昔の記憶とチャイム音。
今回は、俺が表に出るようになる前の事について綴ろうと思う。
昨年の9月に俺が表に出るようになる前、和が学生だった頃は完全に『紘希』という人格として表に出る機会は数える程しかなかった。しかし、学校では常に和と俺が混ざっていたように思う。そして、学校以外の記憶はあまり残っていない。その理由について考察してみた所、1つの仮説に辿り着いた。
それは、学校以外の時間は俺が内界で眠っていたという説だ。学校という場所である以上、俺が生まれた出来事のフラッシュバックもしやすい。加えて、俺の苦手なチャイム音が毎時間鳴るのだ。俺が調子を崩さない訳がない。しかし学校では俺の出番も多い。その結果、学校では俺が和に混ざった状態で過ごし、学校が終わると俺は休息の為に眠りについていたのではないだろうか。
この仮説を母に話すと興味深い話を聞く事が出来た。和は母の送迎で通学していたのだが、車に乗り込んで母と2人になった途端に泣き出すのが常だったそうだ。しかし、車に辿り着くまではそんな素振りはないらしい。車に乗って母と2人になると急に泣き出すのが母は少し不思議に思っていたそうだ。
この状況についても、先述した仮説で説明がつく。そもそも俺は和がパニックになったり泣いてしまうような状況を平常心で乗り切る為に生まれた。故に、俺と混ざっている間は泣かずにいられたのではないか。しかし、母と2人になり安心出来る状況下になると俺が休眠してしまう為に混ざりがなくなり、和の人格だけの状態になるので急に泣き出してしまうという訳だ。
この仮説が正しければ、俺の記憶のほとんどが学校の物である理由も、チャイムが鳴る環境にも拘らず俺が眠らなかった理由も、和が急に泣き出す理由も説明がつくのだ。こればかりは確証を得るのは難しいが、総合的に判断して間違ってはいない気がしている。
何故学校の記憶ばかりなのか、何故当時はチャイム音が鳴っても耐えられたのか、ずっと謎だった。しかし今回この仮説に考えが至った事で、俺の中でこの謎は解けたも同然だ。
まだまだ謎の多いこの疾患について、俺たちの症状について、また気付いた事があればここに記録したいと思う。




