障害と就労。
今回は、俺たちの就労について綴ろうと思う。
これを読んでくださっている方は承知の上だと思うが、俺たちには複数の障害がある。まずは、このエッセイのメインテーマでもあるDID(解離性同一性障害)。DIDは俺たちの障害の中で唯一後天性の障害だ。他には、脳性麻痺による四肢体幹機能障害、慢性呼吸不全、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動性障害)、学習障害(読み書き障害)という5つの障害がある。これらはすべて先天性のものだ。
そんな合計6つの障害を抱える俺たちは、現在無職だ。相変わらず就労継続支援B型は利用しているが、これは俺たちが便宜上「仕事」と呼んでいるだけで雇用契約は結んでいない。したがって俺たちは、生産活動は行っているものの労働はしていないという事になる。どれだけ頑張って事業所に通い作業を行っても、俺たちは法律上は「無職」なのだ。
就労継続支援には雇用型のA型と非雇用型のB型が存在する。一般的には就労移行支援事業所と呼ばれる就労訓練施設に通い、障害者雇用での就労及びA型事業所の利用が困難と判断された場合にB型事業所の利用が可能になる。他には、A型事業所の継続的利用が困難だった場合にB型へ移行する場合もある。つまり、障害者雇用<就労継続支援A型<就労継続支援B型の順で障害による就労の困難度が高いという事になる。その為、原則B型事業所は過去に就労移行支援やA型事業所の利用経験がない場合は利用が出来ない。
しかし、和は特別支援学校卒業後、在宅生活を経て今のB型事業所に所属している。これは和が障害基礎年金1級を受給しているからである。B型事業所の利用条件に先に述べたもの以外に《障害基礎年金1級受給者》というものがある。これは年金1級該当者は障害が重度である為、障害者雇用やA型事業所の利用は困難であるという判断からだと思われる。
それでも、和はA型事業所の利用をしたいと思っているようだ。理由は至極単純で、A型事業所ならば最低賃金が保証されるからだ。今の作業をもしA型事業所で出来れば、収入は2~3倍になるのだ。
和はPC作業を得意としていて、作業内容と支援によっては能力は十分にある。しかし、壁になるのが最初に述べた6つの障害だ。
まずは脳性麻痺と慢性呼吸不全。これにより、職場での身の回りの事(衣類の着脱やお手洗いなど)の介助が必要になったり、職場に酸素ボンベの持ち込みと交換が必要になる。また勤務時間が今よりも長くなる事から体力面の不安もある。
では、在宅勤務にしたらよいのではないか。確かにそうすれば介助や酸素、体力に関する問題はクリアされる。しかし、在宅勤務となると主な業務内容はデータ入力などの事務作業になる。そうなると問題になるのが学習障害だ。和は読み書き障害がある為、データ入力の際に入力位置のズレや誤入力が発生したり、文字が読めず入力が出来ない可能性がある。つまり、入力したデータを全てチェックしてもらう必要があるのだ。
最後に学習障害に配慮のある環境で支援を受けながら働ける場合でも、ASDによるコミュニケーションの困難さが問題となる。指示を適切に理解出来なかったり、困り感を伝えるのが難しい事があるからだ。それに加えてDIDの症状もある。仕事の最中に俺から和に交代が起こってしまえば、和は全く記憶がない状態で仕事を引き継がねばならないのだ。俺から和への強制交代時は俺が大きく調子を崩した場合になるので、脳内会話が出来ない可能性がある。そうなれば、業務に支障が出るのは明らかだ。
このような理由から、知的能力や知識上は問題なくとも障害の重複により、俺たちは未だ就労が出来ていない。
その点、今のB型事業所は1日2時間利用が可能なので、お手洗いや酸素ボンベの交換が必要ないし衣類の着脱等の介助はしてもらえる。そしてコミュニケーション面に関しても、そもそもこちらから質問でもしない限りは会話をする事はあまりない。そしてわからない事は、繰り返し質問をしたり確認をしたりする事が出来る。また和と俺で全く別の作業をさせてもらっているので、交代が起こっても作業に支障はない。収入面に目を瞑れば、俺たちには合った環境と言える。それに今の事業所も工賃が低い訳ではない。ただ、雇用契約を結ぶA型と比べるとどうしても差が出てしまうだけの事だ。
正直、今のB型事業所での生活で精一杯な部分はある。和が高校時代に実習に行ったB型事業所では、作業スピードやASDのこだわりなどを理由に「和さんはB型の利用は出来ません。」と言われていた。そんな和がB型を利用出来ているだけすごいとも言える。しかし、能力はあるだけに本人としては上を目指したいのだと思う。
ただ、B型を利用し始めた時期と俺がこうして表に出るようになった時期が重なっている事からも、社会に出るという事が和にとっては大きな負荷となるのも事実だろう。
俺としては、就職をすれば更なる症状の悪化の可能性がある事も鑑み、今の生活を続けたいと思っている。それと同時に、B型事業所の作業の対価である工賃の増額を願ってやまない。




