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幸福戦争  作者: 薪槻 暁
第三章~ヒトとヒトとの闘い~
24/38

3、役立たない準備

 本日第二話となります!


 今回というか第三章は自分、つまり主人公の情景描写に焦点を当てて行こうかなと考えています。。前話のその部分には気付いていただけたでしょうか。地の文章の隙間に入れるのは少し慣れないのですが……


 そしてさらにもう一つ!今回は読者の皆様がはっとするような、そのような物語の展開をしていきたいと思っています。まあ、あまり余談話をするとどんな展開か喋ってしまいそうなのでここまでにしときます。。


 では、、


 早速作戦に取り掛かろう。しかし裸のまま戦に出陣というわけにはいかない。地上作戦を遂行せずに上空からの監視だけで帰国した彼を挙げるとおり、相手国の領土内に侵入する場合は領空よりも格段難易度は跳ね上がるのだ。遂行速度や正確さなどは二の次で(もちろん重要なのだが)、作戦で最も重要視されるのは情報量である。



「なら意見交換といこうか。ここまでの一週間の成果、見せ合おう」



 漫然と言い放つ彼は大きくかつ自信たっぷりの表情だった。それはさっきまで罵倒していた僕に見返すかのような口ぶりでもあったので、さも自分の成果の方が大きいなどという過信さえも含んでいたような気がした。



「よおーし、俺が先に報告させてもらうぜ」



 ほら。やっぱりそうだ。



「地上は一面緑だった。以上」


「……は?」



 無造作にも答えた彼の少なすぎる言葉に圧倒された僕は、無意識に声を出してしまった。



「だーから。森と草しかなかったんだよ。上空からじゃそれぐらいしかみえなかった」


「とはいっても彼らの住処なんだよね。だったら何かしらの建造物とかの配置とか覚えてないの?」



 彼は右手で後頭部を掻き、申し訳なさそうな雰囲気は一切醸し出さないような口調で言った。



「それさえも見つからなかったんだよ。住宅街も舗装された道すらもなかった、あれじゃ人が住める場所なんてもんとは程遠いぜ」



 マザーからの情報管理は徹底化され抜け目も見落としが無いくらいにそれはチェックされている。今回の件だってアフリカに彼らが潜伏しているという前提で作戦は行われたのに視認が出来なかった。


 つまりそれはマザーへの信頼に欠けるというケースを除けば、作戦は失敗なのではなく必然的なことだったと考えれば良いのだろう。僕はそう彼に告げるとまるで何を言いたげそうなのか理解が追いつかない様子で問いた。



「?どういうこった?」



 確実ではないけれどどこととなくあふれ出てくる自信に身を任せながら僕はあるひとつの仮説を提唱するに至った。



「視認できないんじゃなくて、視認しづらかったってことだよ」


「君は上空からのデータは目だけでしか取っていないの?生体反応とか動的システムとかは解き明かした?」


「ああ、それならデータサンプルは回収したぜ、けどなあまりにも誰もいないような雰囲気だったから計器の故障かと思っていたが……どうやら違うみたいだな」



 僕の予想にようやく察しがついたのか、彼は僕の真意を念頭に入れた体で話を進める。



「そう。おそらくそのデータは本物だと思うよ」



 戦地へ赴いた長年の直感がそう言わせている気もしたのだけれど、そう考えずに自ら導き出しこじ開けた答えとして感じ無くてはならないような気がした。それは後先考えずにひたすら前に突き進むような猪突猛進のような行いではないのだけど、それでも一種の責務というか義務めいたものが付いていたからなのだろう。


 だから僕は僕なりの事実とは異なるかもしれない考察を述べた。



「たぶんの話、彼らは僕らを試しているんじゃないかな。この場でこのまま作戦を進めるのか、進めないのか」



 僕たちの思考に勝手に横槍を入れてくるテロ組織とは、ただ壊すだけが目的の者たちよりも相手にしやすい。ただ厄介なことに大抵のそういった連中は相手にしやすいほど相手は強いというのは鉄則。何の目的もなしにひたすら壊滅を望む蛮族よりも意志や希望を持って立ち向かう方がよほど面倒。前者は僕たちの行いに正当性が有利とされるのは目に見える話だが、後者は両者どちらも意見が拮抗するのだ。どちらの正義が一方よりも正当なものなのか、その決め方は今も論争されている議題だが、きっとその答えが出されることはないのだろうと僕は幾度となくそう感じてきた。



「僕たちのもたらす答えをたぶん、彼らは求めているんだよ」


「ヒトかアンドロイドか。人間的か合理的か。究極的な話だけどね、二つとも溶け合って新しい概念を生み出すなんてうまい話、現実は認めてくれないんだよ」



 自暴自棄になるような口ぶりと仕草。僕の投げるような言葉に彼は少しも動揺することもなかった。



「んで、お前の調査結果兼考察結果はどうだったんだよ?まさか俺にはしつこく問い詰めたのに自分自身は何も考えていないってことはあるまいな」



 彼が故国を離れている最中には文献や書物、インタビュアーなどあらゆる情報収集法で「テンプル騎士団」という名がつく物的証拠を洗いざらい調べつくしたつもりである。結果が共についてくるとは限らないが……



「マザーと関りがあることを掴んだ」


「……それは一体何だ?」


「分からない」


「それ以外は?」


「特に進展なし」



 沈黙、疑問、これまた沈黙。重い空気というよりかは変な生ぬるい淀んだ空気が流れた。


 しかし、それは間をとる隙も与えることなくすぐに壊された。



「んなんだとお!興味をそそらされるような話題が出てきてもすぐに打ち止め、挙句の果てにはそれしか分かったことがないときた。俺よりも酷い出来なんじゃないか?」


「そんなこと言っても仕方ないじゃないか。すでに情報規制されている国内で調査なんて無謀すぎるにほどがあるし……」


「その少ない情報の中で探すのがお前の仕事だろう!」



 確かに僕は途中から諦めに走っていたのは彼にも薄々気付いているだろうが、あえて口にはしない。



「ま、まあいい。で、それは当の本人には言ったのか?」


「まだ言ってないよ。でも……」



 彼は僕の続く言葉に期待するように身を下げて顔を眺めた。



「作戦が終わったらでいいかなってさ」



 僕と彼は同じ土俵で盤上一致したように思いを馳せ、ともに口裏を合わせる。



「その時は本当の作戦遂行完了だな」


「それが最後の作戦だね」



 言い方はそれぞれ違うけど、意味は変わらない。まるでパートナーそのもののようで別に嫌な気などするはずもなくむしろ気分は高揚していた。


 お読みくださり有難うございました!


 こんな物語の設定なのにまだそんな自然残ってんのかよ、とお思いになった方はいらっしゃいましたでしょうか?(いてくだされば嬉しいですが……)


 人間ばかりが生きる世の中で唯一取り残されたとも呼ばれる地がまさに『アフリカ大陸』なのです。多様性に恵まれた土地の営み。


 それらが一体どんな形で成り立っているのか、彼らの目線で辿っていきます。。。


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