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第19話(5)悪魔の正体 -明宵と雪奈-

数分後 笠頭村 北側

 最後の1つになった灯火を背にして、明宵と雪奈は悪魔が来るであろう方角に体を向けて立つ。ふたりは、鞭で叩かれた痛みを堪えながら、歯を食いしばりつつ、それぞれの武器を発現させていた。


「…!雪奈さん」


 明宵が何かの気配を感じ取って、雪奈の名前を呼ぶ。直後、雪奈も腰を落として頷いた。


「はい…!来ますね…!!」


 雪奈がそう呟き、民衆がざわめく。


 直後、正面にある森の中から、人影がゆっくりと歩いて現れる。しかしそれは人間ではない。

 白髪と漆黒の肌に輝く青い線の入った、異様な体つきの悪魔。片手には日本刀を握り、ゆらゆらと、余裕すら感じられるような歩き方で明宵と雪奈の方へと歩いてきていた。


「さっきと同じ悪魔ですね…!」


「…今度こそ、倒します…!」


 ふたりは一気に表情を険しくすると、まず明宵からその悪魔へと駆け寄った。


「はぁあああっ!!」


 明宵が開いた本から、霊獣人が発現する。

 2mはある獣人が、敵である悪魔の、刀を握っている手を掴む。


「ぅぅうううっ….!!」


 獣人はその悪魔を投げ飛ばそうとするが、悪魔は獣人の力に対して一切怯まない。そのうち、鞭で叩かれた明宵の体が痛み始め、明宵は反射的に体を庇う。

 そのほんの一瞬の隙を突き、悪魔は自分の腕を掴んでいる獣人の手を強引に引き、獣人ごと明宵をその場にひっくり返すと、真っ直ぐ聖火を目指して歩いていく。


「止めます!!やぁあああっ!!!」


 雪奈はそう叫ぶと、ステッキを構え、その悪魔に向けて氷の弾丸を放つ。しかし、悪魔は雪奈の攻撃を刀を回転させながら、悠々と弾き飛ばしていく。

 ものの数秒も保たず、雪奈から放たれる氷の数が減っていき、ついに氷が出なくなると、雪奈は汗を滲ませ、息を切らしながら、その場に倒れ込んだ。


「はぁっ…はぁっ…ダメです…!絶対にダメなんです…!その聖火を…壊させるわけには…!」


「…村の人たちを…守らないと…!」


 その場に倒れていた雪奈と明宵は、なんとか気力を振り絞ってその悪魔の背中にしがみつく。だが、悪魔はそんなふたりに静かに言い放った。


「村の人?...ふん、くだらん」


 悪魔はひとことだけそう言うと、大きく飛び上がり、灯火台へ接近する。そして、火がついている部分の根本ごと、日本刀のひと太刀で切り捨てた。


「!!!」


「村の人たちが…!!」


 明宵と雪奈が絶望したように言う。しかし、その悪魔は冷静に言葉を続けた。


「ここのどこに『人間』がいるんだ?」


「…え?」


 その悪魔が明宵と雪奈にしがみつかれながら地面に着地すると同時に、聖火だったものが地面につく。


 直後、暗闇の中で、明宵と雪奈以外の、村人も、悪魔も、姿が次々と変化していく。


「ど、どういう…!?」


 雪奈も明宵も動揺する中、彼女たちがしがみついていた悪魔の姿が変わっていく。青い線の入った漆黒の肌は、傷だらけの人間の肌に戻っていき、白かった髪は、真っ黒な髪に戻る。


 瞬間、明宵と雪奈は、今まで戦っていた悪魔の正体に気づき、彼の名を呼んだ。


「幸紀…さん…!?」


「…ようやく気づいたか」


 漆黒の悪魔の姿だった彼、東雲幸紀は、自分の名前を呼ばれると、刀を握り直しながら立ち上がった。


「前を見てみろ。あれがお前たちが必死に守ろうとしたものの正体だ」


 幸紀は刀を村人たちだった者たちに向けて言う。

 明宵と雪奈が前を向くと、村人たちの姿は、醜悪な悪魔の姿に変わっていた。赤ん坊を抱いている母親は、男性型の悪魔同士が母親役と赤ん坊役を演じており、殺されたはずの女性も、悪魔がそこに寝そべっているだけだった。

 もちろん、鞭を持っていた村長も、彼自身の本当の姿、白い肌の悪魔、ミツニィの姿を現した。


「…な、なんだと…!?ば、バカな!あの火の正体はわからないはず!お互いの声だって届かないようにしたんだぞ!?」


「くだらん。命懸けで他者を守る悪魔などいない。ましてや、あれほど理不尽に鞭を打たれながら、他者のために戦おうとする悪魔などいるものか。それだけで貴様らを疑うのには十分だ」


 幸紀は吐き捨てるように言うと、雪奈と明宵に自分から離れるように指示をすると、目の前にいる敵の悪魔たちの群れに向かい始めた。


「お前ら!!俺を守れ!!」


 ミツニィは村人に化けていた悪魔たちに命令する。悪魔たちは声を上げながらそれぞれの手持ち武器を構えて幸紀に向かっていく。


「ふん、手品さえなければ数だけだな」


 幸紀はそう言い捨てると、自分の近くに寄ってくる悪魔たちを片っ端から切り捨て、黒い煙に変えていく。

 次々と仲間が切り捨てられていく光景を見ながら、ミツニィは後ずさっていく。


(よし…こいつらに時間を稼がせて…俺は逃げる!)


 ミツニィはそう決めると、ある程度悪魔の群れから距離を取れたのを確認してから、背を向けて走り始める。

 幸紀は逃げ出したミツニィを視界の端に捉えていた。


「明宵、雪奈」


「はい!」


 幸紀に名前を呼ばれると、明宵と雪奈は幸紀と別行動を始め、逃げ出すミツニィを追いかけ始める。

 気づいた悪魔がふたりの道を妨げようとするが、幸紀があっさりとその悪魔を両断し、道を開ける。明宵と雪奈は止まらず、そのままミツニィを追いかけるのだった。




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