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ボーンライフ  作者: ユキ
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ワッフル公国との会合②

「魔王様! それなら僕を……僕を魔王様の四天王にして下さい!!」


「「「ええぇぇ!?!?」」」


 例の子……ヒカルたんによる爆弾発言。


 しかしそれで驚くにはまだまだ早すぎた。



「あっ、ヒカルがなるなら私も四天王になりたいです」


「「「なッ!?!?」」」


 まさかのアカリたんの追随。


 この国に来てから俺たちは一体何度驚かされなければいけないのだろう。


 大体の原因はこの二人……トゥライト達による物なのだが……この姉弟は、可愛い見た目と反して思考がぶっ飛んでるよな……。


 これからは爆弾姉弟と呼ぼうか……。



 現実逃避でいつも通りアホな事を考えていると、そんな爆弾姉弟に待ったをかける人物が一人。


「ちょっ!? どう言う事じゃ二人とも! そんな話ワシは聞いてないぞ!!」


 孫ラブお爺ちゃん、ゴルズさんだ。


 他の者も何か言いたそうだが、ここは家族であるゴルズさんを立てて遠慮している。


 きっと家族であるゴルズさんなら上手いこと二人を説得してくれると言う思惑もあるのだろう。



 ……だが、孫ラブお爺ちゃんであり、爆弾姉弟の祖父であるゴルズさんがそう思い通りに動いてくれる訳もなかった。



「二人が四天王になるなら、ワシも四天王になる!!」


「「「はぁ!?!?」」」


 まさに爆弾姉弟のお爺ちゃんらしい爆弾発言である。


 アンタさっきまで自分じゃ役不足だって言ってたじゃん!



「それはダメ。お爺ちゃんが抜けちゃったらまたこの国がまとまらなくなっちゃうもん」


「ハゥッ!?」


 アカリの正論と言うなの拒否に変な声を上げて床に崩れ落ちるゴルズさん。


 マジで何やってんだこのお爺ちゃんは……。



「なら、俺が四天王になるぜ!」


 そんなゴルズさんをスルーして、今度はこの男がカッコつけた表情をしながら四天王に名乗りを上げた。



 そう……ドルオタこと、ジンだ。


「ジンさんはさっき、ご主人様から『自ら去ると決めたのだから……戻ってくる事は許さない』って言われて、了承してましたよね」


 そんなジンにニッコリ笑いながらもバッサリ切り捨てるルナーレの言葉。


「流石に引くわねぇ」


「ジンおじさんカッコ悪ぅ。ねぇ、アカリちゃん?」


「えっ!? あ……うん……」


「グボハァッ!?」



 アルスとミルカからも冷たい目を向けられながら毒を吐き捨てられ、最後にアカリたんの一言が会心の一撃となり、ジンもまた変な声を上げて床に崩れ落ちた。


 そんなジンの姿に、先程まで憧れの眼差しで見つめていた重鎮たちの目も冷たくなる。


 一瞬で信頼を地のどん底まで落とすこの男……流石である。



 しかしジンはそれで諦めなかった。


 震える腕に力を入れ、どこぞのホラー映画のように這いずって近付いてくると、俺の足にしがみ付く。



「……ご……後生だ、四天王にしてくれ〜ぃ。さっきのは血迷っただけなんだぁ。頼むよぉ〜親友だろぉぉ」


 最早恥も外聞もないその姿。


 とても30後半のオッサンがする行動とは思えない。


 こんな事までして、トゥライトがどう思うか容易に想像つくだろう。


 親友の俺でもドン引きなのだ……流石にジンにホの字のヒカルたんも、こんなジンの姿を見たら呆れ……



 てない!?



 なんか僕の為にそこまでしてくれるなんて……みたいな表情で、目尻に涙まで浮かべて感動している!?



 ……恋は盲目とはよく言ったものだが……流石にこれは……。



「なぁ、お願いだよぉ! こんなに頼んでるのにシカトするのか!? おい! お前がそんなヤツだとは思わなかったぞ!」


 さっきから足元のオッサンがうぜぇー。



 もうこのままコイツをおいて帰ろうかなぁ。



「お願いしますお願いしますお願いしますぅぅ!! 四天王にしてくれるならこのまま靴だって舐めますからぁ! ……あっ、お前素足か」


「だぁもう! 鬱陶しいッ!! わかったからもう止めろ! 恥ずかしい!」


 本気で舐めようとしたのか、俺の足を持ち上げるあまりのウザさに思わず俺の気持ちが折れた。



「いよっしゃあぁぁ!! 流石魔王様! 愛してるぅ」


 マジでコイツ、このままおいてきたい……。



「……あのぉ……僕たちは……」


 そうだった、この二人が四天王に入りたいって話をしてたんだったな。


 目の前で飛び跳ね喜ぶオッサンのせいでスッカリ忘れていた。



「うーむ……確かに実力で言うならアカリた……ゴホンッ! アカリもヒカルも強力なスキルを持っていて、魔力も既に四天王並にある事だし、問題ないが……」


「問題ないが……やっぱりダメなんですか」


 そんな昔のカードローンのCMに出てきた小型犬みたいに潤んだ瞳で見つめて来ないで……心が折れそう……。



「ちょっ!? それじゃ話しと違うじゃねえか! 何のために頭まで下げて四天王になったと思ってるんだよ!」


「ジン……やっぱりお前を四天王にするのはやめて、二人を四天王にする」


「うそうそうそ!! ちょっとしたジョークじゃねぇか。魔王様とあろうお方がジョークの1個くらい受け止められないでどうするんだよ。なぁ親友?」


 マジでコイツうぜぇー! ……ただ、今回はコイツのお陰で心を保つ事が出来た。


 感謝はしないけどな!!



「……はぁ、とりあえずお前はこれ以上喋るな」


「了解致しました魔王様!!」


 良い笑顔で敬礼するオッサン。


 トゥライトの事でキャラ変わりすぎじゃね!?



「アホのせいで脱線してすまない……話を戻すが、二人の四天王入りだが、元四天王であるサリー様を倒した事から実力も申し分なく、ワッフル公国の新しい国宝で、国宝たちの頂点であるビューティフルキングとなった事から名声もこれから世間に広く周知される……となれば、そんな二人が四天王と入ってくれれば我々魔王軍にとってかなりのプラスとなるだろう」


「「それじゃぁ!」」


 喜んでる所悪いが、世の中そう上手くはいかない。



「だが……二人はまだ若過ぎる」


「「えっ……」」


 四天王にしてもらえると喜んだ所に否定の言葉で二人は驚き目を見開いた。



「まてッ「悪い口はこれかしらねぇ」ウグッ!?」


 ついでに再び口を出そうとしたジンはアルスによって物理的に口を塞がれ目を見開いた。



 ……その方法?


 言葉にするのはあまりにもアレな絵面なのでちょっと……。


 と言う事で、オッサン同士のアレな絵面は視界から外しつつ話を戻す事にする。



「魔族を束ねる魔王軍の四天王ともなれば、その分責任も大きくなる……それはただでさえこれからワッフル公国のビューティフルキングとしてやっていかなくちゃいけない二人にとって、かなりの重荷となるだろう」


 俺の言葉にこの場にいるのはある程度責任を伴った立場の者ばかりだった為、皆頷いている。


「それでも上に立つ者として妥協は許されず、全てを完璧にこなさなくてはいけない。何故なら、何か問題があった時に割りを食うのはワッフル公国の国民や他の庇護されている魔族たちになるのだから」


「それは……」


 二人にも自分たちがこれから成さなくちゃならない事の大変さと重要さが想像出来たようで、反論しようとしたが暗い表情となり言い淀んだ。



「そして何より四天王ともなれば、人族側から最優先討伐対象に指定され、真っ先に命を狙われるだろう……それこそ先代魔王を倒した勇者が派遣され、てもおかしくない」


「……」


 魔王をも倒す程の存在である勇者が自分たちを殺しにくる……そのダメ押しの言葉についに二人は何も言葉が出来なくなった。



「……まだまだ若い君たちがそんな大変で危険な重荷を背負う必要はないだ。……それこそ俺たち魔王軍は、君たちのような未来ある魔族たちを守り、幸せになってもらう為存在しているのだから」


 俺の言葉に俯き震え出す二人。


 どうやらわかってくれたようだな。


 本当なら二人が四天王になってくれるのは大歓迎なのだが、先程も言った通り二人はまだ若い。


 四天王なんて大変で危険が伴うものなどならずとも、いろいろな可能性が待っているのだから。



 あの勇者の次元の違う強さを間近で体感した俺だからこそ、今の魔王軍の戦力では人族に勝てないと容易にわかってしまう。


 まぁ、俺も守る者が居て死ぬ訳にはいかないから、勇者に勝つ為の力をこれからもつけていくつもりだが……。


 まだその強さをつけられるかも……本当に可能なのかもわからない今の現状で、そんな死地にわざわざ未来ある若者を招き入れようなどと思わない。



 だからこそ、これで良いんだ……。



「もう……です」


「……? 何か言ったか?」


 一人自分の言葉に納得していると、ヒカルたんが俯いたまま何か呟いた。


 しかし、その言葉があまりにも小さな声だった為、良く聞き取ることが出来ず聞き返した。


 するとヒカルたんは顔をガバッと上げると今度は部屋に響き渡る程の大声で自らの心の想いを叫んだ。



「もう! 守られるだけの存在は嫌なんです!!」


 ヒカルたんの瞳には人族軍との戦闘に自分も参加したいと言ったあの時のような激しい決意の想いが宿っていた。



「僕たちは皆さんに比べれば確かに若いです……でも、だからと言って守られるだけの存在ではありません! 若くても僕たちには戦う力があるんですから! そしてその力は、自分たちの未来も……みんなの未来も守る為に手に入れたんだと思うんです!」


 その瞳と言葉の力強さから、最早ヒカルたんの意思は固まっているようだった。



「お兄様、私もヒカルくんたちと同じくらい若いけど四天王やってるよ?」


「うッ……」


 そこへ来てヒカルの言葉に開花されたのか、まさかの身内であるミルカの裏切りにあい、思わず言葉に詰まる。


 その隙に隣のアカリたんもここぞとばかりに応戦して来た。



「それに私たちには力だけでなく、私たちを支え……一緒に戦ってくれるファンのみんなもいるわ! だって私たちトゥライトの歴史は、2人だけでなく、ファンのみんなと一緒に作り上げて来たものだもの! そうだよね、みんな?」


「クゥーーッ!! 当たり前じゃないか! 私らは何があってもトゥライトと一緒だからな!! 一生付いていくぜ!」


「その通りだ!!」


「ウスッ!!」


 アカリたんの言葉に真っ先に反応したのはクロッソ達だった。


 流石トゥライトファンクラブ会員No.0001から0003番の最古参である。


 ふと視界の端でジンがそれに乗っかろうとしていた所をアルスによって強制的にフレームアウトして行くのが見えた。


 普段からそのガッツを出して欲しいものだ。



「ビューティフルキングとしての仕事なら気にしなくて良いですわ。お二人はこの国の象徴として存在して頂けるだけで国民は大満足なのですから。この国の運営は今まで通り私たちが全て請け負います」


「そうだそうだ! 俺らに任せろ! トゥライトの為ならこの女とだって協力してやらぁ!」


「あら? それはこちらのセリフですわ。アナタは昔から大雑把ですからね。私がフォローしてあげますわ」


「アン? お前がいちいち気にし過ぎなんだろぉが! たく! 服の洗い方なんて何でもいいだろうが」


「はぁ!? アナタはズボンとタンクトップしか着ないから何でも良いかも知らないけど、服によって洗い方を変えないと繊維が傷んでしまうのよ! それにアナタだって食事の要求が細かすぎるじゃない! この私が作ったんだから文句言わずに美味しいって言って全部食べてれば良いのよ!」


「バカか! 筋肉には適切な栄養が必要不可欠なのは常識だろうが!!」



 フォローをしていた筈が何故か、二人で言い争いを始めたけど……この二人ってもしかして……。


「もうねーちゃんもローソさんも良い加減にしろよ! 協力するって言っといてそれじゃ全く当てにならねぇじゃねぇか」


「姉御の言う通りだ! トゥライトの目の前で夫婦喧嘩は止めてくれ! 恥ずかしい!」


「ウスッ!」


「「ぐっ……」」


 あっ、やっぱり夫婦だったんですね……。



「みんなありがとう。ローソさんもカロッソさんも、頼りにしていますから夫婦仲良くしてね」


「「ッ!? はいッ!!」」


 流石アカリたん。

 たった一言でバツが悪そうにしていた二人が途端に息を吹き返し、元気よく返事を返した。



「お爺ちゃんも、この国のみんなを纏められるのはお爺ちゃんしかいないでしょ? だから……私たちの代わりに纏めて欲しいの……お願い」


 ビクン!


「ヒカルもほら」


「うん……お爺ちゃん……お願い」


「いやっふーッ!! お爺ちゃんに任せとけぇぇ!!」


 先程まで落ち込んで地面と一体化していたゴルズさんもアカリたんとヒカルたんの一言で変な掛け声も共に飛び上がり復活する。


 糸も容易く人心を掌握するアカリたん……恐ろしい子。


 しかし、確かに二人で四天王とワッフル公国の頭をこなすのは無理だろうが、ワッフル公国の事は今まで通り他の国宝が纏めてくれるなら問題無いだろう。



「みんな……ありがとう! 魔王様、これで魔王様が心配する事は全部解消されましたよね!」


「うむ……」


「では!」

 


「……君たちには負けたよ。二人とも……これから四天王として、よろしく頼む」


「「はい!! よろしくお願いします!!!」」



 こうしてヒカルたんの熱い想いとアカリたんの巧みな人心誘導により俺の方が折れる形となり、二人の四天王入りが決まった。


 まぁ、いろいろあったが、ドワーフたちの国であるワッフル公国に来た当初の目的は果たせた訳だ。



 そしてそれは、四天王が4人全員揃った事になる。



 ついに……。



 しかしそこでふと、ある事実に気付く。



 あれ? 四天王、5人になってね? と。

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