終章
竜の国の勇者レヴィンは鬱蒼と茂る森の中を歩いていた。
勢いに任せて飛び立ったのはいいが、行き先については何も考えていなかったので、ひたすら森の中を歩く事になったのだが……。
「ゆーしゃ様、さっさと歩いて下さい。早くしないと日が暮れてしまいますよーっ」
「それくらいわかってる。それより……」
レヴィンは溜息をつく。
「お前、何で裸なんだよ!」
そしてつい、怒鳴り声を上げてしまう。
「だってしょうがないですよ。私はまだ若いドラゴンなんですから。おじー様みたいに服を着ているように見せる魔法は使えないんですよ」
「……三年前のじーさん、ずっと裸だったのかよ」
げんなりとうな垂れるレヴィン。
ドラゴンから人間の姿に戻った時、リーゼは裸になっていた。靴も履いていないから自分の足で歩かせるわけにはいかず、レヴィンはリーゼをマントで包んでお姫様抱っこして森の中を歩き続けている、という状況である。
道があるのだから、歩き続ければきっと民家に辿り着くだろう。そうしたらリーゼの服と靴を調達しなければならないが……。
「いいか、リーゼ。お前は人さらいに連れ去られていたところを助けられたっていう設定だからな。誰かに会ったらちゃんと答えろよ」
「わかりました! 私、さらわれているんですね!」
「それじゃ俺が人さらいだろうが!」
レヴィンは怒鳴り声を上げた後、また溜息をつく。そしてリーゼはというと、何が楽しいのか、ひたすらにこにこと笑っている。
勇者大戦は終わった。
しかしそれぞれの国が抱えた問題は、今も変わらず人々を苦しめている。
戦争では問題はなくせない。ただ負けた方に問題を押し付け、見えなくするだけだ。
この辛い事や悲しい事だらけの世の中を、人は山積みになった問題から目を背ける事なく、顔を上げて歩き続けなくてはならない。
時に人は目の前の問題の大きさに嘆き、絶望し、世の中を憎んでしまう事だろう。
……かつての砂の国の勇者ヒルケのように。
「ゆーしゃ様、この先に何が待っているのか、楽しみですね!」
「ああ、そうか。それは良かったな」
はしゃぐリーゼに、レヴィンは苦笑いを浮かべる。
だから決して忘れてはならない。
大きな問題の影に隠れてしまいがちな、誰かの笑顔や人の幸せの事を。
笑顔は力をくれる。笑顔だけが絶望に立ち向かい、困難に打ち勝つ唯一の武器なのだ。
一人一人の力は小さくても、たとえすぐに問題を解決する事はできなくても、諦めずに立ち向かっていけば、きっとできる事があるに違いない。
「そうだろ、ヒルケ」
木々の隙間から顔を覗かせる空を見上げて、レヴィンは絶望の果てに道を誤った友人に語りかける。
だからレヴィンは歩き続ける。
まだ幼いドラゴンを道連れにして。
「勇者大戦」、いかがだったでしょうか?
前作「大使館物語」の流れを汲んで外交要素を取り入れつつ、バトル要素を盛り込むと面白いかなー的な割と雑な発想から始まった本作ですが、それなりに上手くいったのか、何だかんだで第19回電撃小説大賞で四次選考まで残るという、そんなに長くない投稿生活で自己最高の記録を達成しました。
ちなみに出版しようという声、俗に言う拾い上げという奴で担当の編集さんが付いて改稿に取り組んだりもしたのですが、結局は出版には至らなかったのですが。
ラノベ作家としてやっていくには単純に面白いラノベが書けるだけではダメだという事を学びつつ、今となってはいい思い出です。
そもそも出版するほど面白いのか? と自分を卑下しつつ、まあそれなりに楽しく書けたので良しとしますか、的な。




