Encounter
今日は街の祭りでどこをみても賑やかだ。あの惨劇から4年が経ち、その痕は街のどこにも残っていない。ただ4年という月日が経ち、街の復興が進んでも人々の心には傷が残っている。
あの惨劇で傷を負った人はたくさんいた、しかし、亡くなったのは母さんだけだった。あの日、あの時なにが起こったのか記憶がはっきりしない。けれど、母さんが街を守ったという事実だけは目の前の状況から理解ができた。そして、僕の身体に刻まれた呪い。これは時戻しの魔法を使った者の近くにいたことによる呪いだ。あの日、一体なにがあったのかそれだけが頭の中に靄がかかっていて思い出せない。ドンッ。
「あ、すみません」
「そんなこちらこそすみません。」
ぺこりとお辞儀をする少女。すごく丁寧な子だな。自然とその少女と別れてからも、目で追ってしまった。漆黒の髪に、翡翠の瞳。どうやら街に初めて来たのか、周りをキョロキョロしている。ここは俺の出番かな。
「あのー、さっきはどうも。もしかしてこの街、初めてですか?よろしければ、街の案内しますよ。」
「本当ですか!お言葉に甘えさせてもらいます」
「この街にはお祭り目当てで来たんですか?」
「それもあるんですけど、一番は捜し物です。」
「捜し物?」
「はい、ある門を探していて」
僕は歩みを止めた。そして、彼女の顔を見ると彼女の目にさきほどまでの輝きはなかった。門、それはこの街で管理しているものだ。あの日の惨劇の記憶はないが、あの惨劇に門が関係しているということだけは覚えている。だからこそ、僕にとって関わりたくないものだ。
「お兄さん、門を知っているんですか?」
「やだなー、お兄さんだなんて。僕はキヨっていいます。お嬢さんは?」
「私はノア。キヨ、門のこと知っているの。」
僕は演技がこの上なく下手だ。だからごまかせないと分かっている。はぁーっとため息をついた。観念するしかない。
「知ってるよ。君は門を探して何がしたいの?」」
「内緒って言いたいところだけど、きっと内緒にしたら門の場所教えてくれなさそうだね。理由聞いても、内緒にしてくれる?」
僕はうなずいた。すると彼女は小声で耳打ちした。
「壊すの。」
僕は彼女から少し離れ、彼女の顔を見た。翡翠の瞳は、光を宿していて迷いのない目だった。
「君にあれが壊せるの。誰が怖そうとしても無理だったから、あれは残っているんだよ」
「私ならできる。私しかできないことなの。」
僕はあの門がずっと憎かった。ぼくから母さんを奪った原因に違いないからだ。それを彼女が破壊してくれるという。断る理由なんてない。
僕は黙って彼女の手を引いて門のある方向へと歩き出した。




