⑨
「さぁ!アタル君!投げて、投げて~」
とにかく投げないと帰れそうもないので、僕はマウンドに上がり、一応全力で、珠美さんのミット目掛けて投げ込んだ!
ビュッ!
ドッ!
バシッ!!
「ナイスボール」
珠美さんはそう言うが…
「いやいや、タマさん。普通にワンバンしてましたよ?スピードも全然だし……どこがナイスボールなんです?」
白井戸は、僕を横目で見つつそう言った。
確かに彼の言う通り…
僕は打ち取るどころか、ストライクゾーンにすら投げれない…
「ほぅ、あの春虎すら打てない球か!やるな、てめぇ!」
近くで、フランクフルトを頬張りながら観戦していた金髪坊主。
何を言ってるんだろう?
「龍!打てないんじゃなく打たないんだよ!少しはルール覚えろよ!」
すかさず白井戸の声がバッターボックスから飛ぶ。
「はぁ?んなもん俺が知るかボケ!!さっさとカッ飛ばせよ!」
ガラ悪い感じで返事をする金髪坊主。
なるほど…あまり野球を知らないみたいだ。
「好き勝手言ってくれるよ…タマさん!どうにかアイツにストライクを投げさせてくれませんか?タマさんなら何か考えがあるんじゃないですか?」
「う~ん、もう少し、アタル君の球質を見たかったんだけどなぁ…けど、大体つかんだし、そろそろいいかなっ♪」
なにやら、白井戸と珠美さんが会話しているがよく聞こえない。
すると珠美さんは立ち上がり
マウンドへ駆け寄ってきた。