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第二章その32
翌日、闘技場はいつにも増して緊迫した空気に包まれていた。
対峙する二人の勇者は共に女性。
一人は夜の国の勇者フローリア。夜の闇を思わせる黒いローブを着て三角帽子を被り、長い杖を手にした年端もいかない小柄な少女の姿。しかしその正体は千年の時を生きる“不死の女王”。古今東西の知識を手にし、“始原の渦”による無尽蔵の魔力を駆使する、生きながらにして伝説的な存在となった賢者である。
もう一人は神聖王国の勇者フォルナ。光の神の神官服にすらりとした長身を包み、右手には槌鉾を提げ、左手には盾を携えた、完全武装の女性。その出で立ちはまさに光の神の教義が謳う法による秩序と正義を体現する、凛とした勇姿。光の神の寵愛を一身に受ける聖女は毅然としてその身を衆目に晒す。
勇者大戦、第七戦目は唯一の女性同士の対戦になる。
夜の国の勇者フローリアは自らの信念と母国の行く末を懸け、神聖王国の勇者フォルナは自らの信仰と母国の権威を懸け……二人は戦場に立つ。




