第三章その11
竜騎士レヴィンを背に乗せ、紅玉の竜リーゼは空を駆ける。
大きく広げた翼が空気を叩く都度、陽光を受けて紅玉の輝きを放つ鱗に包まれたリーゼの身体は加速を増し、風を追い越して突き進んでいく。
遠くに浮かぶ魔王の姿がみるみる近付き、周囲に浮かぶ眷属の姿も見えてくるが……。
“……ひいいいいいいいいいい!!!!!”
リーゼは律儀にも念話で悲鳴を上げ、急に方向転換する。
「わたたたたたっ! いきなりどうしたんだよ!」
“だ、だって! アレ気持ち悪いですよ! なんかウネウネしてるし! ヌメヌメですよ!”
「お前なあ、そのカッコで情けない事言うなよ……」
“見た目はともかく、中身は純情可憐な乙女なんですよ! 仕方ないじゃないですか!”
「………」
レヴィンはがっくりとうな垂れる。
“わ、わかってますよ! そんな事言ってる場合じゃないっていうのは! でも気持ち悪いものは気持ち悪いんです! 生理的に受け付けないんですよ!”
「……わかった。何とかしてやる」
“え? 本当ですか?”
「ああ。竜騎士はドラゴンと通じ合っているから、そっちで受け入れればドラゴンの身体をこっちから制御できるんだ」
“へーっ、そうなんですかーっ。じゃあそれでいきましょう。どうすればいいんですか?”
「身体の力を抜いて、リラックスするんだ。それから何も考えず、頭を真っ白にして……」
“は、はい……”
リーゼは羽ばたきをやめる。紅い竜の身体は滑空しながら徐々に高度を落としていく。
「……よし、いいぞ!」
レヴィンが声を上げると、高度を落としていたリーゼが反転、翼を力強く羽ばたかせて急上昇を始める。
“ゆ、ゆーしゃ様! 無理な動きはやめて下さい! 痛い! 痛いです! 翼がもげます!”
「おーっ、じーさんと違って若いから、身体が柔らないなあ。動きがいい」
リーゼの抗議もどこ吹く風、レヴィンは急上昇から滑空に入る。速度を上げて魔王へと一直線に突き進む。
“あのう、これって……”
リーゼは今になって気付く。身体のコントロールを明け渡すという事は、逃げ出す事も目を閉じる事もできずにウネウネヌメヌメに突撃をかけなくてはいけないのではないか……。
“……ひいいいいいいいいいい!!!!! やっぱりストップ! ストップして下さ~い!”
「このまま一気にいくぞ!」
“ゆ~~~る~~~し~~~て~~~っっっ!”
レヴィンがリーゼの悲鳴に耳を貸すはずもなく。
竜騎士と若いドラゴンの姿は真紅の槍のように突き進んでいく。




