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ボーンライフ  作者: ユキ
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それぞれの反応

 とある魔族の街。


 道端に集まる3人の魔族は何やら真剣な表情で会話をしている。



「聞いたか?」


「あぁ、新しい魔王様の事っすよね? 今じゃどこでもその話題でもちきりっすもん」


「魔族にとっては自分たちの今後を決める重要な話だものねぇ……」


 どうやら今や巷でももちきりの話題、新魔王クリス十六世について話しているようだ。



「ドワーフ公国とエルフ、それとサイクロプスは魔王様の庇護下に入るって話だぜ」


「エルフじゃなくてニューエルフっすね。彼らは元は同じ種族だったらしいっすけど……あれは完全に別物っすよ。……ここだけの話、男しかいない種族で、他の種族の男を襲って子供を産ませるらしいっすよ」


「何だそれ!? そんな化け物が四天王って大丈夫なのか!?」


 その話を聞き恐怖した口の悪い男は、思わず自らのお尻を抑えながら問いただす。



「どうやら今は四天王の黒騎士にニューエルフ全員ご執心みたいなんで大丈夫って話っすよ」


「それは……あんなのが沢山居て、全員に迫られるとか悪夢でしかないわね……」


 ここでもニューエルフたちの評価は相変わらずのようだ。



「ニューエルフもそうすけど、ワッフル公国も代表が四天王に入っていて、サイクロプス族は魔王様に助けられたってのもあるから魔王様の下に付くのは当然っすね」


「私の故郷の村も庇護下に入るって言ってたわ」


「お前らはお世辞にも強い種族じゃないからな……鬼族やウルフ族みたいな魔族でも強い種族は反発してるらしいぜ」


 どうやら魔王になろうと簡単に魔族全員が従う訳ではないようだ。



「前魔王様の時も弱者を優遇する政策に、強い魔族はかなり反発してたっすからね……それにウルフ族って言ったらアレっすよね? 元四天王の族長が勇者との戦いで逃げたって言う……」


 元四天王のウルフ族と言えば、シルバーウルフのランドの事だ。


「そうそう、族長がそんな事が仕出かしたのにドラミュート様の後継者って言ってる今の魔王様にはつけないわよねぇ」


「それにアイツら族長が四天王だったからって散々調子乗ってたからなぁ……そんな事もあったから今じゃ他の殆どの種族からハブられてるみたいだぜ」


 ウルフ族がやってきた事はアレだが、流石に今後のウルフ族を思い3人して哀れみの籠った遠い目をしている。



「何にしてもこの街がどうするかっすね……」


 その時会話している魔族の中で唯一の女性の魔族が意を決した表情をする。



「……私は、ドラミュート様のお陰で私たちみたいな弱い種族でもこうして安心して生活出来るようになったから、ドラミュート様の後継者であるクリス様にも着いていきたいと思う」


 すると女性魔族に触発されたのか他の魔族も自分の思いを答え出した。



「俺はパスだな……確かに黒騎士は噂通りならかなり強いだろうけど、他の四天王は子供と得体の知れない化け物だぜ」


「いや、あのミルカ様ってドラミュート様の下で四天王してたあのミルカ様本人らしいっすよ」


「えっ!? マジで!? 全然見た目違うじゃねぇか」


 この口の悪い魔族が驚くのも無理はない。


 今はダークで可愛らしいウサギの服が似合う本来の少女の姿だが、以前は妖艶な大人の魅力漂う20代程の女性の姿だったのだ。



「あの方は幻術のスペシャリストだから、前は見た目を変えてたって話っすね」


「マジか……前の妖艶なミルカ様のファンだったんだけどなぁ……いや、でも今の小悪魔的なミルカ様もそれはそれで……」


 それは犯罪一歩手前です。



「黙れ変態! ……でも、それで言うなら四天王でドワーフ族の愛らしい双子も流星の如く現れワッフル公国のビューティフルキングとして頂点に立った上、その後の人族軍との戦いでは元四天王のサリー様を倒したらしいわよ。あんなに愛らしいのにそんな強いんじゃ……拉致して私の愛玩ペットにするのは難しそうね……」


 それは完全に犯罪です。



「変態はお前っすよ……全く。お前らは何を見ているんすか! 見た目はアレっすけど、あの肉体の芸術美たるアルス様こそ至高じゃないっさか!! 何てったってあの体で弱い訳がないっす! あぁ……一度で良いからあの豊かな大胸筋にパフパフされてぇっす」


 それは合法だが絵面がヤバいです。


「「うわぁ……」」


 流石に他の魔族もこの情報通で筋肉フェチ魔族の発言には引いている。


「まぁ、願望は置いといて、自分はまだ静観っすね。新魔王様についてはまだまだ不確定要素が多すぎるっす」


「そうか、それぞれいろんな考えがあるだろうな……それでも最後は魔族全員手を取り合って行けたらいいな」


「そうね……」

「そうっすね……」



 それぞれ思う事はあるようだが、最終的な想いは同じ親しき3人の魔族たち。


 内容に差はあれど、こんな会話が現在魔族領の至る所で行われているのだ。


 それだけ新魔王就任は魔族にとって重大なニュースと言う事だろう。


 こうして続々と魔族領内では、新魔王の傘下に加わる魔族と、逆に反抗的な意思を持つ者、そして今は静観の時と、中立を保つ者など意見が出されて行くのだった。



 それにしてもこの世界はやはり変態で溢れているなぁ……。



  *****



「グロービル!! グロービルはいるか!!」


 ヤマト王国の王都セリーヌ。


 そこにあるグリル教の本部にある一室……そこに、その部屋の主人である教皇グロービルを呼ぶ大声が響く。



「どうしました勇者様」


 その声に答えながら隣の私室から現れるグロービル。



「どうしたじゃないだろ! 報告じゃ新たな魔王が誕生したと言うじゃないか!」


「そのようですね」


 勇者の怒鳴り声とも言っていい言葉に冷めた顔で答えるグロービル。



「何を落ち着いている! 早く兵を出して懲りない魔王と臣下共を殲滅しにいくぞ!!」


「それは……今は出来ません」


 グロービルの予想外の言葉に勇者の顔は驚愕の表情に変わる。



「なっ!? 出来ないとは何故だ! 魔王は神から最重要討伐対象とされている筈だろ!」


「そうですが……今は無理なのです。我々ヤマト王国が誇る人族軍は一部とはいえ先日のドワーフ共との戦いで大敗した為、国民から反発と疑念を持たれております。その状況で軍を動かす事は国民が納得致しませんので」


「そんな事知るか! 魔王を倒した勇者である俺が出るとなれば国民も必ず賛同する筈だ!」


 この勇者は……確かに魔王を倒した当初は国民から絶大な人気を得ていた。


 しかし、その後の横暴な態度によってその人気が地の底まで落ちている事にまだ気付かないのか……。



「申し訳ございませんが、そう簡単ではないのです」


 呆れた表情にならないよう努めつつ言葉を濁す。



「クッ……こんな事ならメルルなんて言うあんなナヨナヨした男に任せないで、俺が指揮を取れば良かったんだ」


 この後に及んだコイツは……。



「……お言葉ですが勇者様。それは勇者様ご自身がお断りしたから国王がメルルを任命したのではないですか」


「あれは……お前がドワーフは女でも髭面のおじさんの姿だって言ったからじゃないか! ……なのに情報じゃ新しい四天王になったドワーフの双子は可愛らしい女の子の姿だって言うじゃないか!? 話が違うだろ! それなら俺自ら指揮をとってやったのに!!」


 この勇者は口を開けば女、女、女……言っている事も感情任せで自分本位、話の筋も通っていない……これだから盛りのついたガキは嫌なんだ。


 召喚した当初はまだマシだったが、魔王を討伐して帰ってからこんなにも酷くなりやがった。


 調子に乗っているのもあるが、途中勇者にあてがった仲間の女たちが、敵によって殺されたり、居なくなったのが大きいようだ。


 中でも王女であるルナーレ姫を失ったのが痛い。


 王国随一の美しさを持つ彼女の言葉は、流石の勇者も疎かにはしなかったからな。


 それに聖女として国民から絶大な人気を得ていた彼女を失った事は、我々グリル教にとっても痛手だ。


 どうせいなくなるならルナーレ姫ではなく、勇者がいなくなれば良かったものを……。



 いっその事この勇者を生贄に賢者の石に魔力を補給して新しい勇者を召喚すべきか……。



 いや、次の勇者が使えるとも限らない。


 コイツは強さだけなら今までの勇者の中でも一級品だからな……。


 現状新たな魔王が就任した以上、性格はアレでもこの勇者を失うのはあまりにも惜しい。



 まぁ、いざとなったらあの方法もあるしな……。



「……おい! おい! 聞いてるのか!?」


 おっといかん、考え込んでいて勇者の事を忘れていた。


「失礼致しました勇者様。今は歯痒い気持ちもありますが、しばしの間お待ち下さい。頼りない国に代わり我らグリル教が国民たちを何とか説得致しますので」


「そんなの知るか! 報告によると魔王の側近には特上の美しさを持つ女が二人もいるらしいじゃないか! 勇者である俺の側にはそこらの女しかいないのにだ! そんな事が許されて言い訳がない! 俺は今すぐそいつらを手に入れなければいけないんだ!!」


 やはり理由は女か……それならば。



「……そうそう、先日鬼族の上玉の女を聖騎士隊が捕えましてな……勇者様さえよろしければ尋問をお任せしたいのですが……」


「それを早く言え!! どこだ! 今すぐ向かう!!」


「……」


 何ともわかりやすい……まぁ、その分扱い易くて良いがな。



 チリンチリン。


 急かす勇者を他所に机の上に置かれた呼び鈴を鳴らして部下を呼ぶ。


「お呼びでしょうか」


「勇者様を先日捕えた鬼族の娘の所へお連れしろ」


「はっ! 勇者様こちらになります」


 呼ばれた部下に従い側から見てもわかる程上機嫌で部屋を出ている勇者。


 こんなヤツが世界を救った勇者なのだから、世も末だな。



 さて、あんな勇者と同意見なのは癪だが、魔族は我らが神の敵、その中でも魔王は最優先討伐対象……真っ先に殺さなくてはならない。


 魔王とはそれだけ危険な存在なのだ。



 しかし、先程勇者に話した通り現状軍を動かすのは難しい。


 聖騎士隊を動かすのも手だが……そちらも以前王国に侵入した魔族と思われる賊にやられるような体たらくぶり……とても任せられない。


 全く……使えない奴ばかりだ。



 幸い今回の魔王は対話を所望する平和主義の腰抜けだ。


 魔王の言葉を信じるならすぐにこの国へ攻めてくる事はないだろう。


 それならばその時間を利用して、王の尻を叩いて立て直させるまでだ。



「しかし……それでは些かつまらんな……」


 思わず本音であるそんな言葉が漏れ出る。



 くくく……つまらんか。


 そうだな……それではあまりにもつまらな過ぎる。



 そうだ……せっかくだからアイツを使ってみるか。


 思いついた内容を考え思わず笑いが漏れる。


「くくくく……ふはははは……せいぜい私を楽しませてくれよ……魔王クリス十六世」


 一人っきりとなった自らの部屋に教皇グロービルの笑い声が響き渡るのだった。

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