交代と頓服の使い分け。
今回は、ある日の出来事を綴ろうと思う。
その日は仕事が休みで、いつもよりゆっくり眠った。起きたのは俺だった。
実はこの日、俺宛に荷物が届く予定だった。開封は自分でしたかったが、いつ届くかわからない。ただ和の時間を確保すべく、和が休みたいと言わない限りは俺の活動時間を3~4時間に抑えている。その為、荷物が届くまで待つ訳にはいかない。そこで母にも相談して荷物が届いたら俺に交代してもらおうという事になった。目を覚ましてから1時間ほどで和に交代した。交代した和に事情を話すと快く承諾してくれた。
いつもなら朝から昼にかけて和が出て、昼から3時間ほど俺が出る。その後、和に戻るという交代サイクルにしている。朝起きたのが遅かったとはいえ、夕方に差し掛かったあたりで和に交代の予兆が表れ始めた。しかし幸いな事に、そのタイミングで荷物が届いた。和も休みたがっていたので、俺に交代してもらった。
届いたのは、SNSライブで購入したルースだった。元々は和の趣味なのだが、和が見ていたライブで俺好みの色のルースがあった。俺自身、ルースにすごく興味があった訳ではないが、キラキラとした物は前から好きだった。そして好みドンピシャな物に出会ってしまい、購入に至ったという訳だ。早速開封し、光を当てたり写真を撮ったりして楽しんでいる間に2時間が過ぎた。夕食前ということもあり、トータル3時間は表に出たので和に交代する事にした。
しかし、ここで問題が起きた。和が表に出ると同時に地震が発生したのだ。なんというタイミングだろう。あと数秒交代が遅ければ、和の記憶には残らずに済んだのに。目覚めた瞬間、和は「地震!」と言った。地震自体は小さなものだったのだが、目覚めたと同時の地震というのがかなり怖かったようだ。すぐさま母が駆け寄って抱きしめた。呼吸は乱れ、母曰く動悸もあったようだ。5分程して、喋る事もままならないものの少しは落ち着いた和に「中戻る?」と母が問いかけた。すると和は静かに頷いた。そして再び俺に交代をしたのだ。
交代した時の体は息切れや体温の上昇、頻脈などの症状は残っていた。だが、俺は恐怖心がないので、比較的すぐに落ち着いた。
夕食を済ませ、エッセイの執筆をする。朝にお気に入りの豆でコーヒーを落として飲んでいたので、2杯目は希釈コーヒーを選んだ。
少しして風呂に入る順番が回ってきた。前にも書いたが、俺は身体違和が少ないタイプだ。入浴にもさほど抵抗がない。和にとってもそうかもしれないが、風呂の時間は母とゆっくり話すにはもってこいだ。この日は『いつ和に交代するべきか』について話していた。和はこういう時、『安全な状況になったら交代して欲しい』と言っていた。小さな地震が一度あっただけなので、状況としては安全だ。ただ一つ懸念点があるとすれば、和は内界で寝ても恐怖心が消えない点だ。俺の場合、ストレスに晒されて内界で眠ると目覚めたら回復している。しかし和の場合、「ついさっきの出来事」という感覚が抜けず、恐怖や不安を引きずってしまう。この差はもしかすると、自発的に目覚める俺と交代によって起こされる和の違いかもしれない。
そして俺は会話の最中に大切な物の存在を思い出した。頓服薬だ。まだ処方されたばかりで馴染みがなく、すっかり忘れていた。こういう時にこそ、和に頓服の服用を勧めるべきだったかもしれない。その事を母に話し、1度和に交代してみようという事になった。
風呂から上がり、一段落した所で和に交代する。交代した和はまだ症状が残っていた。そこで頓服を飲ます。前回飲んだ時は効果が出るまで1時間ほどかかったが、あの時は症状が出始めて時間が経っていた。今回も実際には時間が経っているが、和にとってはついさっきの事だ。それに呼吸苦などのパニック症状もあった。効き方が違うかもしれないと期待したのだ。
20分程経つと、和の様子に変化が表れた。会話をし始めたり、母と少し離れても大丈夫になった。今回は頓服の効果があったようだ。やはり症状が出てすぐ飲んだ方が効くのかもしれない。これについては、今度の診察で主治医に訊いてみようと思う。
頓服の服用から1時間後には和もすっかり元気になっていた。そこで改めて、今後このような事があった時の対応について相談をした。その結果、地震により強制交代が起きた場合は除いて、原則交代の前に頓服を飲んで様子を見る。そしてそれでもダメな場合は交代することになった。交代により少しはクールダウン出来なくはないようだが、結局恐怖心や不安感は引きずってしまう。ならば、頓服で不安感が落ち着くのを待つ方がいいのではないかという話になったのだ。
実際に頓服を飲んで落ち着いた事で、薬が効いた後は普通に活動が出来た。翌日も和が目覚め、仕事も出来たのだ。
頓服は月に10回までなので、頼りすぎる訳にはいかない。しかし俺にも和にも効果があるとわかった今、何かあった時は交代と頓服を適切に使い分けていきたいと思っている。




