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ボーンライフ  作者: ユキ
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想いの力

 ジンと共にアルスたちから逃げ、ドワーフたちの元へ向かっていると、突然ジンが何かに気付いたように立ち止まった。


 かと思えばスキルを使い、今の俺でも視認出来ない程のスピードでその場から消え去る。


 訳がわからなかったが、今のアイツの体でむやみやたらにスキルを使用する事は出来ない筈なので、きっとスキルを使用しなくては行けないほど重要な何かに気付いたのだろう。



 案の定、ジンが消えてからすぐに大きな音と共にその原因がわかった。


 ヒカルたんたちが乗っていたゴーレムが崩れ始めたのだ。



 崩れ出すゴーレムに気付いたワッフル国民たちも慌てふためき、急ぎ救助に向かうべく走り出すが、その必要は無かった。



 しばらくして再び瞬間移動でもしたように突然ドワーフたちの目の前に現れるジン。


 ジンを確認した俺たちもジンが合わられた場所へ向かうが、遠目からその背中にはゴルズさんが、そしてその腕にはアカリたんとヒカルたんの二人が抱えられていたのが見えた。


 三人を助ける為に無理をしてスキルを使用したのか。


 しかし……他の誰もが気付かない中、いち早くトゥライトの危機を察知するその嗅覚……最早ストーカーの粋である。


 今回はそれで三人が助かったから良いけど……友として今後が心配です。



 死んだ目の親友の心配をしながらジンに合流すると、ふとある事に気付いた。


 さっきからゴルズさんとアカリたんは心配する周りに自らの無事と感謝の言葉を話しているのだが、ヒカルたんが何故かジンを見上げたまま微動だにしないのだ。


 ライブの時以外はいつもアカリたんの後ろに隠れてあまり前に出ない事からみんなはまだ気付いてないようだが、アレはもしかして……。


 と言うか、その熱っぽい眼差しからして確実にそうだよなぁ……。


 恋愛ごとと言えば女性の方が気づきやすいので、ウチの女性陣にも意見を聞きたい所だが……。


 今度はお姫様抱っこを所望されたので現在俺の腕の中にいるルカは、我関せずと言った感じで幸せそうな表情でいるので邪魔したくないし……。


 ルナーレたちは空いてる残りの腕に誰が抱き締められるかで再び言い争うをしているので、先程の事もあり正直関わりたくない。


 俺の周りの女性陣がマイペース過ぎる……。



 まぁ、わざわざ確認しなくても……思い返せば昨日もそうだった。


 本人が気付いているかはわからないが、側から見たらこれはもう……確実だよね?



 そりゃ昨日の今日で二度も命の危機を助けられたらねぇ……恋は盲目とは良く言ったもので、こんな無精髭で死んだ目のオッサンでもカッコよく見えちゃうよ。


 ジンもヒカルたんたちに違う意味で本気なようだし、その内の一人から好意を抱かれているのなら友としては嬉しい事なのだが……ヒカルたんはあの容姿で男性……そう! 男の娘なのだ!


 その事実を知ったあと、ジンがどうするかだよなぁ……。


 俺に出来る事は、ジンはともかくヒカルたんが傷付かない事を祈るばかりだ。



 まぁ、あのジンだから、例えヒカルたんが男性だと知ってもそんな事にはならないと思うけどね。



 そして、もし真実を知ってもなお、本人たちが良いと言うのなら……骸骨と吸血鬼で結婚している俺たちだもの、応援するぞ!


 そう心の中で呟きながら、二人の行く末を思い、俺は優しい眼差しを送る。




 そうこうしている内に、しばらくしてヒカルたんがようやく我に返ったようで、周りを見て驚いた表情になる。


 どうやら今までジンの事しか見えてなかったせいで周りの状況に今頃気付いたようだった。



 もう完全に惚れてるやん!


 ヒカルたんの反応が可愛すぎる!



 すると今度は何やら考え込むヒカルたん。


 どうしたのだろうと様子を見ていると、そんなヒカルたんにようやく気付いた男……まぁジンなんだが。


 ヒカルたんの様子に怪我をしていると勘違いしたジンは、ヒカルたんの全身を舐め回すように見るもんだから、恥ずかしさのあまりヒカルたんがリンゴのように真っ赤になり見るなと拒否した。


 その言葉にこの世の終わりのような表情で崩れ落ちるジン……。


 その前にアカリたんとヒカルたんを近くのドワーフに託すあたり流石だとは思うが……流石にその反応で気付けよ。


 ちなみにゴルズさんはまだ背中に背負われたままだ。



 二人のもどかしいやり取りに呆れていたが、一つ問題が起きた。


 ヒカルたんの様子に俺と同じく逸早くヒカルたんの気持ちを察した者がいたのだ。


 ヒカルの祖父であるゴルズさんだ。


 長い事一緒に生活していたのだから、少しの機微で気付いてもおかしくないよね。



 ゴルズさんは2人へ交互に視線を送り、見る見るうちに驚愕の表情に変わると、次の瞬間には怒りの表情に変わり一人だけ背負われたままだった為、そのままジンの首を締め出した。


 別にジンが悪い事をした訳ではないんだが、行き場のない気持ちが八つ当たりとなりそうさせたのだろう。


 アカリたんは何も気付いてないみたいだけど……ここら辺は人生経験の差かな。


 ただまぁ、この状況……マジでカオスである。



 真っ赤な顔を手で隠すヒカルたんと、全く気付かず心配そうに話しかけるアカリたん。


 黒騎士と呼ばれた時とは正反対の全身真っ白になっているジンの首を後ろから掴み怒鳴りながら揺さぶるゴンズ。


 そんな4人を見る俺に我関せずと言った感じで後ろから抱き付くアルスとミルカ、ルナーレの3人。


 結局抱き締められるのは諦めて、平等に抱き付く事にしたようだ。



 そんな3人にも……そして周りにも更に我関せずと言った感じで、俺にお姫様抱っこされて幸せそうにするルカ。


 カオスなのはいつもだが……今日はまた一段とカオスカオスしているなぁ……。



 だけどこんなカオスがボーンシティでは日常だったせいで、どこか安心している自分がいる。


 今日もみんなといつもの日常が過ごせて良かった。



  *****



 ある程度その状況も落ち着くと、助けられたゴルズさんとアカリたんが集まったドワーフたちに自らの無事と、ことの顛末を報告した。


 その中で驚いた事はアカリたんがスキルに目覚めた事……そしてサリー様が生きていると言う話だ。



 ドワーフたちの間で再びサリー様が命令されて暴れないかと心配の声が上がったが、そこへ絶好のタイミングでミュートが帰還し、俺と共に奴隷の首輪の効力が解除された事を説明した事で心配の声も無くなり、急ぎドワーフたちの間で救助隊が編成されサリー様の捜索と救助に向かった。


 そしてしばらくしてかなり大怪我を負ってはいるが、サリー様の無事が報告されたのだが……これで俺たち魔族側は全ての目的が達成され、まさに最高の結果となった訳だ。


 最悪の事態も想定していただけに、全てが上手くいき……本当に良かった。


 一つ間違えればこちらが負けていた事だって考えられる状況の中、昨日のジンの大活躍や、ヒカルたんとアカリたんのスキルの発現、ルナーレが身を挺してスキルで兵士の補助を行ったり、ミルカの強力な幻術による援護、ミュートの機転など仲間の目覚ましい活躍があり、何とか乗り越える事が出来た……。



 本当に運が良かった……。



 この結果は全て、みんなの強い想いが起こした奇跡なのだろう。


 改めてみんなの頑張りに感謝しつつ、今回の戦いで気付いた事について考える。



 今回二つの奇跡が起きた。



 それは……スキルの発現だ。



 通常スキルに目覚める者は滅多に現れない。


 スキルに目覚める者は数千人に一人と言われている事からも、その希少性がわかるだろう。


 それなのに、今回の戦闘では、アカリたんにヒカルたん……そしてミュートの報告を聞くに、敵の総大将であったメルルもまた、新たにスキルに目覚めたようだった。


 これだけの短期間で、三人もスキルに目覚めるなんて……異常だ。



 その事で俺は、ある仮説を立てた。



 この世界では……想いこそが大きな力になるのだと。


 それはリンが立てた進化についての仮説と同じだった。


 つまり……スキルを得るきっかけも……進化をするきっかけも、強い想いをトリガーとしていると言う事だ。



 戦闘によって得る魔素や経験も必要なのだろうが……生まれる前から迫害の対象で、体も人より小く戦闘にむかないトゥライトの二人は、これまでまともに戦った事なんて無い筈だ。


 それなのにそんな二人が今回スキルに目覚めた。


 つまり、必ずしも大量の魔素が無くても強い想いさえあれば新たな力を得られる可能性があると言う事。


 まぁ、日常的に魔素は取り込まれる訳だし、戦闘以外にも魔素を取り込む方法があるのかもしれないが……。



 ただ、想いが大事な事には変わりない。



 そしてそれはその逆も言える。



 いくら努力しようが……。


 いくら敵を倒して魔素を集めようが……。


 強い想いがなければ……その次の強さへは行けないと言う事だ。



 それはこれからもっと強くなろうと考えている俺にとって、重要な事になる。


 今までのようにただ敵を倒してレベルを上げていても……いずれは俺の種族である骸骨将軍としての限界がくる。



 魔王になって、みんなを……ルカを守る為に強くなるには、種族でもスキルでも更なる進化が必要だ。


 その為には強い想いが必要……。



 それこそ骸骨将軍に進化した時のような……。



 さて……どうしたものか……。



 コツン。


 その時胸に何かが当たる感触があった。



「クリス……クリスは一人じゃないよ?」


 それはお姫様抱っこで俺の腕の中にいるルカだった。


 どうやら例の通り俺の心を読んで、一人で悩む俺を心配して言ってくれたようだった。



 一人じゃない……確かにそうだな。



 魔王だから一人で強くならなきゃいけない訳じゃない。


 俺には心強い仲間がいるのだから。


 それに魔王一人ではどうにもならないから、四天王と言う存在がいるのだ。



 それに気付いた俺は、既に俺の四天王となってくれたミルカとアルスを見る。


 案の定、二人は俺の考えを読んだようで、先程までの馬鹿騒ぎはどこへやら、真面目な顔で俺の視線に力強く頷き返した。


 まったく……だから俺の心の中を読むなよって……。



 でも……。



「ありがとう」


 俺の言葉にニッコリと笑う仲間達。



 本当に俺は、恵まれてるんだな……。



 よし! 俺が強くなる事もこれから考えていくが、まずは四天王を全員揃えるぞ!


 今回ゴンズさんの勧誘には失敗したから、また次の四天王候補を見つけなくては。



 でも、今回は決して無駄骨じゃなかった。


 ジンにこれ以上ない功績が残せたのだから。


 これでジンも頼もしい俺の四天王になってくれる筈だ!



 そう思いつつ見つめた先に居るジンは、未だにヒカルたんの言葉を受けて白くなったままだった。



「ヒ……ヒカル……たん」


 呟くように漏れ出るジンの言葉と情けない姿に先程までの湧き上がるやる気は見事に吹き飛ばされた。


 こんな情けないオッサンが俺の四天王……。



 本当にコイツで大丈夫だろうか……。

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