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【完結】「愛する君を殺したくない」と王子様から断罪されたので、大人しく殺されに行ったら、私の愛が重すぎて呪いが壊れました  作者: ましろゆきな


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第十話(番外編②):捕食の初夜。冷徹皇帝、理性の落城

 1. 義兄たちの「哀れみの視線」


 帝国の宮廷は、かつてない緊張感に包まれていました。

 輿入れに同行してきた王国の二人の王子――。彼らのシスコンぶりは有名でしたが、実際に皇帝アルリックと対面した際、彼らが浮かべたのは「敵意」ではなく、「深い同情」を含んだ眼差しでした。


「陛下、どうか妹を……。ああ、いや、陛下の方こそ……お大事に」

「……ええ。陛下の理性が、少しでも長く保たれることを祈っております。本当に」


(……何を言っているんだ、この男たちは?)

 アルリックは眉をひそめます。自分は大陸一の軍事力を誇る皇帝。一国の王女一人に、理性を失うはずがない。そう自負していた彼は、この時の王子の言葉の意味を、数時間後に身を以て知ることになるのです。


 ◇◇◇


 2. 氷の皇帝の宣戦布告


 婚礼の儀を終え、たどり着いた新婚の寝室。

 アルリックは、祭壇のように設えられた寝台で待つリリアナに、冷たい声を浴びせました。


「リリアナ、これは政略結婚だ。私に愛を求めても無駄だ。君の役割は世継ぎを産み、帝国の平和に寄与すること。それ以上の『期待』は捨ててもらおう」


 しかし、純白の薄衣を纏ったリリアナは、怯えるどころか、アメリア譲りの「完璧な微笑み」を浮かべました。


「ええ、承知しておりますわ、陛下。……私も『期待』などしておりません。ただ……私が貴方に何を『与えられる』のか。それだけを確かめていただければ、それで」


 ◇◇◇


 3. ひざまずく聖女の罠


「……陛下、そんなに強張らないで。……お疲れを、私が吸い取って差し上げますわ」


 厚手の絨毯が敷かれた寝室の中。

 リリアナは、一国の王女、そして帝国の皇妃という身分をかなぐり捨て、アルリックの足元に静かに跪きました。


「……リ、リリアナ? 何をしている。貴女ともあろう者が、床に跪くなど……っ」


 アルリックは動揺を隠せません。

 本来、跪かれることには慣れているはずの皇帝ですが、自分を「愛さない」と宣言したばかりの新妻が、あられもない薄衣うすぎぬ一枚で自分の足元に侍っている。

 その献身的でありながら、どこか支配的な重圧に、彼のペースは一瞬で崩れ去りました。


 4. 五感を侵食する香油の魔力


 リリアナは、掌で温めた香油を、アルリックの細い手首や肩へと塗り広げていきます。

 滑らかな油の感触。そして、リリアナが動くたびに、薄い絹越しに透ける肢体の曲線が、彼の視界を暴力的に刺激しました。


「……くっ、……もういい。これくらいで、……っ」


 冷徹な皇帝の面影はどこへやら、アルリックの顔は耳の裏まで真っ赤に染まっています。

 しかし、リリアナは手を止めません。それどころか、彼女はしなやかな動作で寝台へと這い上がり、今度はアルリックの背後へと回り込みました。


 ギシッ、というシーツの軋む音。

 背後から、リリアナの豊かな胸の柔らかさが、彼の細い背中に押し付けられます。


「……次は、背中を。……陛下、呼吸を私に合わせてくださいませ?」


 視界を奪われたアルリックの五感は、異常なまでに研ぎ澄まされました。

 耳元で囁かれる甘い吐息。首筋をくすぐる彼女の髪の香り。

 そして、目に見えないからこそ、次にどこを触られるのかという得体の知れない恐怖と期待が、彼の心拍数を爆発的に跳ね上げました。


 5. 理性の決壊:聖女の「禁忌」


「……あ、ぁ……ッ!!」


 リリアナの白い手が、アルリックの背中から脇腹を通り、そのまま下腹部の際どい境界線へと滑り込んだ瞬間。

 アルリックの口から、今まで押し殺していた無防備な嬌声が漏れました。


 アメリア直伝の、神経の集中する箇所を的確に突く愛撫。

 氷の皇帝は、あまりの快感の濁流に、成す術もなく身体を仰け反らせました。

 生理的な快楽による一筋の涙が、その白い頬を伝い落ちます。


「……あら。……泣いていらっしゃるの、陛下?」


 リリアナは、背後から彼の顔を覗き込みました。

 そして、あざ笑うのではなく、聖母のような慈愛の眼差しで、彼の頬に伝う涙を、熱い舌でゆっくりと掬い取ったのです。


「……ひっ、……あ、……ぁぁ……ッ!!」


 独占と慈しみの仕草。

 それを自分にされたアルリックは、完全に心が折れ、同時に本能が爆発しました。


 6. 敗北の宣戦布告


「……っ、この責任、取ってもらおう」


 アルリックは吐き捨てるように言いました。細身とはいえ、若さゆえの瑞々しさと適度な緊張感を湛えた彼の肉体が、月光の下で白く浮き上がります。


 彼はリリアナを押し倒し、奪うような激しい口付けを重ねました。

 リリアナは、呆然と、そして熱い欲望を瞳に宿した皇帝の唇の、逃げ場を奪うような、深い深い口付けを受け入れるのでした。


(ああ、お母様……仰った通りですわ。……この方は、もう私なしでは、息をすることも叶わなくなりますわ)


 それは、自分を翻弄するこの少女から、主導権を力ずくで奪い返そうとする「八つ当たり」に近い逆襲。

 しかし、唇が離れた瞬間、リリアナは怯えるどころか、蕩けた瞳で彼の顔の輪郭を優しくなぞりました。


「ええ、もちろんですわ。……陛下の、なさりたいように♡」


 7. 蜜のような挑発


 リリアナの白い華奢な指先が、アルリックの熱を帯びた首筋から、鎖骨、そして激しく脈打つ胸元へと這っていきます。

 アルリックは、その一触れごとに身体を強張らせ、喉を鳴らして生唾を飲み込みました。


「まだ、夜は始まったばかりですわよ。……陛下。貴方は、私をどこまで汚してくださるのかしら?」


 耳元で囁かれる甘い煽り。

 その一言が、アルリックの理性の最後の防波堤を粉砕しました。


 8. 烙印という名の復讐


「……黙れ。君のその余裕、今すぐ後悔させてやる」


 アルリックは低い声で唸ると、彼女の白磁の首筋や肩口へと顔を埋めました。

 彼は、彼女が自分に仕掛けた「快楽の呪い」への仕返しとばかりに、その柔らかな肌に吸い付き、赤い鮮やかなしるしを次々と散らしていきます。


「あ、ぁ……っ、陛下……」


 リリアナの口から、ついに余裕の消えた甘い啼き声が漏れました。

 彼女の中心に触れる、アルリックの少し不慣れで、けれど熱情に突き動かされた指先。

 彼は、リリアナが身悶えし、自分を求める声を上げるたびに、歪んだ悦びと、それを上回るほどの「支配されているのは自分だ」という絶望的なまでの陶酔に浸っていくのでした。

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