第二章その11
「ゆ~しゃ様~! がんばってくださ~い!」
「リーゼちゃん……二人とも勇者なんだけど……」
「それを言うなら私たちみんなが勇者だが」
観客席で立ち上がって声を上げるリーゼに、アリアーネがツッコミを入れ、さらにフローリアが冷静にツッコミを入れる。
「……それはそうと、ヒルケはここに来るのは初めてか」
フローリアはヒルケに話を向ける。
「そうですね。一戦目と二戦目と、あそこで戦っていましたから」
闘技場の中心で対峙するレヴィンとボロスを遠くに見下ろして、ヒルケはしみじみと言う。
「……昨日と一昨日と、『翡翠と紅玉の夕べ』亭にも来なかったな?」
「ええ、王様に呼ばれていたんです。今夜は行きますよ」
「……そうか……二戦続けての敗戦だったから、きつい事を言われたのではないか?」
「あーっ、私も気にしてたのよ」
と、アリアーネも割って入る。
「いえ、それはありませんでした。次の対戦でがんばれと励ましてもらいました」
「……そうか」
「僕の事より、レヴィンさんとボロスさんの対戦ですよ! 二人ともまだ僕と戦っていないから、しっかり戦い方を見て対策を考えないと」
「……それがいいな」
「あ、あのーっ、フローリアさん!」
リーゼが身を乗り出して声を上げる。
「ボロスさんは獣人の族長ですよね? なのに見た目は普通の人間と一緒ですよね?」
「……一言に獣人と言っても、二種類いる。ひとつは常に獣人の姿をとっている者。ボロス殿の弟のバド殿のような者だ。そしてもうひとつは自分の意志や月の満ち欠けなどの条件により、人間から獣人の姿に変化する者だ」
「なるほどなるほど! ではボロスさんはどんな獣人に変身するんですか?」
「……見ていれば今にわかる」
そうつぶやくように言って、フローリアはヒルケを振り返る。
「……ヒルケ、槍という武器の最大の強みは?」
「長いリーチを生かし、相手の間合いの外側から攻撃を仕掛けられる事です」
「……そうだ。では弱点と対処法は?」
「槍の弱点は、自分の間合いの内側に入られると対処が難しい事です。いかに槍の攻撃をかわし、相手の懐に潜り込むかが鍵になります」
「……素晴らしい。この対戦はそこに注目してみると良い」
「はい」
ヒルケは熱い視線をレヴィンとボロスに送る。
一同が見守る中、試合が始まった。




