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第19話(2)黒い悪魔 -明宵と雪奈-

数分後 笠頭村 東側

「ひいいっ!!」


 灯火の近く。白髪と漆黒の肌に輝く青い線の入った、他の悪魔たちとは一線を画す容姿の悪魔が逃げ惑う女性の背中に刀を突き立てる。その悪魔は、他の逃げ遅れた男性や女性に対しても、刀を振るい、ひと太刀で斬り倒していた。


「…造作もない」


「そこまでです!」


 悪魔がさらに暴れようとしたその時、彼の背後から雪奈の声が響く。彼が振り向いたその瞬間、彼の足元が凍りついていた。


「…!」


 身動きが取れなくなった彼の懐に潜り込むように、明宵が一気に肉薄すると、本を開き、霊獣人を召喚し、その悪魔の首を掴もうとする。

 しかし、その悪魔は霊獣人の腕をあっさりと斬り飛ばし、明宵を追い払う。

 間髪を入れず、雪奈はその悪魔の横合いから氷柱の弾丸の束を放つ。

 悪魔はすぐに振り向き、飛んできた弾丸の一部を叩き落とすが、落としきれなかった弾丸が彼の体に直撃すると、彼は弾丸の当たった自分の脇腹を左手で庇う。


「明宵さん!」


「…はい…!」


 雪奈から合図を受けた明宵は、復活した霊獣人の腕を使い、その悪魔を抱きかかえると、悪魔の足元の氷を破壊しながら、霊獣人は空中に大きく飛び上がった。


「『ヴォイド・ボルテックス』…!」


 霊獣人は悪魔の頭を地面に叩きつけるため、真っ逆さまに地面に向かっていく。

 しかし、その悪魔は無理やり霊獣人の腕をこじ開けると空中で姿勢を転換してから悠々と地上に着地した。


「つ、強いですよ、この悪魔…!」


「…そのようですね…!」


 悪魔と雪奈、明宵はお互いの武器を構えながら睨み合う。しかし、悪魔はふと彼の背後にある灯火に気がつき、刀を握り直した。


「!だ、ダメです!その灯火は…!」


 雪奈が敵の意図に気付き、ステッキを向けようとしたその時には、悪魔は刀を振るい、斬撃を放つ。斬撃は、灯火の付いていた柱ごと両断し、火のついていた箇所は、地面に落ちて消えた。


「炎が...!」


 明宵と雪奈が言葉を失っていると、悪魔は一瞬ふたりに目をやったあと、何も言わずにその場で大きく跳躍し、その場を後にした。


「待て!」


 雪奈は叫びながら、夜空に紛れる悪魔に向けて鋭い氷を放つ。しかし、悪魔はすぐに姿を消してしまい、雪奈の攻撃はあたらなかった。


「くっ...!」


 雪奈は奥歯を噛みしめながら、荒れた息を吐きつつその場に膝を折る。そんな雪奈の隣に明宵もしゃがみこみ、雪奈の様子を確認した。


「...大丈夫ですか?」


「はい...でも...少し...消耗しちゃって...!」


「...そうですね...連戦続きですから...どこかで少し...」


「おい、貴様ら!」


 ふたりがしゃがんで話していると、先ほどの村長の怒鳴り声が聞こえてくる。ふたりが少し怯えながら振り向くと、鞭を持った村長と屈強な村人たち、そして泣いている赤ん坊を抱えている女性が現れる。彼らは、雪奈たちを憎悪のような目で見下ろしていた。


「聖火を消され...多くの同胞が殺されたというのに、貴様らは一体何をしているんだ!!」


 村長の怒鳴り声とともに、雪奈と明宵の体に鞭が飛ぶ。ふたりが必死に顔を守ると、村長はふたりの腕をめがけて鞭を振るった。


「今殺されたエリカは!本当なら!もうすぐ結婚するはずだったんだ!テッペイも!大学に合格してたんだ!それを殺され!さらには、村を守る聖火まで奪われているというのに!貴様らは!!」


「あぐっ!や、やめて、いやぁあっ!!」


 雪奈が悲鳴を上げながらその場に崩れ落ちる。村長が鞭を振るう手を止めると、明宵は、鞭で叩かれて破けた服を抑えながら、言葉を返した。


「...し、しかし...私たちは、悪魔を撃退しました...被害は最小限に抑えたんです...!確かに、殺されてしまった人たちのことは残念でした...私たちの力不足です...しかし、私たちもわざとじゃ...」


「問答無用!」


 村長は明宵の言葉を遮るように、彼女の頬に鞭を振るう。明宵が倒れると、彼女の体が本人も無意識のうちに震え始めていた。


「い...痛い...なんで...なんでこんなこと…!」


「明宵さん...!」


 いつになく弱々しい声を漏らす明宵に、雪奈はすぐに近寄り、手を握りしめる。そんな光景を見て、村人たちは耳打ちし始めた。


「こいつら、反省しないで庇い合ってるぞ?」


「やっぱり悪魔なのよ!恥がなくて自己保身ばっかりしてるのがいい証拠だわ!」


「早く村から追い出そう!」


 好き勝手に話す村人たちに対し、村長は手を挙げた。


「待て。こいつらは言ったな?『悪魔と戦うのが仕事だ』と。ならば、こいつらには戦いだけやらせればいいのだ。それ以外は収容所に押し込め、監視するのが効率的だとは思わないか?悪魔の癖に悪魔と戦おうというんだ、使いつぶすのが最善じゃないか?」


「さすが村長!」


 明宵や雪奈の意思を無視して、村人たちの話は進む。戸惑う彼女たちをよそに、屈強な男性たちが彼女たちの腕をつかみ上げた。


「え...?な、なにをするんですか...!?」


「お前たちは収容所送りだ」


「...待ってください...!私たちは任務があるんです...!」


「そうです!それに、雪奈たちが何をしたって言うんですか!なんで収容所に入れられなきゃいけないんですか!?」


「うるさいぞ、悪魔め!聖火を消し、村に災いを招きいれた!それだけで貴様らは死罪でもおかしくないのだ!者ども、収容所に叩き込め!」


 村長の指示に従い、村人たちは明宵と雪奈の腕を押さえつけながら、村の中央へと歩いていく。華奢な彼女たちには抵抗できないような強すぎる力だった。


「い、痛い…っ!そんなに強く押さえつけないでください…!暴れませんから…!」


「…」


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