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一人目

馬鹿みたいにさんさんと陽気なある日。

そいつはやってきた。


それはいつも通り、

何も知らずに俺の狩場でもある小道を歩いていく。


ただ、

そいつはどこか違った。

いつもの奴らと同じように赤いずきんをかぶって、

小道を歩いている少女なのに。


そいつの周りにはサングラスをした黒づくめの大男が四方を囲むように4人。


いやいや、これはおかしいだろ。絵的に。

俺のそんな気持ちを無視して、

一人の少女と4人の大男は小道を進んでいく。

色々とつっこみたいが、

俺はとにかく飯にありつくためにタイミングを計った。

耳を澄ませば少女の声が聞こえてきた。


「んもう!お母様ったら、なんでわたくしをこんな所へ使いになんかだすのかしら!おばあ様もおばあ様よ!!こんなところに住まなくたっていいじゃない!」

「お嬢様、そんなことを仰らないで下さい。奥様も哀しまれますよ」

「うるさいわね!貴方たちも貴方たちよ!少しはわたくしをおぶっていくくらいしたらどうなの!?」

「いえ、奥様から甘やかさないようにとの仰せ付けですので・・・」

「もーう!!!お母様ったら!また要らないことを!」


どうやら今日の獲物はどこかのお嬢様らしい。

ずいぶんと高慢ちきな奴だ。

あんな奴食ったら俺まで愚かになるんじゃないか。

俺はそんなことを考えながらもじりじりと近寄っていった。

勿論、周りのガードマンに気づかれないように慎重にだ。

気づかれてはいないかと再び耳をそばだてると、また奴らの会話が聞こえてきた。


「なんでこの道は車が入れないのかしら!ヘリも着陸するところがないなんていうし・・・この文明社会の中でありえないわ!異常よ!終わったらすぐにでもここを更地にしてあげるんだから!!」



なんだと?

俺は眉根をひそめる。

あいつの勝手で俺の森が更地にされるというのか?

ふざけるな。

俺の森は俺の森であって、あいつの勝手で崩されてたまるか。

何が文明社会だ。俺たちを除け者にした挙句、森まで奪うというのか。


くそっ、お前らのほうこそ異常だ。

ああ、なんとしてもあいつを腹の中へ納めねば。

俺とこの森の存続のためだ。

おっ、俺ちょっといいこと言ってない?

ヒーローじゃん?かっこいいじゃん?


俺がそんな妄想をしていると、またとんでもないことが聞こえてきた。





「ああもう!わたくしがこんな思いをするのだから、おばあ様もいっそのこと死んでくださればいいのに!!」





びきっ、と。

何かが割れる音がした。


許せるか?

親族に「死んで欲しい」なんて望むことを。

それも自分勝手な理屈のためにだ。


お前なんか地獄に落ちろ。

いや、地獄にさえも見放されろ。

永遠に今までの行動を悔いてろこのゲス女。


俺はもう我慢ならねえ、

喰ってやる。

そんでもってお前の家の前に排泄物としてお前を届けてやる。



俺はさっそうと草むらから奴らの前に躍り出た。



「きゃあああああああああああああおっっ狼!!!」

「近寄るな!!!」


そんな叫びと共に発砲音。

俺、あたふた。



えええええええええええガードマン強!!!!

見たかおめー!!!腰から銃抜くのに0.002秒だぜ!?

危なかっただろうがこんちきしょー!!


精一杯吼えて襲い掛かる俺。

なんてったって一匹狼。ロンリーウルフ。集団じゃないから一人で即効!

野生の力なめんな☆


とかなんとか思ってるうちにガードマン2人の両手をつぶした。

命まではとらない。

こいつらはこの高慢ちきにきっとうんざりしてるだろうからな。

せいぜい余生を楽しめばいいさ。両手ないけど。

そんでもって子供が生まれたらこの森に送り込んでよ。

喰うから。


残りは二人。

鳴り響く発砲音。

俺ののど元を駆け上がろうとする銃弾。

すれすれを仰け反って回避。

そのままバック転ですかさず反撃。


ちょっとマトリッ●スみたいだったな。

なんでそんなこと知ってるのかって?

それは内緒だな。自然界に秘密はつきもの。


両足で地面を力強く蹴る。

脚のばねを生かして一人の右手を噛み砕く。

その横からもう一人の銃弾が迫り来る。

身体をひねってそれをかわす。

相手は弾切れ、装填の暇もなく手首に喰らいつく。

そしてうめいて転げまわる二人の残りの手を噛み千切って試合終了!


やっべぇ、完封じゃん?

さてさて、やっとメインディッシュだ。

俺が高慢チキンな奴のほうを振り向くと。


男4人が転げまわって泣いているのを差し置いて、

携帯で誰かと話していた。


「お母様!今回のSPは使えませんわ!!もう全員やられてしまいましてよ!!クビにしてくださいませ!それから、今からすぐに迎えに来てください!ここの土地も買い取って更地にして下さいませ!以上ですわ!」


一気にそういうと電話を切る。

奴はふぅっと息をついて、呆気にとられていた俺のほうを見た。

そして高飛車に言う。


「あら、まだ居たの?あなた、わたくしのSPをやってみませんこと?お給金は弾みますわよ。なんてったってわたくしは・・・」


やなこった。




少女の叫びが今日も森にこだまする。

耳をつんざくような雑音に、鳥たちがいっせいに羽ばたいた。


しっかりと噛み砕いて飲み込んだところで気づく。


あ、こいつの住所きいてなかった。


これじゃ排泄物としてお届けできない。

まぁ、いいか。




次世代の赤ずきんは俺の腹の中にしっかりと納まった。

俺は今日の出来事を軽く振り返りながら巣穴に戻る。






まさか、次世代の赤ずきんに色んな種類がいるとは

思ってもなかった。




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