introduction
強い。この眼帯の女は強い。
「もう誰も来ないから。待ちくたびれたじゃないの。あなたは私の待ち人かしら?」
やけに友好的に話しかけている眼帯の女に反して、ノアからは緊張した空気が伝わってくる。話す余地はない、ここで戦うといった様子だ。
「おまえと話すことはない。今すぐここを立ち去れ。」
「つれないこといわないの。怒るとかわいいお顔が台無しよ。」
その瞬間、ノアの目の前に眼帯の女が剣を抜いて迫っていた。ノアも剣を抜き、その攻撃を防いだ様に見えた。が、赤い血しぶきが僕の目の前を塞いだ。
「ノアッ」
「大丈夫よ。少し油断したけど、浅い傷だから。」
急所にはなっていないようだが。それでもノアの腹部から血は流れ出ている。このまま、長期戦になったらこちらに分が悪い。
「あなたが連れている、僕のことは私には紹介してくれないのかしら。」
「誰があなたに紹介するもんですか。この人は、私をここまで案内してくれただけよ。」
「冷たい子。まぁいいわ。あなたを殺してから、自分で聞くわ。私の名前はラストっていうの。そこの僕、よろしくね。」
そういいながら、ラストは眼帯に手をかけ、隠していた眼をあらわにした。隠していた左目は、右目の黒い瞳とは異なり、赤く光っていた。その瞳が、ノアを見た瞬間、ノアの動きが止まった。ラストは刀を片手に、ゆっくりとノアに近づいていく。
「ノア、逃げろ。このままじゃ殺されるぞ。」
ノアに呼びかけても反応がない。あの瞳なんだ。あの眼にみられてから、ノアの動きがおかしくなった。理由は分からない、けど、このままじゃ目の前でノアが死んでしまう。友達と言って良いのか分からない。今日であっただけの、ほんの少しの付き合いだけど、彼女を失いたくない。僕の身体は自然とノアを助けようと彼女方へと駆け寄っていた。ラストがノアに剣を振りかざそうしている。
「やめろーっ」
そう叫ぶと、僕の視界は光に包まれ、間に合わないと思われた僕の手はノアの身体へと届き、ノアの身体に新たな傷がつくことはなかった。
「あなた、時の一族の末裔ね。なるほど、そういうことね。」
ラストがそうつぶやいた。ノアも僕の方を見て、少し驚いたような顔をしている。
「今日のところはこれでいいわ。いいことが知れたし。あの人に言うとおり、待ち人にも会えた。そこの僕、今度あった時は名前、聞かせてね。」
そう言い残すと、ラストはどこかへ言ってしまった。
「あなた、時の一族の末裔なの。」
ノアが詳しく聞かせろと言わん顔で尋ねてくる。
「そのことは、いずれ話そうと思っていた。その前に、君の傷の手当てをしよう」
ノアに肩を貸し、手当をするために僕の家へと歩き始めた。




