和と交代が出来なかった話と初めての交代方法。
今回は、和との交代に失敗した日について綴ろうと思う。
その日も朝から在宅で仕事の日だった。前日の話では和が仕事をすると言っていたので、朝目覚めた俺は交代を試みた。いつもなら1~2分で交代できるのだが、この日は何度試しても交代の気配がない。仕方がないので、仕事は俺がする事にした。
和が出て来ない理由には、心当たりがあった。前日に和が大切にしている物が無くなっている事が判明した。和が入れたと記憶している場所に入っていないのだ。和は片づけは苦手だが、自分が仕舞った場所はしっかり覚えている。探す時に見落とす事はあっても、仕舞った場所を忘れる事は殆どない。なのに今回はその場所をいくら探してもないのだ。気づいたのが夜遅かったので、捜索は翌日に持ち越しとなった。和にとっては、収納場所を覚えていなかった(失くした)自責の念と探すには片付けをしなければいけない恐怖(和は片付けや掃除に対して強い恐怖心がある)のダブルパンチだった。恐らく、かなりの精神的負荷がかかったのだろう。
ちなみにその探し物は、俺が仕事をしてる間に母が見つけてくれた。自室の引き出しに入っていたそうだ。いつもの和であれば、移動させた事は忘れない。ただ、移動したと考えられるタイミングが俺が表に出始めた時期なので、解離性健忘の症状で記憶が抜け落ちている可能性はある。つい先日も、自分が歯磨きをしたこと自体を忘れていた。母曰く、健忘の症状が増えているのではないかとの事だった。
さて、探し物は無事に見つかったがここで問題が発生する。それは見つかった事実を和に伝えられない事だ。俺が出ている限り、和とはコミュニケーションが取れない。その事実を伝えるには交代するしかないのだ。ただ交代できるかが問題なのだ。
時間が経った昼過ぎ、もう一度交代をしてみる事にした。すると、幸いな事に2分程で交代が出来た。約束では俺が起きたら交代をする予定だったので、時間が過ぎている事を不思議がっていた。そこで朝交代が出来なかった事を伝えると、驚いていた。「じゃあお掃除しないと」と不安そうに口にした和に母が見つけた事を伝えた。喜んでいたが、やはり移動した記憶は全くないようだ。和が大切にしている物を移動して忘れるだけでなく、入っていた場所を聞いても思い出さない事なんて今までなかった。それ程、和は記憶力がいいのだ。これについては先日の歯磨きの件も含めて健忘症状と思われるので、次回の診察時に主治医に相談する事に決めた。
その後は和が表に出続けた。失くした物が見つかった安堵と記憶がない事の不思議さが入り混じっていたようだが、元気になっていた。
その日の夜、また俺たちはSNSのライブを見ていた。その中で俺が興味を引かれる物が出た。そうしている間に徐々に混ざり始めてしまった。だが、今まで俺が表の何かに興味を持っても交代が起こる事はなかった。なので大丈夫だろうと思っていたのだが、この日初めて俺が前のめりになった事で交代が起きた。気づくと俺は内界ではなく表にいて、和は中で眠っていた。『興味があると表に出てしまう事がある』という話は聞いた事はあったが、俺たちは初めてだった。
今までは俺も和も内界から自分の意思で出る事は出来なかった。相手が引っ込む事で表に出られるイメージだ。今までなら和が出ている間は和が引っ込まない限り俺が出る事はなかったのだ。今までは表に居る和とコミュニケーションを取る事で交代のタイミングを決めていた。だがそれが出来るようになった今、俺が自由に出入りが出来るという事だ。一方、和は引っ込む事は出来ても内界から出たいと意思表示をする事も自分の意思で表に出る事も出来ない。
勿論、俺は自分の意思を押し通すつもりはない。和の人生なのだから、和の意思を尊重したいと思っている。今回のように前のめりになって思わず表に出てしまう事はあるかもしれないが、それについては和も理解してくれた。
今後も2人で相談しながら、お互いが楽しく過ごせるようにしていこうと思っている。




