表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リアル異世界  作者: 紘希


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/87

和が通所しようとした日。

 今回は、B型事業所への通所日について綴ろうと思う。

 その日は事業所で動画編集講座があり、(なごみ)が受講したいと言うので通所をする事にしていた。しかし『事業所での事件の話。』で綴った出来事以降、和は通所を怖がっていた。通所前に頓服の抗不安薬を服用した状態で行くという話になっていたが、俺や母としては和がまだ怖いのであれば行かなくてもいいと考えていた。講座に関しても、俺が参加して後から内容を和に教えればいいだけの話だ。参加を決めた段階で和が行けない可能性や途中で交代する可能性を考慮して、講座担当の指導員に録音の許可も取っていた。

 作業内容が違うので例の利用者さんは講座には参加しないが、通所はする可能性がある。そこが不安材料だった。それでも本人が行くと言うので一応その予定ではいたが、前日になり状況が変わった。前日になり元々あった不安が強くなったらしく、軽いフラッシュバックを起こしたのだ。そして和にもう一度気持ちを訊くと、「講座は受けたいが、怖さが勝つ。」と言うので俺が代わりに通所する事にした。

 この頃、そろそろ通所を週1ぐらいから再開しようかという話も出ていた。しかし頓服を事前服用しなければ行けそうにない状態だったので、まだその時ではないという結論に至った。

 確かに頓服を飲めば行けるかもしれない。しかし、頓服薬の服用が前提ではいけないのだ。常用薬のみで通所をし、たまたま調子を崩した時の服用なら頓服薬の使い方としても適切と言える。だが、服用しなければ行く事が出来ない場合は行かない方がいいだろう。

 何より、そこまでしていく理由もないのだ。和は何事も一生懸命で生真面目な性格な上にASDの特性もあり、一度決めた事を覆すのが難しい。「一回行くと決めたから行かなきゃいけない!」という思考に陥ってしまう。そして、精神的な不調で予定を変えるべきではないと考える。その真面目さと責任感の強さは長所なのだが、俺たちが利用しているのは就労継続支援B型。障害や疾患を理由に雇用契約を結んでの就労が困難な人を対象とした支援サービスなのだ。精神的不調も含め柔軟に対応してくれる(するべき)場所なのだから、和の不調も通所困難の正当な理由にはなる。加えて今回は俺が代わりに通所するという手段もあるし、その可能性についても事業所側には話してある。何の心配も要らないのだ。


 そうして、通所は俺がする事になった。工賃受け取りの日以来、半月ぶりの通所だ。俺が事業所に送り届けてもらったのとほぼ同時に、例の利用者さんも通所してきた。俺が行って正解だった。もし和が通所していても、ギブアップしていただろう。

 講座はと言うと、初心者~中級者向けの内容と聞いていたのだが、実際は中級者以上向けだったと思う。俺は普段デザインをメインにしているので、動画編集には詳しくない。それでも内容は一応理解は出来るレベルの筈だった。

 しかし、問題があった。和は学生時代から個別指導だと理解できるが、全く同じ内容でも一斉指導になると理解が難しくなるという特性があった。それが俺にも適応されていたのだ。講座はスライドを見ながら一斉に指導を受ける。そうすると、途端に理解が難しくなるのだ。個別に教わると理解は出来たが、講座はスラスラと進んでいく。その上、講座を聞きながらPCの操作をする必要があった。挙手をしても気づいてもらえず、なかなか質問が出来ずに講座が進んでしまう。マルチタスクの苦手さもあり、周囲と同じペースで講座を受けるのはなかなか難しかった。

 そして、講座中に別件で他のスタッフさんから話しかけられてしまった。「講座中なので待ってください。」と言えばよかったが、相手の勢いに負けて軽く混乱してしまい、そんな発想も出来なかった。結果、講座が進む中で別の会話をする事になってしまったのだ。当然講座の内容は入ってこず、ますますついていけなくなった。

 幸い録音もあったし、質疑応答の時間に質問が出来たので、大まかには理解出来た。和に最低限の内容は伝えられたし、後日質問してもいいとの事だったので困ったら指導員に質問すればいい。


 今回の講座は思っていたより難しかったが、自分の特性を知るいい機会になった。講座の内容も和の仕事に役立ったようだ。代わりに受けた講座だったが、受けてよかったと思っている。

 和が通所できるのはまだ先かもしれないが、不安なく行こうと思える日まで見守っていこうと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ