表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年は天命を覆す  作者: 言ノ葉紡
旅立ち編
9/18

Prologue

 楽園とはなんだろうね。

 ぽつりと呟いた少年は木漏れ日から差し込む光を忌々しげに睨めあげた。


 大きな大樹が風に葉を揺らす。爽やかな音だ。平穏で、ぬるま湯に浸っているみたいで。その音が少年は嫌いだった。


「千年の、歌」


 それでも少年がそこにいたのは、少女がいるからだった。獣に身を寄せて午睡に浸る彼女のためだけに、少年は足繁くそこに通っていた。


 返った答えに傍らを見た少年は、相好を崩した。

 愛しいものに触れるように優しさだけを乗せた指先で少女の髪を掬い、口付ける。


「それは、いらない」


 そして何度目になるかもわからない否を伝える。


「それは過ちだ」

「……うん」


 でも、と。ゆっくりと身を起こした少女が少年に抱きついた。するりと解けた髪が地に落ちる。


「くるよ。ダメだって知ってる。もう決めてる。でも、来る。海を越えて。恋と一緒に」

「……」

「獣は泣いてる。訴えてる。会えない。会いたい。どうして。なんで。少しだけ、聞こえる。……好きにしなさいって」

「そう」

「これが最後だって」


 言葉を重ねるごとに震える背中を労わるように撫ぜて、訴えかける眼差しを無視して、少年は穏やかに紡ぐ。


「なら彼らは好きに歩むさ。踊らされるまま、馬鹿みたいにね」


 彼方を睨む双眸は、凍り付いていた。


 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ