⑥
僕の返事に明らかに悲しそうな顔を浮かべる青瀬さんの方から目を逸らして
僕は自転車に乗り
帰ろうと小学校のグラウンドから出れる裏門に視線を移した
その時だった
【ヴォン!ブォオン!】
1台のバイクが裏門に派手な音を出しながら止まった
よく見ると2人乗りで
後ろに乗っている人はノーヘルで
人相も悪い
やくざ?
ヤンキー?
暴走族?
DQN?
とにかく
関わらない方が身のため…
よ、よし、逆方向の表門から帰ろう
僕が振り向くと
幼女がもの凄い笑顔で
「おっ!アタル君!!活動見ていく気になったの~?」
「…違います」
僕は幼女をスルーして
表門へと急いだ
【ヴォン!ブォオン!】
【ヴォン!ブォオオオオ!】
…何故かバイクの音が
追って来ている??
も、もしや…
恐る恐る振り返ってみる
「そこのお前ぇ!ちょっと待てやぁ!!」
ヒィィイイ!
「ひぃ!い、一体僕に何の用です?」
ビビりながら尋ねると
バイクの後ろに乗った金髪坊主の不良が
バイクから降りて
僕の胸ぐらを掴み
「俺が知るかボケッ!タマがテメェを連れてこいってよ!いいから来やがれ」
そういって
僕を自転車から引きずり降ろした
怖すぎるこの人
あと…タマって誰すか
するとバイクを運転していた
もう1人の方が
「”龍”!あんまり乱暴すんなよ。タマさんに怒られる!君は、東中の生徒かな?俺たちは、西中なんだけど、少し付き合ってくれないか?」
リュウと呼ばれる不良より
まともに話が出来そうな人が
白い歯を見せながら
爽やかに僕に話しかけてきた
僕は知ってる…
この人を
白井戸 春虎
西中野球部のキャッチャーで
何を隠そう
今日僕達、東中をコールド負けに追い込んだ張本人。
5打数5安打
1本塁打、4打点
ウチのエースを
ズタボロに打ち砕いた人物だからだ