表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者大戦  作者: 千里万里
63/73

第三章その10

 勇者たちは目的の塔に着いた。

 街の中心部近くの広場から街全体を見渡せるように造られた、石造りの塔だ。

 勇者たちはここまで進軍してきた勢いのままに広場を埋め尽くす眷属たちを薙ぎ払い、体勢を立て直すヒマを与える事なく、塔の入り口付近を制圧する。

「フローリア、頼むぞ。アリアーネとフォルナはフローリアを守ってやってくれ」

 塔の扉を開放したボロスが指示すると、三人も順番に答える。

「……わかった。後は頼む」

「任せてよね」

「みなさんもご武運を」

「じゃあ行ってきます」

「おい、ちょっと待て!」

 どさくさに紛れて三人に付いていこうとしたクライナーの首根っこをボロスが掴まえる。

「お前さんはこっちだ。俺と一緒に塔を守るぞ」

「えーっ? 僕の月の神ルテナの盾はフローリアさんたちを守るのに都合がいいじゃないですか! っていうか美しい女性を守るのが僕の使命なんです! むさ苦しい男たちと一緒におぞましい魔物と戦うなんて嫌です!」

「あの三人なら大丈夫だ。っていうかお前さんは女の側にいたいだけだろうが!」

「それのどこがいけないんですか? 美しい女性を愛でるのは僕の責任で義務です!」

「お前さんはこっちでやる事があるだろうが」

 その時、二人の頭上に影が差す。クライナーが手にする月の神の盾が自動的に結界を展開する。

 それは長大な触手だった。塔よりもはるかに高く浮かび上がる魔王の下から生える触手が、小賢しい人間どもを薙ぎ払おうと振るわれたのだ。

 結界と触手がぶつかり合う。月の神と闇の神の拮抗する力の激突は、月の神に軍配が上がった。触手の一撃は激しい火花を散らしただけにとどまり、虚しく引き下がっていく。

「やはりこっちにいて正解だっただろう?」

「ぐぬぬ……」

 月の神の盾は一体一体は弱い眷属には効果を発揮しないが、魔王本体の触手には極めて有効だ。五百人の兵士を守り、塔が根元から破壊されるのを防ぐため、自分が下に残るべきだと苦々しく認めざるを得ない。

 そしてボロスは狼の獣人から熊の獣人へと姿を変える。後は塔を守るだけで、移動する必要はない。機動力の高い狼であるより、膂力と防御力に秀でた熊の方が適切だ。

「勇者よ! ここにいる五百人はいずれも勇者として讃えられるに値する資格を持っている!」

 ボロスの大音声が響く。

「世界の命運はこの一戦にかかっている! 俺たちがこの塔を死守できるかにかかっている! この一戦が正念場だ! 戦え! 勇者たちよ!」

 勇者はそれぞれの国に一人ずつ、という慣習を覆し、この場にいる全員がそれに値すると叫んだボロスの言葉に、五百人の兵士が奮い立たないはずがない。押し寄せる荒波のような鬨の声がボロスに応える。

 不退転の覚悟を胸に、五百人の勇者は敵を見据える。

 さらに数を増した眷属、そして魔王の触手を前にして、その決意は少しも揺るがない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ