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桃田太郎の奇妙な一日  作者: アキラ
11/14

二日目1

うっうっキイチ先生が寝かせてくれなかったんだよぉ…


僕は大変なことに気が付いてしまったんだ。

すべてを誤魔化したつもりでいても、何も解決してないよね?ってことに。

今日この後村長さんのところに行って一から説明しなくてはいけないんだ、自分が何者かって。


異世界から来ました


言えないよ!

言えたら勇者だよ!

眠ろうとベットに入ると湯水のごとく素晴らしいアイディアが浮かんでくるじゃん?僕はそれに賭ける!

って思ってたのに…キイチ先生の家って最新家電みたいなものいっぱいあるんだよ…

夕ご飯に普通の洋食ごちそうになりながら

 コンセント無くて電気じゃないっぽいのにどうやって動いてんだろう。

 コードでガチャつかないって家電界の革命ですよ!

 コンセント入れた気になってチンと鳴って開けたら生のパン みたいなことなくなるわけだ!

とか心の中で絶賛してたわけだ。声に出しちゃうと異世界人のボロがでるかもしれないしね


でも、あれはずるいよ!

てれれれってれーん どーこーでーもー扉ーー


病院の奥の扉の謎の小部屋の謎部分が解けたわけですよ。一階と二階を結ぶエレベーター!ドア同士を繋げて移動できるアイテム!

「これってどこでも出られるんですか!?遠くの町でも!?」

ってうっかりはしゃいじゃったのがキイチ先生のスイッチを押しちゃったみたいで


「そう!そうなのですよ、タロウ!私はこれを各町村にゲートとして設置し、流通交流の革新を図りたかったのです!なのに賊の侵入や逃亡の手助けにつながると販売許可が下りなかったのです!もったいないと思いませんか!?確かに技術を解明し悪用すれば窃盗や暗殺は容易になりますが、適切に運用すればこれほど便利なものはないというのに!お風呂のお湯の入れ替えもこの技術が使われていましてね、この家も元々教会近くにあったのを引っ越したのですが、家ごとこの場所に転送したんですよ!これは防犯設備にも応用できまして、正しい手順で解除されなかった場合侵入者の体の一部だけ転送、切断できるという数々の商品化の可能性を秘めていたのです!!まぁ確かに説明書を遵守しなければ命を失うリスクがあることは否定しませんが。お風呂の蓋もきちんと閉めてから行わないと、浴室いっぱいにお湯が転送され溺死、体中の水分が転送されて枯死しますので、くれぐれも気を付けてくださいね?」


こ…こっえ~~


この家の物うかつに触れなくない!?しくじったら爆発する仕掛けとかあるんじゃない!?

ドン引きしてる僕に、何故かとても嬉しそうに

タロウ、タロウ、これはなんだと思いますか?これはですね、タロウ……

クールなイケメン眼鏡って感じのキイチ先生が興奮しながら子供みたいに目を輝かせてるから無視するなんてできなくて

僕が一言返せば、キイチ先生から十言返ってくる言葉のキャッチボールを一晩中…

家電のセールストークに付き合っての 朝である。


突如エンディング曲みたいな音楽が鳴り響いた。オーディオだ~


「ああ…もう朝ですか。……時間の流れが異なる小部屋でも作れないものか…」

人間が欲しいと思う夢のアイテムってどの世界でも似通ってるんだなぁ

寝てないのにおはようの挨拶のキスが贈られたので、返す。


この世界すべての挨拶がキスらしくって昨日から頬にちゅっちゅ僕の世界じゃこんなの新婚バカップルレベルだよってくらいキスしてる。

ま~ほっぺだからいいんだけどね。命の方が大事。

朝ご飯の前に、たくさん食べてねのキスを贈られ、いただきますのキスを返す。

もう完全ネイティブだね!

今のところ異世界ギャップはこの風習くらいかな…


本日急用につき休診いたします 


文字も読める。日本語しかできないから有り難い。

「すみません。ご迷惑ばかりかけて…」

「元々医者としては開店休業でしたから、お気になさらず。それより睡眠時間を奪ってしまい申し訳ないことをしました。村長は昼夜逆転してますから、昼過ぎに訪ねる予定です。少し眠ると良いでしょう」

リネンを渡される。そうそう、これを二階に取りに行って罠にかかったんだった。

一階病院のベットを整えてカーテンを閉め寝る態勢に入る。

わぁ~学校の保健室のベットって感じでちょっと憧れるよね!この、非・日常感!


このあと誰もが感動、納得する自分設定を脳がひねり出すことを期待して目を閉じた。ぐ~~…



「タロウ、タロウ起きてください」


はっ今寝てた!?

バカな!僕本体は寝ていても、きっと頭はフル回転!出来上がりはこちらとばかりにアイディアが出てくるはずだ!

この…絶望感を味わった人間が生み出したのが、小人の靴屋なんじゃない?

きっと締め切りに追われてたんだろうなぁ

現実は、あぁ無常。


「お、おはようございますぅ~」

カーテンを開けると身支度を整えたキイチ先生が立っていた。

徹夜明けとは思えないキッチリカッチリ医者ルックだね。あ、でも白衣は着てないから医者ルックじゃなくてインテリスーツルック?

「おはようございます。昨日着ていた服が乾きましたので、お持ちしました。変わった素材ですね。伸縮性があり速乾性に優れている…どちらで仕立てたのかお伺いしても?」

「ぼ、ぼっ僕、自分で服買ったことありません!お力になれずすみません!!」

ひったくるように受け取り、カーテンの中へと逃げる。

学校ジャージーーー!!!

キイチ先生の好奇心を刺激するんじゃありません!やっべぇスポーツサンダルとかもこの世界に無い!?

でも村長に家行くのにコレ着てアレ履いて…

不審者ルックの完成だよ!!


もうだめだ…

黒ずくめの黒タイツ集団に改造されて僕自身は何もわからない設定でいくしかない

そもそも服とか靴とかの素材の説明なんかできないもん…

ガチでわかってないんだから…与えられただけだから…


のそのそ着替えていると誰か来た。

ダンダンダン!…ガチャッ

あー絶対ヌイさん。ほらね。

そろりとカーテンから覗いてみる。

そこにいたのはやはりガテン系忍者ルックのヌイさんだ。

昨日と違うのは髪を編んでいる。ほら、あの…細かい三つ編みがたくさんあるダンサーヘア?

あれすっごい時間かかるんでしょ。自分でやったのかな。二人の会話が聞こえてくる。

「収穫はありましたか?」

「ない」

「そうですか。…牧場仕事はもう?」

「終わった」

ヌイさん牧場の人なんだ!だからいい体してんだね!力仕事だもんね!

収穫作業くらいなら僕もできるだろうから、恩返しにお手伝いできるといいな。

…雇ってくれないかなぁ

「村長も先ほど起きられたみたいですし、行きましょうか」

キイチ先生がノートを見ながらつぶやく。

あのノート、メッセージアプリ機能があるやつ~

この家にいると余計この世界の常識がわからなくなるんだけど…外の世界はどういう感じなんだろう。


不安と期待を胸に、外へと足を踏み出した。


ちなみに玄関でスポーツサンダル履くの突っ込まれないかビクビクしてたんだけど…

ヌイさんが出会い頭に僕の口をガブリと噛んで挨拶したことが、キイチ先生の逆鱗に触れ

少し離れたところで言い合うのでうやむやになって追及されずに済んだ。

…実はダーウィンが来たで見たことあるから知ってるんだ

独り立ちした動物が自然の厳しさに群れに出戻ったら、鼻先くっつける挨拶の動物なのに

事あるごとに群れのリーダーがガブッと鼻から口を含むように噛むんだ。

 逆らうんじゃねぇぞ?わかってんな?

こ、怖~こんなの絶対服従だよ!何なら仰向けになって腹見せるよ!って話でしょ~

僕帰れないのかなぁ。第一希望は帰ることなんだけど…怪しまれて殺されても嫌だからな~

身体能力がバトル漫画界の住人だけあって倫理観が結構アレっぽいんだよなぁ~銃刀法違反とかなさそう

今のところ僕に優しいけど、シャチがじゃれたら飼育員死亡。みたいな?安心できっこない世界なんだよな~


外へ出てからこれだけつらつら考えても、村が遠い。

シャルがこんなとこ呼ばわりしてたけど、たしかに病院なのになんでこんなに村から離れてんのって距離だ。

僕の足のコンパスが短いのも原因の一つだけど、僕を置いて先に行けって言えない以上

必死に歩くしかなく…「失礼」   わぁ~70キロを軽々と~…

ひょいと抱えられぐんぐん周りの景色が進んでいく。長身の二人が普通に歩く速度は僕の全速力以上で

僕の足のコンパスが短いのだけが村が遠い原因だと…知りたくなかった。


村に到着した。…と、いいにくい規模の村である。

地面に降ろしてもらい辺りを見回した。

ぽつぽつ民家もあるし、お店もあるっぽいけど…第一村人はどこに?という過疎っぷりである。

バイト雇う余裕とかない?養うなんてもってのほか?

僕に不利な情報だけが手に入る。


「ここが村長のお宅です」

案内されたのは村長の家のイメージから程遠い、一番こじんまりとした木造のあばら家…いやいや

庵 というものだろう。雅な趣があるね。ただ庭?は広くとっていて、ここから入ってくるなとばかりにぐるりと石壁が積んである。

しかしその石壁も圧迫感は嫌だとばかりに低いのが、余計に崩れかけの廃墟染みている。

外れたのか扉が立てかけられて室内が見えていて…えぇー…ここ本当に人住んでる?

僕がビクビクしていると、薄暗い室内に白い影がゆらりと…

コツン「…来たか」

杖をついた長い白髪の老人だ。仙人のような白い痩躯に達観した表情。

コツン「突っ立ってないで、入んな」

抑揚のない声、気難しそうな村長の姿に

 大変だったねぇ~この村で暮らすと良いよ!丁度使ってない家があったね!

わぁ~ありがとうございます~

なんて展開はなさそうだと、うなだれながら入室した。お邪魔しま~す…


玄関は土間だ。

村長は住居スペースの一段高くなった板間に腰掛け、僕を見る。

「目明きじゃねぇんだ。顔寄こしな」

メアキ?

「村長は目が見えないので、顔を触らせてほしいと」

キイチ先生がそっと教えてくれる。えっ見えないの?気配とか読むのかな。

慌てて近くによると、意外と優しく慎重に触れてくる村長。こそばゆい…

「ハッこりゃまた…」

人が悪い笑みを浮かべ、顔面鑑定の結果は教えてくれなかった。

「坊や。お前の処分についてだが、それはすでに決まっている。」


「だが、身の上話を聞かんことには話が進まんのだよ」

顔を両手で挟まれたまま、至近距離ですごまれる。逃げ場はない。

僕はもう半泣きである。ぶるぶると震えている。求む処分回避の身の上話。

「あ…の、わからない、です。気づいたら…水の中で…し、下から来ました!」

オワタ

嘘は一切ついていない。しかし馬鹿正直にもほどがある。もはや馬鹿である。


「そうかい。…地下から。で?行くあてはないんだったな」

頷くと顔から手が外される。

「坊やは今日からこの村の神父だ。案内してやんな」


まさかの

 大変だったねぇ~この村で暮らすと良いよ!丁度使ってない家があったね! である。

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