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第18話 炎上 -弥生と紫黄里- その1

【告知】

いつも読んでいただきありがとうございます。今回からスマホで読んでくださる方も読みやすいように、1話を分割して毎週投稿するスタイルに変更します。

今まで通りに一気に読みたいという方は、「カクヨム」にて先行して全文公開しておりますので、そちらをお楽しみいただけますと幸いです。

まことに勝手ながら、よろしくお願いいたします。



前回までのあらすじ

 ふとしたことから悪魔に包囲され、逃亡した結依と江美。2人が逃げ込んだ場所は悪魔軍の拠点であり、逆に敵指揮官のポラリスたちに追い込まれる。

 しかし、幸紀の登場により状況は一変し、逆にポラリスたちを撤退させることに成功するのだった。

6月24日 13:00 山取県 広松市 忍山しのぶやま


 緑の生い茂る山の中、悪魔回廊を走ってきたフェルカドは、左目を押さえながら倒れ込むようにしてポラリスの前に現れる。整列した悪魔軍の兵士たちの前に現れたフェルカドを見て、ポラリスは駆け寄った。


「フェルカド!!しっかりしろ!!」


「若…!ご無事でよかった…」


 ポラリスの腕の中で、フェルカドは小さく呟く。ポラリスはすぐさま周囲にいた兵士を呼び寄せると、フェルカドの肩を担がせた。


「急いでフェルカドを治療させろ!行け!」


「若…お気遣いありがとうございます…どうか我ら邪族の再興と繁栄を、あなたの手でお掴みください…」


「勝手なことを言うな、貴様の力もまだまだ使う。俺1人に責任を押し付けるなど許さんぞ」


 ポラリスの憎まれ口に、フェルカドは小さく微笑む。そのままフェルカドは、他の悪魔軍兵士に肩を担がれながら悪魔回廊の中に連れて行かれるようにして姿を消すのだった。

 フェルカドの背中を見送ったポラリスは、改めて自分たちが置かれた状況を思い返した。


(フェルカドですら傷を負わされるとは…コーキ、やはり侮りがたい…このまま真っ正面から戦っても勝ち目は薄いだろう…ならば、当面はフェルカドが戻るまで時間を稼ぐべきだろうな)


 ポラリスは自分の中でそう結論を出すと、兵士たちを呼び寄せる。やってきた兵士に対して、ポラリスは指示を始めた。


「武器を用意しろ。次の戦場に行くぞ!」



同じ頃 広松市街 レストラン

 誰もいなくなり、廃墟となったレストランで、星霊隊のメンバーたちは食事をとっていた。


「さぁ!!皆さん!!お食事ですわよ!!」


 レストランの厨房から、キララが配膳車を押しつつ姿を現す。配膳車の上には銀色のトレイと蓋が被せられた料理が載せられており、荒廃したレストランの中であってもそれだけで高級感が漂っていた。


(す、すごい...これが本当の上流階級の人たちの食事...)


 柳生紫黄里は、初めて味わう空気感に気圧されながら、目の前に置かれた料理の蓋を取る。すると、上品に盛り付けられたオムライスと茹で野菜が姿を現した。


「おぉおっ...!す、すごい...!」


「本当はもっと豪勢にしたかったんですけど、時間の兼ね合いで1品料理になってしまったのは許してほしいですわ!けれど、補給班全員で腕によりをかけて作った料理!味は保証しますわよ!さぁ、召し上がってくださいまし!」


 配膳を終えたキララは、そう言ってその場を去っていく。星霊隊の女性たちは、一斉にいただきますと言ってから食事に手を付け始める。紫黄里もその例外ではなく、恐る恐るオムライスの一角をスプーンで崩し、口に運んだ。


(!!?すごい美味しい!!こ、こんな美味しい料理が、もっと豪勢になっちゃうの...!?侯爵って、本当にお金持ちですごい人なんだ...!)


 紫黄里はオムライスのあまりの美味しさに黙り込み、侯爵への思いを内心で叫びながら、残るオムライスを次々口に運んでいく。

 黙々と食事を進める紫黄里をよそに、他のメンバーたちは雑談を交わし始めた。


「今日大活躍だったね、あんなに悪魔倒して」


「いやいや、そっちだって、すごくいい作戦立ててたじゃない」


「幸紀さんもめっちゃ暴れてたねー」


「ねー、しかも、私らだってめちゃくちゃ悪魔倒してるじゃん?もう勝ったでしょ。私だって今日だけで10体は倒したよ」


「私15ー」


 食事を続ける紫黄里の耳にも聞こえてくる、活躍を自慢しあう仲間たちの話し声。紫黄里の手は、気が付くと止まっていた。


(...私、全然活躍できてない...同じ偵察班の江美さんは敵の拠点を見つけて、しかも敵の組織構造まで調べてきた...咲来さんだって空を飛べるから偵察はよく任されてるし、弥生さんだって狙撃とトラップで活躍してる...けど...私は...)


 紫黄里がそう思って俯いていると、向かいに座っていたすみれが声をかけた。


「紫黄里?食べないのかい?」


「え?あ、いや!まさか!この極上の馳走を目の前にしてこの『永遠の黒き翼』が食べないことなど、ありえるものか!」


 紫黄里はとっさにおどけて言葉を返し、オムライスを口に運び始める。そんな様子を見て、近くに座っていたすみれや、望、心愛や四葉も穏やかにほほ笑んだ。

 和やかな空気感の中、紫黄里だけはおだやかではいられなかった。


(皆だってそう...私よりずっと活躍してる...すみれは強いし、望は地形だって変えられる...心愛は傷を治せるし、四葉だって信頼されて、副長として皆をまとめてる...同じ学校だから、一緒の状況だと思ってた...でも現実は違う...このままじゃ...私だけ置いて行かれる...みんなから...いる価値がないって思われて...忘れられちゃう...!!)


 周囲の雑談の声が大きくなるにつれ、紫黄里の強迫観念も強まっていく。紫黄里はそれをかき消すように、ひたすらオムライスを口に運んでいくのだった。



数十分後 レストラン外


 食事を終えた星霊隊のメンバーたちは、連戦の疲れを癒すため、レストランでしばらく休憩することを決めた。

 レストランの中でメンバーたちが休憩している間、紫黄里はひとり、レストランの外に出てきていた。


(頑張らなきゃ...頑張らなきゃ...頑張って、みんなに忘れられないようにしなきゃ...でも、どうすれば...)


 紫黄里はひとりそう考え、強く焦りながら、レストランの植え込みに腰を下ろす。

 そうして彼女はため息をつくと、首を横に振った。


(駄目だ...考えても何もでてこない...とにかく、次の戦いでは、絶対に役に立つ!...でも、役に立てるのかな...私、そんなに戦闘能力が高くないし...すみれとかの方が目立つよ...どうしたら...)


 脳内で悶々とする紫黄里の耳に、突然なにかの物音が聞こえてくる。

 紫黄里はすぐに立ち上がり、周囲を見回すと、左手に霊力で作った弓を握りしめた。


「何!?」


 緊張した面持ちで紫黄里は周囲を見回す。見えるのは、乗り捨てられた乗用車や、荒れた道路、そしてその奥にある木々の生い茂った山。

 彼女が左右に首を振り、ひと通り見終えたと思ったその瞬間、彼女は乗り捨てられた車の陰から、人影のようなものが、山に向かって歩いていくのを目撃した。


(...!)


 驚く彼女をよそに、その人影はゆっくりと振り返る。紫色の肌に、金色の髪。普通の人間とかけ離れたその姿は。


(悪魔...!しかもあの姿、話に聞いていた、日菜子さんを誘拐したっていうポラリスって悪魔と同じ...!)


 紫黄里がそう思って立ち止まっている間に、ポラリスは山へと走っていく。そんな姿を見て、紫黄里は慌てて走り始めた。


(話が本当なら、あれは敵のボス...!倒せばきっと手柄になる...!みんなにも、私のことを覚えてもらえる...!)


 紫黄里は逸る気持ちを抑え込みながら、車の陰などに隠れながらポラリスの後を追いかけるのだった。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました

次回もお楽しみいただけると幸いです

今後もこのシリーズをよろしくお願いします

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