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第二章その41
勇者大戦、第九戦目。
幾つもの熱闘で観客たちを湧かせてきた勇者大戦の最終戦。いつもは熱い歓声で満たされる闘技場だったが、今日ばかりはその熱狂も冷めた物だった。
闘技場の真ん中に立つ二人の勇者。
一人は竜の国の勇者レヴィン。竜の血を受け、竜と共に生きる道を選んだ竜騎士である彼は、厚い鎧に身を包み、竜を模した兜を被って、槍を肩にかけた勇壮な姿で立っている。
もう一人は砂の国の勇者ヒルケ。熱い直射日光に晒される砂漠に適した、白い厚手の衣服に身を包み、目元だけを残して頭と口元も隠した少年。
観客が白けるのも無理はない。六カ国の勇者に戦いを挑んだヒルケはこれまでの五戦を落としており、最終戦で勝利を掴むなどとは誰も思うはずない。詰め掛けた観客にとって、勇者大戦はすでに終わった物と同じ。消化試合のような物だ。
そんな客席の白けたムードを余所に、二人の勇者は熱い視線で互いを見据える。ヒルケは砂の国とその民の未来と名誉のため、レヴィンは竜の国のため、そして砂の国とその民のため。どちらも譲れない物のためにここに立ち、必勝を誓っている。闘技場に漂う空気など些末な雑事でしかない。
勇者大戦、最終戦が始まろうとしていた。




