第二章その24
アリアーネを医務室に担ぎ込んだレヴィンだったが、後から追い付いてきたフローリアとフォルナとリーゼに追い出された。
「しばらく男の人は出入り禁止です! ゆーしゃ様もです!」
とはリーゼの言。
追い出されたレヴィンは、さらに後から追い付いてきたボロス、クライナー、ヒルケの三人と一緒に、医務室の前で所在なく佇む事になった。
しばらく待たされた後、ドアが開いた。顔を出すのは神聖王国の勇者フォルナだ。
「お待たせしました。アリアーネさんが落ち着いたようですので入って下さい……ああ、クライナーさんはダメですよ」
「え? どうしてですか?」
「……ご自分の胸に手を当てて、よく考えてみてはいかがですか?」
「……胸に手を当ててみましたが、アリアーネさんを心配する真心しか感じられません」
「そうですか。では光の神の鉄槌であなたの胸を打ち砕きましょう。邪な心が出てくるかも知れません」
フォルナがすっと目を細めて槌鉾を取り出すのを見て、クライナーは青ざめる。
「すみません、急用を思い出したのでちょっと行ってきます。アリアーネさんによろしくお伝え下さい」
「よろしくお伝えしませんが、どこへでもさっさと行ってきて下さい」
逃げるように走り去っていくクライナーの姿が見えなくなるのを確認して、残りの三人ににこやかに笑いかける。
「さあ、どうぞ」
「うむ、邪魔するぞ」
「……お、おう」
「………」
三者三様の表情で医務室に入った三人を、ベッドの上で身体を起こしたアリアーネが迎える。
「あ、来てくれたんだ」
「アリアーネさん、大丈夫ですか? 怪我はありませんか?」
「ありがとう、ヒルケ君……でも大丈夫。掠り傷ひとつないわ」
にこっと笑顔を見せるアリアーネ。
「アリアーネ……」
陽気で豪快な獣人らしからぬ神妙な面持ちのボロス。
「いつも胸が小さい小さいと言ってすまなかった。服の上から想像していたよりは……」
「しっかり見ているんじゃないの!」
ぱんっとボロスの頬が鳴る。打たれた頬をさすりながら、ボロスはニヤリと笑う。
「……まあこれだけ元気なら心配いらないな。神妙にしているよりはその方が似合っているぞ、森の乙女」
「もう……」
アリアーネは苦笑いするしかない。
「……レヴィン」
アリアーネは竜騎士の名前を呼ぶ。
「さっきは助けてくれてありがとう。助けてくれたのがあなたで……本当に嬉しかった……かな?」
頬を染めて、えへへーっと笑うアリアーネ。
「まああれくらいお安いご用だ。また何かあった時は助けてやるよ」
「うん……頼りにしてるよ♪」
「あのう、アリアーネさん?」
フォルナが二人の会話に割って入る。
「ん? どうしたの?」
「アリアーネさんの胸を一番近くで見たのって……助けに行ったレヴィンさんですよね?」
「………」
「………」
「……いやいや、ちょっと待て。俺は助けに行ったのであって見に行ったわけじゃ……」
「……見た?」
アリアーネが半眼で睨み付ける。
「………………………………………………………………………見るつもりじゃなかったんだ」
「レヴィンのバカーーーーーーーーーーッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!」
ぱんっとレヴィンの頬が鳴った。
「……まあ……あれだな」
騒ぎを離れて見守っていたフローリアがぽつりとつぶやく。
「……アリアーネが勝って怪我もなかったし、良かった良かった」
「ですね♪」
リーゼも相槌を打つ。
「良くない!」
「良くないわよ!」
レヴィンとアリアーネの声が医務室に響いた




