初めてのカミングアウト。
今回は、B型事業所での出来事を綴ろうと思う。
最近、新しい指導員さんが入社してきた。初めて会った日は和が通所していた。簡単に名前だけの自己紹介を済ますと、その指導員さんと一緒に利用者を周っていた別の指導員さんが「和さんは3Dをやっていて、もう1人紘希くんって子がいてデザインやロゴ制作をしてます。」と補足してくれた。俺たちがDIDである事はスタッフ間で共有されていると思い、和はその場でDIDについては説明しなかった。俺からの伝言として、「紘希も『宜しくお願いします。』と言ってます。」とだけ伝えてくれた。
その数日後、俺が通所した際にその指導員さんとお話する機会があった。内界から見ていたもののお会いするのは初めてなので、「はじめまして、紘希です。」と挨拶をすると、とても驚かれた。「紘希さんなんですか?和さんに似てますね!」と言われた。『まあ、体同じだからなぁ』なんて考えながら「やっぱり似てるんですね。」と返し、その場は終わった。
『声や雰囲気が変わる』と言われることはあったが、『初対面の人からすればわからないよな』という想いが強かったので、特に気にしはしなかった。ただ、体はひとつなので「似てますね」という表現は少し違うような気がしていた。というよりも、どんな豹変ぶりを想像していたのかが気になった。
その後、和が通所した日にも「この前、紘希さんにお会いしたんですけどお二人ともそっくりですね。」と言われていた。そこで何気なく「体はひとつですからね。」と答えると、「え?」と頭にはてなを浮かべていた。薄々勘づいてはいたが、この指導員さんはどうやら俺が和の中にいる交代人格だという事をわかっていないらしい。そこで和に、『自分たちは解離性同一性障害で、紘希というのは和の中にいる交代人格』という旨を伝えてもらった。DIDや解離性同一性障害という表現だとうまく伝わっていないようだったので、「俗に言う二重人格ってやつです。」と言うと納得してくれた。その流れで和と俺の関係性をどう解釈していたのか訊いてみると、「きょうだいとか双子だと思ってました。」との事だった。確かに目の前にいる人が二重人格だとはなかなか思わないだろうが、事業所側にはDIDを伝えてあるので情報が共有されていると思い込んでいたのだ。共有がなされてない事に驚きはしたが、指導員さんはDIDに批判的ではなく、すんなりと受け入れてくれたのはありがたかった。一方で、「こう言っていいのかわからないですけど、なんか格好いいですね。」と言う感想も言われた。DIDは精神疾患でありそれに伴う困り感もあるので、全く格好よくはない。だが、嘘だと言われるよりはいいかなとも思った。
その後もこの指導員さんはDIDに興味津々なようで、色々な質問をしてきた。これについては機会があれば、またこのエッセイに記録したいと思う。
今回は話の流れとは言え、和が自分の口からDIDをカミングアウトした。事業所に伝えた時や姉たちにカミングアウトした時は母が伝えてくれたので、自分たちでカミングアウトをするのは初めての経験だった。(俺は中から言葉選びのサポートをしていただけだが。)今回の指導員さんの反応はレアな気がするが、今後もカミングアウトが必要になる事はあるだろう。その時の為にも、自分たちの口から伝えるというのは重要な経験になったと思っている。




