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第24話(2)作戦会議 -華燐と珠緒-

数分後 視聴覚室

 教室内に、プロジェクターとスクリーンが置かれている。幸紀、菜々子、麗奈、焔、四葉、明宵、結依がスクリーンの横に立ち、それ以外の女性たちがスクリーンが見える位置に座っていた。


「お待たせしました!」


 そんな状況で、日菜子が珠緒と華燐を連れて視聴覚室に現れる。珠緒と華燐はスクリーンが見える位置につき、日菜子はスクリーンの横にやってきた。


「来たな、始めるぞ」


 幸紀が短く言うと、菜々子がプロジェクターの電源を入れる。スクリーンに映し出されたのは、街のどこかを上空から撮影したような画像だった。


「これは清峰侯爵が手配したドローンからの空撮画像です。画像下側の、ここが、我々の現在地点となります」


 麗奈がレーザーポインターで建物の一つを指し示す。その間に、菜々子が画像の上側の、古い日本の城のような建物を指し示した。


「で、こっちの、お城だね、これが今回攻略する敵の拠点。『秋露城』とか言ったかな。ここさえ抜けば、敵の本拠点だと考えられてる、ここ、『冬城時計台』まで1直線で行けるってワケ」


 菜々子は城のある位置から、さらにポインターを画像の上側にずらし、真っ黒な洋風の建物を指し示す。確かに城から時計台まではそう遠くない距離だった。


「問題は、城の立地と構造。小高い山の上にある城だから、バスじゃ行けない。だから、バスは麓に置いて、徒歩で城を攻め落とす必要がある」


「大人数ではいけない、ってことですね」


 焔の補足説明に、日菜子が話を続ける。明宵も解説を続けた。


「…おそらく敵の指揮官がいるのは城の最上階。ただ、城の内部に至るまでの道が狭く、さらにルートも複雑…敵の罠もあるでしょう」


「なので、部隊を細かく分けて、色んな方向から攻め入ります。お互いに援護しながら、最終的には裏口から入り込みます」


「部隊の分け方と、侵入経路はこっちで決めています!それに従ってください!読み上げます」


 明宵の解説に、結依と四葉も話す。四葉はそのまま手元のノートに書いた文字を読み上げ始めた。


「先に、バスで待機する人の名前を読み上げます!青崎さんと、天道さん!」


「え?」


 まさかここで名前を呼ばれると思っていなかった華燐は、困惑して顔を上げる。


「バスの守備をお願いします」


「あ、はい…」


 四葉が言うと、華燐は小さく頷く。そのまま四葉は、部隊の編成と、どこから攻めるかを読み上げていくが、華燐の耳を通り過ぎていくのだった。


(…結局アタシじゃ頼りないから、留守番してろってこと…?)


 華燐は、そう思いながら、四葉たちの横に立って何もいわない幸紀の方に目をやる。


(幸紀さんも、四葉ちゃんたちに何か言ってんだろうな…アタシは使い物にならないだろうからって、攻撃チームから外させたのかも…くっ…)


 華燐は奥歯を噛み締めながら、俯く。そんな華燐に誰も見向きせず、話は淡々と進んでいくのだった。




同じ頃 秋露城内

 星霊隊が次の攻撃目標として設定しているこの城の最上階では、ポラリスが頬杖をつきながら、窓から街を見下ろしていた。


「ふむ…良い眺めだ。人間たちもなかなか良いものを作るなぁ」


「若、呑気なことを言っている場合ではありませんぞ。すでに『星霊隊』は『夏目中学校』まで迫ってきていると、斥候から報告が入っています。ここに攻め入ってくるのも時間の問題です」


 ポラリスの言葉に、そばに控えていたフェルカドが状況を報告する。それに対し、ポラリスは少し肩を回してから話し始めた。


「わかっているとも。やはりコーキと星霊隊は強い。奴らがここまで来るのは目に見えていた。だが、ここで必ず食い止める」


 ポラリスはそう言うと、指を鳴らす。直後、控えていた部下たちが地図を持ってくると、畳の上に座るポラリスとフェルカドの前に広げた。


 ポラリスは城の周辺の状況の地図を覗き込むように眺める。そうしてニヤニヤと笑いながら指でさまざまな方向をなぞるのだった。


「いやはや、本当に良いものを作ったな、人間は」


「楽しそうですな、若」


「あぁ。ここほど長期戦に適した建物はない。あらゆる方向から侵入者を引き込み、ノコノコ入ってきたやつを叩き潰す形をしている…ふふふ、人間の叡智には恐れ入るが、まさか、あのコーキに勝つために必要だった最後の鍵が、人間の力だったとは…」


 ポラリスは皮肉に笑うが、すぐに顔を上げると、フェルカドの方に向き直った。


「フェルカド、今日こそ、勝つぞ」


「おう!若、その言葉を待っておりました!して、如何にして勝ちましょうか!」


 フェルカドがポラリスの言葉に喜び勇んでいると、ポラリスは微笑みを湛えたまま話し始めた。


「いいか、俺たちがいるのはこの山の上の城。ここに至るまでには多くの道があるように見えるが、その実、どれも狭いのがわかるな?」


「はっ。つまり、ひとつのルートから攻めてくるのは、せいぜい数人、しかも徒歩、ということですな」


「そうだ。それはつまり、奴らの移動手段である自動車を、どこかに置いていかなければならない、ということでもある。そこを叩く!」


 ポラリスはそう言うと、地図上のとある1点を指差す。城から少し離れた広場のようなところだった。


「奴らの要は自動車だ!奴らはあの自動車で移動し、食糧などもあれに乗せている。それを奪い、長期戦を仕掛ければ、いくらコーキといえど補給なしで戦うことはできない!奴らが自動車を置く可能性が最も高いのはここ、だからここに兵を伏せ、急襲する!」


「若!その役目もちろん」


「あぁ、フェルカド、お前に託す!俺はこの城でコーキと星霊隊を引きつける。その間に、フェルカド、お前が奴らの自動車と食糧を奪うのだ!」


「はっ!お任せあれ!」


 フェルカドの返事を聞いたポラリスは、自分でも気付かぬうちに口角が上がりつつあった。


(この作戦がうまくいけば、奴らは悪魔軍の支配下で補給も退却もままならないままに孤立する…消耗戦になれば個々の優劣など関係はない…これまで苦杯を舐めさせられてきたが、いよいよそれも終わりだ…!)


 ポラリスのそんな思いを知ってか知らずか、悪魔の1体がポラリスとフェルカドの元に現れ、跪いた。


「ポラリス様、星霊隊、こちらに向かって動き出したとのこと」


「来たか…!やるぞ、フェルカド!今日が我ら邪族の勝利の日だ!」


 ポラリスはフェルカドに声をかけ、立ち上がる。フェルカドもそれに応えるように立ち上がった。


「おう!この命に代えましても、勝利を!」


「馬鹿者。この先も貴様の力は使うのだ、勝手に死ぬことは許さん。これは命令だ。生きて奴らの自動車と食糧を奪ってこい!」


「ははっ!」


 フェルカドはポラリスの命令を聞くと、一礼し、背中に大剣を背負って部屋を後にする。

 ポラリスはそんなフェルカドの背中を見送ると、自分の両頬を叩き、声を張った。


「さぁお前ら!ここが大一番だ!!急ぎ配置につけ!!」


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