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エッセイ・私小説

木枯らし

作者: おおらり
掲載日:2025/12/01

「ママ、ここを右だよ」

 自転車の後ろから、たーくんの声がする。

 えっ、左だよ?

「ちがう、右!」

 スマホで位置情報を確認すると、本当に右だった。

「いつも幼稚園のバスで見てるもん」



 日に照らされる公園の落ち葉に、木々の影が映っている。光と影のコントラストがとても美しい。


「ママ、落ち葉あつめて!」


 落ち葉をあつめると、たーくんは嬉しそうに横になる。


「すごいフカフカ〜! ママもやりなよ」


 たーくん、落ち葉ベッドは一回でも虫を見たらやらなくなるだろうな。寝姿が可愛いのでいつまでもやってほしいのだが、たぶんすぐにやらなくなる。


 たーくんの背中についた枯れ葉を払っていると、急に冷たい風が吹いて、大量の枯れ葉が広い公園をカラカラカラと一斉に駆けていく。


「たーくん見て! 葉っぱがかけっこしてる!」

「わーっ!」


 たーくんも駆けていく。木枯らし吹いて枯れ葉と競争、大運動会だ。



 先週、イチョウの黄色がとても綺麗で、スマホとキッズカメラでイチョウの木の写真を撮った。今日はもう葉がすべて落ちて、黄色い絨毯が広がっている。


「葉っぱ落ちちゃったんだ、でも、一面黄色で、綺麗だね」

「ね」


 たーくんは同意してくれるが、子どもの頃の私は、イチョウの美しさがわからなかった。大人になったある日、桜の白やイチョウの黄色、紅葉の赤にハッとした。


 子どもの頃は足元の、たんぽぽ、オオイヌノフグリ、カタバミなどに夢中だった。

 頭身の高さによるのかな? と考える。

 たーくんも同じかどうかは、わからないけれども。



 たーくんが花や実や木を「これなあに」と指さす。わからない、と答えると、

「ぐるぐるレンズに聞いてみたら?」

 便利な時代だね。



 帰り道は落ち葉だらけだった。落ち葉を自転車で踏む感触がわからない。ああ、こんな感じなのか、と知る。


 新しく知ることって面白い。


 ものを何も知らない。

 小説を書いているとよく思う。


 たーくんとだって、たーくんより知っていることもあれば、道みたいに、たーくんのほうが知っていることもある。


 たくさん教えるから、たくさん教えてね。



 街路樹のなかでひときわ大きな樹を、たーくんが指さす。

「ママ、見て!」


「あれはね、世界で一番大きな樹!」


 知らなかったなあ。

 そんな、秋の日の思い出。

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