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リアル異世界  作者: 紘希
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診断を受けた日。

 秋も終わりを告げようとしている頃、大学病院の診察の日が訪れた。目的は解離性障害の専門医の診察を受け、DIDであるか否かを確かめる事。

 その日、朝目を覚ましたのは俺だった。診察は(なごみ)に受けさせるつもりでいたが、大学病院なだけあって待ち時間も長くなることが予想できた。その上、初診で診断を貰うとなればそこそこの時間が必要だろう。(もっとも、1回の診察で診断出来るのかは俺たちにもわからなかった。)そうなれば、なるべくぎりぎりまで和を休ませておくのが得策だろうと判断し、病院に着くまでは俺が出ていることにした。

 大学病院は通える距離ではあるが、車でも少々時間がかかる。だが、外に出る経験が少ない俺にとっては車からの景色はとても新鮮で楽しいものだった。

 そして病院に到着し、母が駐車場に車を停めると和に交代する。この頃には、1分前後での交代が出来るようになってきていた。目を覚ました和は少し驚いていた。そして俺が病院に着いて交代したのだと伝えると納得した様子だった。これはいつもの事である。和にとっては記憶がない間に日が変わり、居る場所さえ変わっているのだから当然と言えば当然だろう。

 病院のサイトに『時間に余裕をもって来院ください。』と表記があったので、診察予定の1時間前に病院に着いていた。医師の診察の前に予診があるとの事で、始まる時間が読めなかったからだ。

 しかし、予診が始まったのは到着から2時間後、予約からも1時間は経った頃だった。予診が始まるまでの間の待ち時間、患者の呼び出し音がやけに大きく和はイヤーマフを付けながら過ごしていたが、それでも待っているだけで疲れて何度か交代しそうな気配はあった。それでも何とか耐え、予診を受ける事ができた。

 25分程の予診を終え、今度はやっと医師の診察だと思ったのだが、そこからが長かった。待てど暮らせど呼ばれることはなく、診察に呼ばれたのは予診を終えてから2時間後の事だった。診察の内容は予診の内容と重複する部分が多く、現在の症状や困り事についての質問だった。そして、俺たちが想像していたよりもあっさりとDIDの診断が下りた。通っていたメンタルクリニックで言われた適応障害というのは、適応障害でも解離症状が起こる事があるからだという。それでも今回の医師は、「ここまではっきり人格が分かれていれば、DIDだと思います。」と言っていた。他にも、「パニック障害ではないがパニック症状があるだろう。」との診断だった。薬はこの日の2日前に地元のメンタルクリニックで貰っていたので今回は処方はなしとなり、次回の予約を取って、約30分の診察は終わった。

 次回から地元のクリニックに戻ってもいいとも言われているが、母と3人で話し合った結果、今のところ暫くは大学病院に通おうと思っている。

 病院からの帰り道、疲れ果てた和はすぐに俺と交代してしまった。和は『紘希(ひろき)の存在を否定されたらどうしよう』とずっと不安がっていたので、一気に緊張が解けたのだろう。

 こうして俺たちは、正式にDIDと診断された。俺が生まれて約17年半、表で生活を始めて約2ヶ月経った日の事だった。

 帰り道に見た人生初の夕焼けは、とてもキレイだった。

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