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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

僕のもの

作者: アシタカヒコ

是非閲覧ください。

 肌温かい夏風に、彼女の艷やかな髪はなびいた。彼女はボクの初恋の子、岡崎 美羽。ドジでお茶目だけど情が厚くて誰に対しても平等に接してくれる。なにより彼女は美しいということ。ボクの腕の中で愛おしく包みたい、どうせなら彼女をボクのものにしてしまおう。そう思うボクって、オカシイよね。いや、オカシくてもいい。ボクにとって彼女は女神なのだから。

 7月中旬、ボクはある計画を企てた。何を隠そう「岡崎 美羽監禁計画」だ。計画内容としては、まず山縞公園に「話がある」と彼女を呼んで、気を抜いたところで彼女の口元をハンカチーフで抑え気絶させて、森の秘密基地に監禁するんだ。ボクの興奮は止まらない、もう誰にも止められない、彼女の為ならなんでもする、それがボクのモットーだからね。

 その晩、ボクは自室に籠もり独りノートに計画内容を書き込んでいた。やりたいこと、したいこと、欲望はとどまることを知らず、縦横無尽に脳内を駆け巡った。「ご飯だよー」と一階から母が呼ぶ、しかし、このときボクは集中の余り外部の音が聞こえていなかった。しばらくすると、ドアの向こうから「ヒロー、ご飯だよっ!」と強く怒鳴る声がする。しかし、聞こえていなかった。ガチャっと扉が開きこちらへ歩み寄った母がノートを覗きこんだ。そのときだった、母は獅子の如き速さでノートを奪い取り、顔を真っ赤にしているではないか。ボクは「終わった」と確信した。母は下民を見つめるかのように鬼の形相でボクを見、大きな手のひらでボクの頬を叩いた。甲高い音が部屋に響く。

「あんた、なに書いてるかわかってる?」

「うぅん」

「恥と思いなさい。こんなこと、二度と書くんじゃありません」

「はい…」

計画ノートは母によって処分され、計画は水の泡となった。正直落胆はしていたが、彼女へ対する想いは消えていなかった。

 あれから7年ほど経った、俺はもう成人。立派な社会人として世間様で働いてる。会社の給料も文句なし、彼女はいないがとても充実した生活は送っているつもり。

 退屈な会社、そんなある日転機が訪れた。新入社員だ。中々顔は整っていて、俺の好みだった。

「えー…、3月よりここに配属されました、諏訪野(すわの)美羽と申します。何卒、宜しくお願いします!」

中々元気の良い社員だな、こいつは期待できる。俺とは同い年らしいし、休み時間に話しかけてみよう。

「あのぉ…」

「ぁ、あぁ!宜しくお願いします!横村さん、でよろしいですか?」

「は、はいぃ…」

「えーと、早速質問で申し訳ないんですが、ご出身はどちらでしょうか?…」

「広島ですけど…」

「ホントですか!私も広島なんです!え、広島のどこらへんですか?」

「呉です…」

「おぉ!奇遇ですねぇ、私も呉なんですよ!」

「…!?」

「まぁ、私見ての通り新米なので、なにかあったら宜しくお願いしますね!」

こいつ…、やはり期待できるなぁ…。

 8月、実家から連絡があり「父が危篤状態だ」とのこと。俺は有給をとって広島にある県立病院へと向かった。父の顔はこけ、腕もほっそりとして、まるで干からびたミミズのような姿だった。親父はキラリと涙を浮かべ、やがて事切れた。その後遺品整理と偽って夕涼み。実家、変わらないな。妙に高い塀とか、押しづらいチャイムボタン。まぁそんなことはどうでもいい。俺は入るやいなや階段を駆け上り自室へと向かった。俺が上京した当時と外観はさほど変わらない、俺は高校まで使っていた勉強机へと向かい、ふと引き出しを開けた。ボールペン、消しゴム、ノート…。懐かしいものが勢揃い。はて、こんなノート使ったけ。一冊だけ妙に気になるノートがあった。表紙には「ヒミツ」とだけ書かれている。一枚めくるとそこには見覚えのある写真が貼られていた。岡崎 美羽、俺の初恋の相手じゃないか。ページを次々にめくっていくが、そこには彼女の写真がところ狭しと貼られていた。そうか、俺は彼女を監禁しようとしてたんだ、閉ざされていた心の扉が開いた気がする。

 10月某日、実家から再び連絡が入った。何何、おぉ、高校のときの友達じゃないか。同窓会をやるらしい、日程は今週の土曜だそうだ。高校、高校と言ったら黒歴史しかない。あの一件だってその一つ。心の奥底で何かが芽生えた気がする。

 話の通り土曜に、実家のある呉で同窓会が催された。懐かしい面々だなぁ、あいつ結婚したんだ…。すると、ふと目の前に見覚えのある顔が横切った。

「あ、あのぉ…」

「…え!?あ!?」

新入社員の諏訪野さんだった。

「ど、どうしてここに…?」

「こちらこそ、どうしてここに…?てか、私誰だったかわかります?」

「えっ…」

「私、18のときに母が離婚して名前が諏訪野に変わったんです。」

「…旧姓って、なんですか?」

「岡崎です。」

俺の瞳孔はカッと開き、手の震えが止まらなかった。まさかとは思ったが、諏訪野さんが岡崎 美羽だったとは、この上ない衝撃に思わず立ちすくんだ。そしてまた、心の奥底から何かが這い上がってくるような気がする。その時、俺は一つ決心がついた。

 二次会が終わり、いよいよ帰るムードが出来上がってきた頃。俺は彼女を店の外、近くのちょっとした公園にに呼んだ。

「話って…なんでしょう…?」

「いや、あの…。」

俺の興奮はおさまらず、徐ろに胸ポケットからハンカチーフを取り出した。彼女はキョトンとした顔でこちらを覗くが俺には一種の愛情表現だとしか受け取れなかった。俺は彼女の肩を抱きハンカチーフで彼女の口元を強くおさえる。彼女は暴れるも、その甲斐虚しくその場で倒れ込んだ。ボクは誰にも見られぬよう、森の奥地へと彼女を運んだ。ん、なんだあの建物は。すると目の前に木で作られた小さな小屋が姿を現した。ここにしよう。ボクは眠りについた彼女の姿を見て、暫し震えていた。捕まったらどうしよう、死なせちゃったらどうしよう、と不安が募るばかり。だが、こんなことで怯えていては何もできない、ボクは彼女の服を力いっぱいに破いた。所々垣間見える白い素肌がより興奮を掻き立てた。ボクは彼女の腕をふと持ち上げ、疎ましいほどに手の甲を舐めずった。少し塩っ気の効いた味は、まるで初恋の味。ボクはやがて全身を舐めずっていた。ハッと我に帰ったかのように彼女は目を覚ました。押さえるが暴れはおさまらなかった。ボクはふとそばにあった太い木の棒を手にし、彼女の頭を力いっぱいに殴る。グスッ、グスッ、と重い音が耳を貫く。やがて彼女は力尽きたかのように暴れなくなった。そしてボクは彼女の手足を縄で縛り、付近の川に放流したのである。泳げなくなった彼女はやがて溺死するだろう。ボクは人殺しだ、最低だ、クズだ。だが、彼女はボクのもの。誰にも渡さない。

【終わり】

読んでいただきありがとうございましたm(__)m

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