、食料なり遊び道具なりでは使われるという事だろう。

「だからこそ、誰かがクエストをお願いしてる訳だよ。こうやって僕達冒険者が退治しても、毎年女子供が攫われて行くんだよ」

頭を掻き、力になれない自分を恥じる様に俯く。


キドは、このナブルカ村が地元に人間だ。一度や二度、知り合いの子供や娘が攫われたのを知っているのだろう。

「じゃあ、今年の村人は運が良いな」

極めて明るく、冗談めかして私は言う。

「この私が徹底的にゴブリンをシバいて、今年こそは誰一人として攫われない様にするぞ」

あぁ、そうだ。

クエストは天から降って湧く様なものではない。

誰かが祈って、願ったからこそあるものだ。

だからこそ、私はその想いに最大限応えるべきだ。

もう――ゲーム感覚じゃないんだ。

「、、、、うん、そうだね、今年は僕達が村を守ろう!」



「なぁ、私達――今ゴブリン退治をしてるのか?」

強く降る雨は勢いを衰える事なく地上へと降り注がれる。

群れをほんの3つ壊滅させただけで、こうも強く雨が降りやがった。

これでは少し仕事にならないと、殺したゴブリンの巣と思わしき穴に入って雨を凌いでいる。


「まぁまぁ空ちゃん。焦らないで焦らないで。休憩する事も大事だよ――はむっ」

「ですね、ソラさんは特に疲れている事でしょうし、休憩は必要ですよ。はむ」

「少し、休憩した方が、ハリィはいいと思う。、、、、むぐ」

はむはむと、ジギルとハイドちゃんのパンを食べながら三人は言う。

今日二人がくれたパンは、いつものあのサンドイッチではなく、ただのフランスパンだ。

確かに無茶な動きをするだろうクエストで、あのサンドイッチじゃグショグショになるだろう。だからといっても、これだけじゃ味気ない。

のだが、焚き火を囲ってパンを適当に焼きながら塩を振って食べると、何だか反則的なまでにおいしい。

こう、空腹感に訴える味っていうのか、外で直火で焼いたパンに塩を振って食べるというシチュエーションが理想的だし。

それに――「空殿、果物いりますか?」

「じゃあ、一つ」

ニマがどこからか拾って来た果物が、口に潤いと糖分を与える。

「ありがとうニマ。おいしいよ」

「ならよかったでござる」

なんだろう、何か反則的だ。


「にしてもソラ!それ反則だよ!」

「だよねー。このシチュエーションは反則だよねぇ~」

「ちょっと!何の話ししてるの!」

おっと、自称アイドルがお呼びだった様だ。パンがおいいくてついつい勘違いしてしまった。

「何が反則?」

「その羽だよ!」

「羽の何が反則だ、、、、あっ、まさかこの羽根焼いて手羽先にしようってか!?ヤダよ!」

確かにここにチキンがあればもう手が止まらなくなるだろうけど、だからってそれは。

「その羽根強過ぎるよ。それでゴブリンから守れるし、殴れるし」

「あぁ、確かに強いけど、それが何が反則だ?」

心の中で言っとくが、この羽多分本当は相当脆いぞ。相手がゴブリンだから強いだけで、中堅クラスの敵となるとアッサリ切られると思うぞ。

「こんなに強かったら、わたしが討伐数一位になれないじゃん!」

「そっちかよ!」

「逆にこっち以外にどっちがあるの!私はナンバーワンアイドルなんだから、討伐数もナンバーワンなの!」

「そうかそうか、ナンバーワンにならなくてもいいんじゃないかな?きっと誰かにとっては特別なオンリーワンだから」

私の中のムカつくヤツ一位とかな。


「つーか、ドク。お前は今の所作戦提供しかしてないな」

露骨な話題逸しだが、本人は気にしてたようで、ピクリと眉を動かす。

「あぁ、この体では少しゴブリン相手に不利なんでな」

それに――

「ヤル気がない訳じゃないんだ。ただ、あまりにもヤル気がありすぎて周りを心配しているんだ」

ドクの形相が正しく鬼の様に歪み、腕が震える。

「ゴブリンとオークは同じく略奪等を生業とする生物ながら、お互いの事はめっぽうキライでな、よく縄張り争いとかで殺し合っているよ」

明らかに怒気を孕んだ声音、だがドクはそれを全力で抑える様に語る。

「昔の記憶なもんでハッキリとは覚えていないが、俺も何度か奴等を争った事があるぞ。奴等は常に姑息で卑怯で、クソッタレな分際だ。オークの子供をコッソリと攫い、嬲り殺しにする様なな」

グッと、拳が強く握られる。

「そんなクソッタレを見てるとな、殺したくて殺したくて、震えが止まらないんだ。今すぐに殺意に飲まれそうな程に俺の心は憤怒で一杯だ。自制するのがやっとだ」

そう言ってドクは無性に腹が立ったのか、何故か連れて来たゴブリンの死体の頭を叩き潰す。それはもう、人間でも果物みたいに粉砕可能な勢いで。


「以上が、俺が作戦提供しかしてない理由だ。分かってくれたか?」

「――あっ、あぁ分かったっよ。悪かったな聞いて」

主に憎しみが。

「気にするな、俺も引け目がある事だ」

そう言ってドクはゴブリンから手を離す。

「ホラ、気分転換にパンでも食べよ。ちょっとドクが食べるには量が少ないかもだけど」

「いや、大丈夫だ。そのまま食ってくれ」

俺は――ドクはそう言いながら離した筈の手を再び伸ばして。

「コイツを喰う。よくやってた事だ」

一体何の為に持って来たか謎なゴブリンの死体を、火にくべて、オークは呟いた。

(わぁ、上手に焼けました~♪)

皆様は雨が好きですか?私は結構好きです。

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