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第1話『崩れる日常から』

なろうで『純粋にかっこいい』主人公を書きたいと考えました。初投稿です。

今回転生してないけどね。


──ここはとある異世界。「邪神帝」と呼ばれる、

所謂魔王のような存在が君臨し、統治する世界…

そびえ立つ城塞にて、邪神帝はなにかを感じ取る。



「……む…これは…」



「…フフ……来るか…『お前』も…」



そして、策が実を結んだ軍師のようにほくそ笑む。



「来るがいい。そして我と同じ未来を辿るのだ…」



「フフフフ……」




少年は、異様な場所で目覚めた。



「…?なんだ…ここは…。」



空は血のように赤黒く染まり、地は重々しく淀む何かに満たされていた。



そこに形のはっきりしない異形の黒い何かが現れた。



「っ!?」



突然現れた「何か」に驚き、慄く。



(なんだ…こいつ…!?)



得体が知れない。まるで周囲に恐怖を纏い、それが自分に向けて撃たれているような未知。



「フフフ……そこまで怖がる必要はない…」



「…!」




恐怖のあまり声が出ない。



目の前が揺らぎ、そのうち視界の中心を渦巻くように変わる。



「なぜなら…お前は…」



…そこで黒の中に放り込まれ、何も見えなくなった。





「……ぃ、ぉ…ろ…!……ま!」



「…?ん…」



「おい起きろ、降魔(ごうま)!」



「んん…」



どうやら、先程のあれは夢だったらしい。



「何だよ香苗(かなえ)…人が寝てんのに…」



「何だよって…今何時だと思ってるの?」



「…うぇ?えーと…4時半だな…」



「そう。もうとっくに掃除は終わってる。」



「あれ…?掃除…?」



(…あぁ、そうか。こいつの掃除が終わるのを待ってたら寝落ちしたのか…)



「また君夜更かししたのか?」



「世界ランク8位とった…」

「内容は聞いてない」



「…ナイスなツッコミだ。」





俺の名前は降魔 極(ごうま きわむ)。ちょっとばかし…いや、ものすごくゲームが得意な事以外は平凡な男子高校生だ。



「いやー午後イチの授業も起きてられたから最後まで行けると思ったんだが…」



「…相変わらず睡魔には勝てない、か。」



「そゆこと」



で、そんな俺と話してるのはクラスメイトの香苗 悠(かなえ はるか)。…女のような名前だが、しっかり男だ。

…ほんとに女にしか見えないけど。



「…で、なんだ。またいつもの愚痴か?」



「うぐ」



「…身長伸びない声変わらない子ども料金でいいといわれる…もう何度も聞いてるわ」



「…男としては不服なんだよ!」



「そうか」

「適当に流すな!」



「毎回帰るの待たされて愚痴聞かされる俺の身にもなってくれ…」



「むむ…ふん!どうせ僕はそれがお似合いだよ!どうせまたバスの運転手に『子ども料金でいいんだよ?』

って言われるのが筋だよ!」



「…よくわかってんな」



「降魔…君ほんとにそういうところだよ…」



「モテないの…」



「…うるせぇ」





「ただいまー…」



「おかえりー」



「…って、おいサオ。それ俺の部屋の…」



「いーでしょどうせ。読まないんだし。」



…で、こいつが俺の妹、降魔 咲織(ごうま さおり)

生意気な妹をそのまま映像化したようなやつだ。



「でも珍しいね。お兄がこんなの買ってくるなんて。えーと…『転生してでも俺TUEEEしたい』ねぇ。」



「友達が俺によこしてきたんだよ…『参考書代の横領発覚を防ぐ為に協力してくれ!』ってさ。」



「だからこんなにあるんだ。」



綺麗な表紙の本が10冊程度積み重なっており、サオは既に5、6冊読破したようだ。



「後せめてもっと丁寧に扱え…一応預かり物なんだから雑に放っておくな…」



「え〜?いいじゃん別に。こっちは秘密を守ってあげてるんだからさ。むしろ今回のをダシにその友達を思うがままに…いたっ」



本でサオの脳天を軽く叩く。



「何を思い付いてんだ…」



「叩く事ないでしょ…」



「でもさ、お兄。」



「なんだ?」



「お兄ってこういうの嫌いじゃなかった?」



「あ?…あー……まぁな」



「へー…なんで?」



「…だって、ゲームだって最初はレベル1とかから始まって、弱いところからどんどん強くなって、強敵を倒して…ってなるだろ?」



「うん」



「なのに、こういう…なろう系?はそういう過程を全部偶然か神様とかからもらった、で1ページもかけずに終わらせてるんだぞ?」



「強くなる過程が一番面白いのにそれをどうでもいいかのようにカットして無双してるのが気に入らない」


※個人の感想です。決してそのような作品を執筆している作者様を否定するものではありません。






「…ま、確かにマンガとかは強くなるのも一つのストーリーとして組み込んだりしてるよね…」



「…まぁ後これは疑問なんだが」



「最初から主人公強くしてストーリー構築うまくいくのか?」



「案外うまくいってるよ。実際これ面白いし。」



「そういう作品の方が構成力とかが問われるんじゃない?」



「…まぁそれもそうなんだが」



「…あ、あとお兄。」



「なんだ?」



「ランキング下がってるよ。」



「え、マジ?」



「はいこれ」



そう言ってサオは携帯の画面を見せてきた。




「19位まで落ちてやがる…」



「いやー暇人もいたもんだねぇ」



「超えてくる」




そう言うと、極は自分の部屋に戻っていった。



「…コンビニ行くみたいな感覚で超えられるの?」






「…よし。なんとか10位まで持ち直した…」



『お兄〜!』



「なんだー?」



『ごはんできたよー!』



「すぐ行くー!」





他愛もない会話をしながら、箸を進める。



「…あれ、今日って当番俺じゃなかったか?」



「そーだよ。」



「じゃあお前がやる必要は…」



「本気のゲーマーを止められますかっての。」



「…なんか悪いな」



「そのかわり洗濯とかはやってよね。」



「おう」



「あ、あと私出掛けるから。」



「え?こんな遅くにか?」



「もう…言ったでしょ、今日から旅行行くって。」



「…あー…明日から夏休みか。」



「そゆこと。」



「あれ、じゃあどちらにせよ俺が色々やるんじゃ…」



「あ、それもそっか」



「じゃ帰ってきてからお願いね」



「おう」






「…はぁー」



夕飯を食べ終え、あらかた片付けや洗濯を終えて息をついて座り込む。



「サオがいないと静かだな…」



(この調子なら当分ランクは大丈夫だろう…)



一時はどうなる事かとおもったが、今は4位まで挽回した。



「…宿題やろうか…?…いや、気分が乗らない。今日はやめにしよう…」



「…寝るか」



現在は9:30程度、少し早いが就寝する事にした。





「…」



…俺は、気づいたら訳のわからない場所にいた。



白一色、壁も天井も床もあるようには見えないが、しっかり床はあるようだ。



(…夢か?これ…)



最初はそう思ったが、思考も視界もはっきりしており、夢とは考えづらい。



「夢じゃないならここは…?」



直前の記憶を必死を探る。だが、このような場所に見覚えもないし出掛けた記憶もない。



だが、ある記憶が頭をよぎった。



「俺は……!…そうだ!俺は…!」



蘇ったのは、炎の中で力尽きる自分。



気づいた時にはもう遅く、家全体に火は周り、逃げ場はなかった。



そして追い討ちをかけるかのように、俺に瓦礫が崩れてきて…



…そこから先は想像がつくだろう。




「俺は…火事で死んだのか…」



その割には熱さも痛みも感じないし、火傷の痕もどこにも見当たらない。



「じゃあ今の俺は魂だけの状態か…?それとも痛すぎて逆に何も感じないのか?」



「あの後どうなった…?」



様々な疑問が湧いてくるが、とりあえずは…



「まずはここが何なのか、だな…」



見たところ青天井…いや白天井と言うべきか。見上げても特に天井らしきものはなく、延々と続いているようにも、すぐそこに限界があるようにも思える。



「とりあえず動き回ってみるか」



壁は見ただけではよくわからなかったので動いて確かめる事にした。



―――

――



「はーっ…はーっ…」



特に何もない。限界も壁もない。おそらくずっと続いているのだろう。



「床も特にない…ただコンクリートなのか木なのかわかんないくらいか…」



そもそも下は続く感じがしない。さっきも走れて、今立っていられるのだから、こちらの謎は特にない。



「五億年ボタンみたいだな…」



延々と続く空間に何となく見覚えを感じていた。



(…もしかして、五億年ボタンを押してるんじゃ…)



という一抹の不安が頭をよぎった。



「いや、ないな。疲れてる。」



本当に五億年ボタンなら疲れや空腹、眠気はないはずである。



「…でもしっかり疲れたから、魂ってわけでも…」



「…余計にわけがわからなく…」



「そう案ずることはないぞ。少年。」



突然後ろから声をかけられ、ビクッとしてしまう。

振り向くとそこには…



「…お爺さん?」



長い白髪を持ち、大量の髭を蓄えた、いかにも「お爺さん」といった風貌の老爺がいた。



「まぁじじいなのは間違いないがな。」



「…」



「どうしたのじゃ。」



「…聞きたいことが山ほどある。…あんた何者だ。そもそもここは何なんだ。俺は今どうなってる。あの後どうなった。俺はこれから…」



「まぁ聞きたいことがあるのは山々じゃが、一旦落ち着いてから話そうじゃないか。ほれ。」



と、その老爺が上に手をかざした。すると、座布団とちゃぶ台、お茶や煎餅などの物が一瞬で現れた。



「…!?」



疑問は更に増したが、理解できることは一つある。



ここは、普通の世界じゃない。







「…」



「…ずずっ。ふぅ〜」



柱の立った茶をすすって、話し始めた。



「…さて、何から話そうかのう…」



「まずわしが何者か、じゃが…」



「普通の人間じゃないのはわかる。手をかざしたら物が現れるなんて最早神の所業じゃ…」



「察しがいいの。わしは、お主たちが言う、神じゃ」



「えっ」



…そんなつもり、なかったんだけどな。



「お主、神話というものは知っておるか」



「…あぁ。内容は見た事ないけど…登場する神の名前はある程度知ってる。」



「で、『全能の神』とかいうのがよくいるじゃろう」



「…」



無言で頷く。



「わしはその『全能の神』なんじゃ。」



「…はぁ」



「…なんじゃ。お主から聞いておいて反応悪いのう」



「そりゃもう色々理解が追いついてないからな…」



「わかりやすく言うならギリシャ神話のゼウスのようなものじゃ」



「…」



うーむ。



「で、そんな神がいるここは一体…冥界か?」



「たしかにお主は死んでおる。が、冥界ではない。」



「死んだら真っ先に送られるんじゃないのか?」



「…近頃、冥界もパンク寸前でのう。アヌビスとオシリスが悲鳴を上げておったわ。」



「…」



思った以上に神の世界もリアルだな…



「で、ここは?」



「…うーむ…なんと説明すれば良いか…そうじゃ。お主閻魔大王というのは知っておるか?」



「知ってるよ」



「言うなれば天国行きか地獄行きかの判断を下される場所じゃ。わしらは『魂の保留場』と呼んでおる。」



「…うーん…説明されてもイマイチピンと来ない…」



「話を戻そう。お主の今の状態じゃが…」



「魂の保留場なんだから、魂だけじゃないのか?」



「いや、さっきお主、散々走って疲れたじゃろう。つまり肉体はあるんじゃ。かなり曖昧な状態でじゃがのう。」



「…はぁ」



「で、お主のあの後じゃが…」



「…」



「家は全焼した。ただし、お主の妹は旅行に行ってて火事にあわずに済んだし、両親も海外にいるようじゃしのう」



「まだお主が死んでからそれほど時間は経っていない。じゃから、近所の人間以外はお主の死を知らん」



「…そうか」



よかったような、でもどこか悔いがあるような感じが頭に引っかかってスッキリしない。



「複雑な表情じゃのう」



「父さんと母さんとサオが巻き添えにならなくてよかったやら、まだ生きてたかったやら…」



「…当たり前じゃろうな。お主はまだ17じゃから…」



「…神の力なら、家を元に戻して、俺を生き返らせる、って事は出来るんじゃないのか?ならなんでわざわざ俺をこんな所に…」



少し無茶な要求をしてみる。



「…」



神は少し考えてから、言葉を発した。



「…申し訳ないが、それは無理じゃ。」



「たしかにお主のいう通り、神の力ならそんな事は造作もない。」



「だったら…」



「じゃが、一度死んだ人間を同じ世界の中で生き返らせる事は神々の間でも固く禁じられておる。」



「…なんでだ?」



「混乱を招いてしまうし、何よりそんな事をすれば他の世界の運営に影響が及ぶ。本来の流れる歴史を変える事は、世界に大きな影響を与えてしまう事がある。

…たとえそれが、ネズミを一匹殺す事でさえな…」



「…つまり、できないのか?」



「そうじゃ。…申し訳ないが…」



「…」



しばらく考えてから神がこう切り出した。



「…で、そこでお主に選択肢がある。」



「…選択肢?」



「と言っても、難しく考えんで良い。このまま死後の世界に行くか、別世界に行くか、じゃ。」



「…」



…あれ、なんか見た事ある。このシチュ知ってる。



「さっき説明した通り、お主が生きていた世界に生き返らせる事はできん。じゃが、他の世界なら可能じゃ。お主がまだ生きたいのなら、こちらを選ぶのを勧めよう。」



「…逆に、もう十分だ、というのなら死後の世界に行く事を勧める。生まれ変わり先が見つかるまでは快適な生活が出来るぞ。」



「・・・」



何から何までデジャヴを感じる展開だ…




「…快適、ってどんなだ?」



「…お主の場合は快適じゃないのかもしれんの。死後の世界は魂だけになる。つまり、体がなくなる。」



「お主、ゲームが好きらしいのう。じゃが…」



「…できないな。体がないなら…」



「そうじゃ。…と、いうよりそもそも娯楽自体が極端に少ないんじゃ。」



「一応、気温や天気の急激な変化はないが…それでも生まれ変わり先が見つかるまでは散歩や日向ぼっこぐらいしかやる事はないぞ」



「つまり、退屈なのか…」



「そうじゃのう。じゃが、快適じゃし、安全じゃ」



「…」



これもうほとんど選択肢絞られたよな…?



「…で、別世界の方は?」



「簡単に言えばファンタジーじゃの。魔物がいて、それを討伐して生計を立てる冒険者がいる。」



(テンプレ通りだ…)



「そして、邪神帝が君臨しておる。」



「…邪神帝?」



「所謂、魔王じゃ。その力を振るえば野は焼け焦げ、命は灰燼に帰す。まだその影響は世界全土にわたってはいないが、危険である事には変わりはない。」



「…」



「この邪神帝を倒すのが、冒険者としての最終目標…と言われておるが…」



「…なにか、まずいのか?」



「ある事情があってのう…邪神帝は人間が倒してはならないのじゃ。」



「そもそも邪神帝にとって人間は取るに足らん存在。…対峙したとて、一瞬で影も塵も残さず焼け消えてしまう。じゃから邪神帝の事は気にしないでおいても特に問題はない。」



「…うーん…」



…このまま死後の世界に行くのは気がひけるし…異世界で暮らすというのも中々面白そうだ。



だが俺がなろう系の主人公まっしぐらになる気が…



…いや、背に腹は変えられない。



だから俺は…



「決めた。…俺は異世界でもう一度生きる!」



そう決意した。






「異世界で生きるのじゃな。」



「あぁ。」



「…なら、これを。」



神は天に手をかざした。



「うわっ」



すると今度は大量の紙の束が落ちてきた。



「…紙?」



「…実はお主に謝らねばならない事がある。…実はな、今回の件は手違いがあったんじゃ。」



「手違い…?」



「お主は、本当は死なせるつもりではなかった。」



「…」



この流れ…まさか…



「実は、お主を手違いで死なせてしまったのじゃ。」



「本来なら、お主ではなく、お主に相当する、別世界の人間を連れてくるつもりじゃったが…」



「間違えてお主を連れてきてしまった…」



「…」



…やっぱりか。『手違いがある』、って時点でなんとなく察してはいたけど…



「俺に相当する人間って…?」



まずはよくわからない部分を聞く事にした。



「人間にはそれぞれ立ち位置のようなものがあるんじゃ。世界を構築するときもその立ち位置に人間を置く。全て同じ型でできておる。」



「世界の違いは、『その立ち位置に誰がいるか』なんじゃ。だから、お主と同じ立ち位置の人間を連れてくるつもりが…」



「間違えて俺を殺した、と…」



「…この件は、本当にすまないと思っている。」



「…」



…なるほど。そういう事情か…



「…もう、過ぎた事だ。どうしようもないなら後悔とかじゃなくて…前向きに考えるべきだと思う」



「それに救済手段もあるからな…」



まずは前向きに考える。でなければ、俺の気持ちも晴れないし、過ぎた事をどう悔もうと時間の無駄だ。



なら今出来る事に力を注ぐ。



そして、俺の言葉を聞いて、神はさらに申し訳なさそうな顔になった。



「…すまない。本当に…すまない。お主のような人間を殺してしまって…」





「…で、この紙は?」



「…詫びにはならんかもしれないが、一応お詫びのつもりじゃ。本来ならそのまま転生させるんじゃが、今回は特別に一つ、固有能力を持った状態で転生させる。」



「その紙に、能力が書いてある。その中から好きなものを選んでくれ。」



「へぇー…じゃこれは…」



適当に一枚取って内容を確認する。



『ゴブリン系の敵に対して滅法強くなる』



「・・・」



…嫌な予感がして適当な枚数を取って一枚一枚確認してみた。



『幸運がつく』



『寒いフィールドでパラメータが上がる』



『薬草系のアイテムの効果が上がる』



『電磁波を操る』



…チート能力を選ぶつもりは最初からなかった。ああなかったさ。



ただ…これ、使えるか?ってレベルの能力が多い。



電磁波はちょっといいと思ったが、使い所がわからない。



というか他の三つはなんだ。向こうの序盤のスキルにでもありそうじゃないか。わざわざここでつけていく必要はないじゃないか。



「…やたらと弱い能力が多いんだが。」



「強すぎる能力はおおよそ取られておる。前は転生者がごった返しておったからのう…余った神の力を能力として与えておったわ…」



「じゃが世界のバランスが乱れるとして禁止された。だから今回は特例なんじゃ。」



「…」



どうしろと。






「『ゴミを木に変える』…イマイチなんてもんじゃないな…『物を固定する』…うーん…」



…あれからかなり時間が経った。俺というと、未だ微妙な能力選びをしていた。



「『水を操る』…良さそうだ。」



あの中からようやくまともな物を見つけ出す事が出来た。



「無難じゃがいい選択じゃのう。それにするか?」



「そうしようか…ん?」



そこで、俺はある一つの能力に目が止まった。



「これは…」



「…あぁ…それか。」



急に神が渋い顔になった。



「ダメか?」



「ダメという事はないのじゃが…使いづらい。それに体への負担も大きい。悪い事は言わんからさっきのものに…」



「…いや、これにする。これが一番気に入った。」



能力と共に、俺は異世界での方針も固めた。



無茶は上等。無理も承知。



俺はストイックに行く!





「で、これで手続きは終わりか?」



「あぁ。それは終わった。じゃが…」



さらにまだ続ける。



「このままでは、わしの気持ちはどうしても晴れん。だから、もう一つ詫びの気持ちとして受け取ってほしい物がある。」



「詫びの…気持ち?」



武器でもくれるのだろうか、と思っていた。



「お主はこれから異世界に行く。当然、今まで生きてきた世界とは完全に別物じゃ。だから、右も左もわからないという事にならんよう、ナビゲーターをつけるのじゃ。」



「ナビゲーター?」



「安心しろ。向こうの世界のスペシャリストじゃ。」



「…へえ」



詫びの気持ちに、ナビゲーターをつけてくれる…か。ストイックは早速消え失せそうだが、自分が感じていた不安が一つ減って、安心した。



「…あれ。じゃあ言葉とかは…」



いずれ自分一人になるかもしれない。その時に困らないかが心配だ。



「案ずる必要はないぞ。お主が降り立つ頃には、異世界の言葉を話せるようになっている。」



「そりゃまたご都合主義な…」



だが素直にありがたい。他の世界で言葉が通じないのは致命傷だ。何もできやしないからな。



「…で、ナビゲーターは?」



「もう既に話は通した。お主が世界に到着した時にはいるはずじゃ。」



「…ならいいか」



ナビゲーター…一体どんな人…いや、神かも天使かもしれない…



初めての異種族との出会いに、俺は胸を弾ませた。



そんなとき、浮かれ気味の自分の体が少し光った。



「では…お主の無事を祈っておるぞ…」



異世界転生の準備だろう。どんどん光が強くなる。



そして、一際光が強くなった。




さぁ、異世界生活の始まりだ!

次回予告


「ゴウマ・キワムさんというのはあなたですか?」


「私は命と祝福の女神…」


「戦ってくれないのか?」


「あくまで、私はサポートですので。」


「ストイック、やるか。」



次回、第2話『ストイックで生き始めたい!』


閲覧ありがとうございました!

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