第二章その35
「えげつない戦い方をするな、フローリアは」
そう言いながら、口元はにやりと笑みを浮かべるボロス。
「倒しても倒してもまた新しい複製が生まれる……精神的に追い詰める作戦ですかね? あんな手は誰だって嫌になりますよ」
うなずくクライナー。
「……あのう、フローリアさんはどうしてあんな戦い方をするんですか? 僕と戦った時みたいに派手な攻撃魔法は使わないんですか?」
そう尋ねるのは初戦でフローリアと戦い、敗戦を喫したヒルケだ。
「あれは……意地だな」
答えるのはレヴィンだ。
「意地……ですか?」
「ああ。二人が何のために戦っているか、覚えているか?」
「えっと……世界を創造したのは神様だとか、そうじゃないとか……」
「そうだ。光の神の教団では世界を創造したのは三つ柱の神だと説いている。しかしそれでは『神が世界を創造する以前の世界』がどんな世界だったのか、そもそも何が神を生み出したのか説明が付かない。神の奇跡では無から有に転ずる事はできないからな。傷を塞ぐ事はできても、失われた手足を再生する事はできない。死者を蘇らせる事もできない」
「で、でもアリアーネさんは魔法で水の槍とかを生み出していたんじゃ……」
「あれは違うわ。空気中の水分を集めているだけ」
私の魔法は光の神の奇跡じゃないけど、と付け加えるアリアーネ。
「ところがフローリアは神の奇跡では成し遂げられない事を成し遂げる。自分の腕を再生させ、それどころか切り落とされた腕から自分の複製を作り出す事さえやってのける」
「………」
「わざわざあんな面倒な戦い方をするのは……フローリアなりの意地なんだろうな
「はあ……レヴィンさん、魔法を使うわけでもないのによく知ってますね。すごいです」
「えっへん! うちのゆーしゃ様はすごいんですよ!」
と、リーゼが自分の事のように胸を張る。
「まあこれくらいは勉強しないとな、勇者として。さて、試合はどうなるか……」
一同は改めて試合に注目する。




