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第二章その19
翌日、その日も観客で溢れかえる闘技場には、二人の勇者の姿があった。
一人は森の国の勇者アリアーネ。最も美しい種族と言われるエルフの女性だ。動きやすい皮の鎧に華奢な肢体を包み、携える武器は肩にかけた弓と腰に提げたレイピアだ。勇壮にして可憐な姿に、男女問わず観客の視線を引きつけてやまない。
もう一人は交易の国の勇者クライナー。銀髪の美青年はしなやかな肢体を衆目に晒し、観客席に向かってにこやかな笑顔を振りまくと、女性の観客の歓声は熱狂的を増し、もはや矯声と言ってもいいほどだ。右手には剣を、左手には月の神ルテナの紋章を刻み込んだ大きな盾を携えているが、他には防具の類は一切身に付けていない、奇妙なスタイルだ。
絵画から抜け出したような美しい二人の勇者の姿に観客の熱狂は増すばかりだが、この一戦に森の国の命運がかかっている事は、観客の頭の中からはとっくに消え去っているに違いない。
観客の熱狂を余所に、二人は静かに戦いの始まりを待つ。




