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勇者大戦  作者: 千里万里
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第三章その8

 五人の勇者と五百人の兵士が進軍していった後、交易の国の首都を見下ろす小高い丘には紅玉の鱗のドラゴンと竜騎士だけが残された。

「……すまなかったな」

 レヴィンは傍らのリーゼに話しかける。

“え? どうしたんですか?”

「じーさんがお前を連れて行けって言うから、交易の国を見て歩いて、旨いもん食って帰るくらいのつもりだったんだが……成り行きとはいえ、とんだ事に巻き込んじまったな」

“何を言っているんですか。私は嬉しいですよ。みんなのためにできる事があって”

「………」

“ゆーしゃ様。私は今までずっと山に閉じ籠もって、家族とだけ暮らしていました。ゆーしゃ様はそんな私を連れ出して、広い世界を見せてくれました。世界にはたくさんの人がいる事を教えてくれました。

 そしてみんなそれぞれに自分や周りの人の幸せを考えて、一生懸命に生きている事を知りました。ゆーしゃ様もアリアーネさんも、みんなみんな……”

 リーゼは首を下げ、レヴィンに鼻先を擦りつける。

“でもそれぞれ求める幸せの形が違ったり、幸せを実現する手段を間違えたりする……だから悲しい事が起きるんですね。悪い人なんて一人もいないのに……”

 二人の目は遠く交易の国の首都に浮かぶ魔王の姿を見据える。

「そうだ。だから世界から争いは絶えない。だから俺たち勇者は戦うんだ……でも敵を倒すためじゃない。手を取り合うためじゃなきゃいけないんだ」

“ゆーしゃ様。私、この世界の事をもっと知りたいです。きっと世界には楽しい事や嬉しい事がたくさんあって、でもそればかりじゃなくて悲しい事や辛い事も山のようにあって……でもそんな世界だからこそ、私はもっと知りたいと思うんです。

 この世界のために、この世界に暮らすみんなのために、何かしたいと思うんです”

「知ってるか? リーゼ」

 レヴィンは立ち上がり、リーゼの首筋を撫でてやる。

「お前のその気持ちを、愛って言うんだよ」

“愛……”

「いつか旅に行きたいな。気の向くまま足の向くまま世界のあちこちを巡って、たくさんの人に会って……」

“はい。それはきっと素敵ですよね”

 しかしまずは魔王を倒してからだ。誰よりも純粋に故国の民の幸せを願い、絶望の果てに道を間違えた勇者を倒して、世界に平和を取り戻す。

「んじゃ、そろそろ行くか」

“はい。お供します”

 低く下げたリーゼの首に、レヴィンは軽々と跳び乗り、跨がる。手にした槍を一回転させると、それは長大な騎兵槍へと姿を変える。

 竜騎士槍。

 ドラゴンの血を受けた竜騎士だけが手にする事を許された伝説の武器。

 それが今、真の姿を現す。

 そしてリーゼがその翼をはためかせると、その金色の巨体は軽々と宙を舞う。二度三度と宙を旋回して針路を定めると、魔王へ向かって一直線に突き進んでいった。

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