序章
初投稿になります。初心者(素人)なので読みにくいとは思いますが、お手柔らかにお願いします。
何もない。机や椅子といったものからベッドやテレビ等何一つ無く、ただただ優しい光が周囲を満たしている。そんな不思議な部屋で彼――叶柳季――は目を覚ました。
「……ここは?」
(確か俺は徹夜で仕事をしていて、深夜に帰って来てすぐソファーで眠ってしまったはず。なら家に居なければおかしい。何故見知らぬ部屋にいるのか)
思い出そうにもそれ以上思い出せなかったため、柳季は冷静に思考を繰り返す。
(可能性として一番有力なのは拉致だな。以前も似たような事はあったし。若しくは、知らぬ間に何かに巻き込まれたか。それともドッキリか)
『初めまして』
柳季の思考を遮って優しげな声が聞こえてきた。不思議な事にその声は女性とも男性とも取れる声だった。
「誰だ」
『私はレザベディア。あなたが住む世界とは異なる世界で神と呼ばれています』
普通ならここで姿を見せない神を称する者に対して疑うなり不信感を抱いたりするだろう。しかし、柳季は違った。
「なるほど。それで?何故俺はここに?」
納得してしまった。別に柳季が頭のおかしい変人という訳ではなく、単純に彼は日常的にこういった事に慣れているのだ。
『驚かないのですね。あなたの住む世界では神を信じる者は少数派では?』
「神に会うのは初めてじゃないんでね。天照やオーディンに会った時もこんな感じだったし。で、用件は?」
『……そうですか。それにしても少し落ち着き過ぎでは?』
「本当に神なら俺の存在はそこらの虫以下。刃向かっても無駄だ。悪魔や妖なら返り討ちにする自信があるが」
言葉通り、柳季にはその力がある。そういった存在を滅ぼすのが彼の仕事なのだから。最も、世間には神や悪魔等は信じられていないため、柳季のような仕事をしている者達の知名度は限りなく低いが。
暫しの沈黙の後、レザベディアは口を開いた。
『先ずは謝罪を。私の都合でいきなり呼び出して申し訳ありません。実は貴方に話さなければならない事があります』
「それは俺をここに呼んだ理由と関係しているのか?」
『その通りです。実は――』
異世界の神、レザベディアの話をまとめるとこんな感じだった。
1 本来なら俺はこの世界では無く、レザベディアの世界に生まれるはずだったが、レザベディアの手違いで地球に生まれたらしい。
2 レザベディアは俺を自分の世界へ連れて行くため、ずっと俺を探していたらしい。
3 連れて行く際に、俺には特典があるらしい。
途中レザベディアの愚痴が入って話が脱線したが、概ねこんな感じだ。
「ちなみにだが拒否権はあるのか?」
『いえ、残念ながら』
「……俺はどうなる?」
『どうとは?』
「物語なら転生かこのまま異世界に行くかとあるが。やはり物語の中だけか?」
『貴方の場合、記憶等そのままです。望むなら赤ん坊からの転生でも構いませんが』
柳季の中では異世界、つまりレザベディアの世界に行くのに抵抗はない。友人はいるが家族はおらず、天涯孤独の身であるからだ。
転生ではなく、このままで良いと柳季が伝えるとレザベディアは特典の話を始めた。
『特典と言っても何でもという訳ではありません。完全にランダムになります。それと、言語については御心配なく』
柳季は考える。言語の心配がいらないなら、どうしようかと。
「そっちはどんな世界なんだ?」
『そうですね。所謂、剣と魔法の世界です』
それを聞いた柳季は思わず溜め息を吐く。物語と思いっきり同じなんだな、と。
「俺は魔法を使えるのか?」
『はい。貴方の魔力値は平均なので強力な魔法は使えませんが』
「そうか」
『では、行きましょうか。細かい事は貴方の脳に直接刻みますので』
レザベディアの言葉が終わると同時、膨大な情報が頭の中に入ってくるのが分かった。そして、ゆっくりと意識が闇に落ちた。