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桃田太郎の奇妙な一日  作者: アキラ
13/14

二日目3

都会に行くのに恥ずかしくないオシャレな服をという話だったはず


「わぁ~神父さま、きれい」

「タロウ、タロウ!くるって回ってください。後ろはどうなってますか」

ほめそやす子供達に、迎えに来たキイチ先生のはしゃぐ声。

リクエストにお応えして回転して見せるとひときわ大きな歓声が上がる。

まるでアイドルになった気分である。

プロデューサーのシャルが満足そうにうなずいている。


男性物の服は女性物と違ってそこまでバリエーションがあるわけではない。

今日の僕も白シャツに黒パンツというどこにだしても恥ずかしくない無難なファッションである。


襟のエリマキトカゲさえなければ


WHY?




首元にぐるっと白いフリルのような布を幾重にも重ねる意味は?

丸顔を引き立てるため?頭身を少なく見せる視覚トリック?

逆でしょ、普通!

もっとこう…すらっと細見えコーデとか…あっジャケットもあるの?そうそうこれで縦のラインを作って…

白いフリルシャツに赤い貴族風ジャケット。膨張色を重ねることで生まれたそのシルエットは


サンタクロースだよ!!


え、もしかして正装?教会にサンタでジングルベル?

これが異世界のオシャレなのか…?ファッションショーレベルのハイセンス?凡人には理解できない世界…

そりゃ僕はオシャレではない。着やせ効果を狙って黒ずくめになるタイプの人間さ。

盛り上がる異世界人にアウェーを実感していると


「中央行ってすぐ教会ってわけじゃねぇんだ。遊んでねぇで着替えな」

村長!

良かった。やっぱりこれは娯楽に飢えた悪ふざけ!ひとり仮装大賞!これで合格ラインは

「本番前に汚すんじゃねぇよ」

…届くんかい…


用意してもらった別の服はゆったり長い白いワンピースみたいなもので…

ズボンを履いた、てるてる坊主の完成である。

全く同じ服をシャルも着ているらしいのだが、同じに見えない。

お忍びで下町に来た貴族の坊ちゃん風である。

オシャレなんて結局は人間の素材次第という現実。


「じゃ、現地集合ね」

「え。一緒に行かないの?」

てっきり村長、キイチ先生、シャル、僕で行くんだと思ってた。

ヌイさんは狩りに出ているらしく、教会の子供たちが牧場仕事のお手伝いに行くらしい。

「道覚えたいんだよね。時間も計っときたいし」

「タロウは私と乗り物で行きましょう」

村長とシャル、キイチ先生と僕で別れるようだ。…そもそもどういう旅程なのだろうか。

「半日は休まん。着いてこれなきゃ置いてくぞ」

「一日くらい通しで走れるよ!」

ああ…バトル漫画の住人だったね。わぁ…もう見えなくなった。

村の外って魔物とかいるのかな?魔法はまだ見たことないから、ない世界なのかな。

「タロウ、私たちも行きましょうか。こちらへ」

子供たちに別れを告げてキイチ先生と歩く。といっても目的地はすぐだった。

開けた空き地に着くと、おもむろにトランクの中から丸巻きの布を取り出した。あのトランク絶対4次元だ。


「さ、乗ってください」

これは…まさか!

「空飛ぶじゅうたんですか!?」

「っ!流石タロウ!その通りです!よくわかりましたね、これで空から中央へ行きます」

わぁ~い!夢のアイテム!魔法のじゅうたん!

僕はいそいそと中央に座った。なんて素敵な空の旅だろう!

「では、出発しますよ」

「はい!」


ばふっ


…何が起きた?


……真っ暗だ。


    バラバラバラバラバラバラバラバラババババババババババ


遠くで音が鳴っている…どんどん近づき、耳をふさいでないと痛いくらいの轟音だ。

内臓がふわっとした!目隠しをしてジェットコースターに乗せられたかの恐怖に悲鳴も出ない。

動こうにも体は布で包みこまれて窮屈だ。もぞもぞしていたら隣のキイチ先生に柔らかく拘束される。

何か言っているようだが聞き取れない。

多分、動くと危ないとかだろう。



これ、あれだ。


         ドローンの宅配


風呂敷に包まれた僕らをプロペラが運んでいく空の旅は数時間に及んだ。


地面に着く足があるって素晴らしい

僕は重力の安心感に感謝を捧げながら、まだ揺れているような感覚の体を大地へとへばりつかせた。

五体投地である

「騒音対策を忘れてましたね」

あの恐怖と閉塞感をその一言で片づけるキイチ先生も、暑かったのか頬が赤い。

しかし余計なことを言うと帰りが空中ブランコになる可能性があるので解放感は提案しないでおく。


「少し歩きますが、大丈夫ですか?」

抱き上げましょうか?と言わんばかりである。しかしチビでも幼児ではないのだ。

大丈夫ですと返し自分の足で立つ。…微笑ましい目で見るのはやめていただきたい。生まれたての小鹿じゃありません。

キイチ先生がこちらをとローブを差し出してきた。と、いうか着せてきた。

「フードも被ってください。けして外さないように」

念を押される。…勝手に脱いだら爆発する仕組みなのだろうか?

とはいえ、風が吹くたびに砂が舞うのでこういうアイテムが必須なのだろう。

キイチ先生もローブを目深にかぶっている。


異世界の都会だからヨーロッパのような煌びやかな都市を想像していたが…思っていたのと違う。

グランドキャニオンのような広大な土地に要塞で囲まれた中央都市…華やかさより、厳つい印象である。

村は森に囲まれた田舎の雰囲気だったのだが…この崖の山々を越えたところにあるのだろうか。

えー…これを徒歩で来るの?シャル達。ジャンプの修行風景だよ。


てくてく歩くが、見えているのに近づいている感じがしない。

鉄道が走っているようには見えないし、移動手段は馬なのだろうか。

とりあえずあの村の常識がこの世界の常識なのか答え合わせが終わらないと、迂闊に会話もできないのだ。

なのでキイチ先生が楽しそうに空中飛行の可能性を語っているが、鉄の乗り物が存在するのかわからない僕は

空飛ぶ車作れますか?とかリニア作りましょう!とか言えないのである。

まぁどこでも扉がある時点でとんでも科学の世界だけどね。


「……タロウ。その、中央は…誘惑がとても多い」

入り口の門が見えてきた辺りで、流れるように構想を語っていたキイチ先生が言いよどむ。

「…魅力的な人も多いでしょう。」

あー、美人局の心配?ぼったくりバーとか?

「もし…も、村に戻りたくないと…そう思ったなら…」


「私を頼ってはいただけませんか」


ぽつり、とこぼされた言葉は自信なさげで

「僕はあの村じゃなきゃ生きてけませんよ!」

自信満々にそう返した。


ははは、幼稚園くらいの子供に腕相撲で負けた僕ですよ!家電なしの生活って超重労働!

あと少しで職と住む所が手に入るのだ。

「あの村に助けられて、本当に良かったと思ってます。」


「身を売る心配もないですし」

腎臓って二個あるのに心臓より高いんだって。一個くらい…とか思わせる罠だよね。

一人で都会の闇から逃げきれる自信がない。

 

息をのむ声が聞こえ、隣を伺うがローブの陰になって表情が見えない。


「私が騙しているとは考えないのですか?」


え…なになに不穏…


「僕…売られるんですか…?」

とんとん拍子に話が進むと思ったら、罠?

思わず足を止め、後ずさる。

奴隷としては使い物にならないだろうけど、ドナー的な話?病気の金持ちの息子が僕の内臓を待ってるの?

今僕の顔は真っ青だろう。その顔を両手で掴まれる。逃がさないと言われているようで、ちょっと怖い。

「まさか!誰にも渡すものですか!」


「タロウの境遇につけこんでいる…そういう話です。…困りましたね。今なら言えると思ったのに…」

正面から向き合えば顔が覗ける。いつものキイチ先生だ。

とても心配してくれてるのがわかる。もしかして神父って誰もやりたがらない学級委員長的なやつで

何も知らない休んでる奴に押し付けちゃえ的な流れなのか?だから何年も不在だったとか

しかし不審者でしかない僕にこんなに親身になるなんて、ちょっと後ろめたい


「騙してるのは僕かもしれませんよ?」

罪悪感を軽くするために、わざと口に出す。それだけでちょっと許された気になる。それがわかったのだろう

「では、お互い様ですね」

苦笑して歩みを再開する。もめごとの気配に門番の二人が訝しげにこちらを窺っていた。


槍を持った力士だ。


強そうである。思わず凝視してしまう。

「…すごいですね」

入門手続きをしているキイチ先生に小声で囁くと

「…中央の顔ですからね」

選りすぐりの精鋭ってわけか。すると更に大柄な力士二人組が合流する。

おぉ~交代時間なのかな。相撲部屋を覗いた観光客のような気持ちで眺めてしまう。

会話の内容は聞こえないが、楽しそうに話し顔を寄せ…キスをした。


…あっ挨拶か!

お~う…客観的にみるとやっぱすごい絵面である。

外国人同士だからそういうものかと納得するが、僕の顔立ちだと浮いてない?

今のところ日本人顔を突っ込まれたりしていないが、見た目で怪しまれてたりしてないのだろうか?

ちらりとキイチ先生を窺うと、向こうもこちらを見ていた。

思わずギクリと肩が跳ねる。


妙な緊張感が漂う


「…挨拶ですよ?」

試すように含みを持たせて口の端を吊り上げるキイチ先生。

シャルがよくしていたちょっと意地悪そうな表情だ。

「はい!挨拶ですね!」

全力で乗っかっておいたが、背筋に冷たいものが走る。


パズルのピースがぱちぱちと嵌まっていく


僕の疑いはまだ晴れていなかったのだ…

そりゃそうだ。何一つ身元を証明するものがないのだから!

今までの行動、言動も全て観察されていたのだろう。

この先僕を待ち受けているものは


異端審問……!


「まずは、教会へ行く服に合わせた靴を買いに行きましょうか」

「はい!」


      この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ

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