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ボーンライフ  作者: ユキ
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芽生える想い

「ヒカル……動ける?」


「無理……お姉ちゃんは?」


「私も無理……ごめんね。私のスキルは強力だけど、その分反動も大きくて……スキルの使用後は、私もスキルで強化された人も反動で数日間指一本動かせなくなっちゃうの」


 サリーと決着がついてから、アカリによるスキルの強化が尽き、ヒカルのスキルも解除された事で、現在唯の金属となったゴーレム内の操縦席に身動き出来ずに取り残されている。



「待ってればその内みんなが助けにきてくれるよ。それにしても……アカリのスキル凄かったね。それに比べて僕は……あんな大見得切ったのに、結局今回もアカリに守られっぱなしだったなぁ……」


「そんな事ない! ヒカルは凄かったよ! 私はあくまでもヒカルの背中を押しただけで……サリー様に勝てたのはヒカルの力があったからだよ!」


「でも……結局サリー様を助けられなかった……僕に力がなかったから」


 アカリのフォローを聞いても落ち込む僕に思いもよらない所から声をかけられる。



「ヒカルのせいではない。全てはワシが至らなかったせいじゃ」


「「ッ!? お爺ちゃん!!」」


 それは先程まで魔力切れで意識を失っていた筈のお爺ちゃんだった。


「良かったぁ、目が覚めたんだね。結構無理させちゃったけど……体は大丈夫?」


 その言葉には純粋な心配だけでなく、自分が至らなかったせいで、気を失う程自らの魔力を提供してくれたお爺ちゃんへの罪悪感も込められていた。


 だが、そこは流石ヒカルの祖父であるゴルズだけあり、ヒカルの気持ちを汲んで何とも無いと言った感じで答える。



「あぁ、こんなの鍛治師として修行してた頃は散々なってたからな、まったく心配ない! ……それよりも、二人とも……よくやってくれた。あのサリーに勝てたのじゃな……」


「うん、アカリがスキルにめざめて僕を助けてくれたんだ」


「何と!? ヒカルだけでなくアカリまでもスキルを!? スキルに目覚める者など数千人に一人だと言うのに……二人とも、本当に頑張ってくれたんじゃなぁ」


「えへへ……」


 驚きつつも本当に嬉しそうにするお爺ちゃんの言葉に、素直に喜ぶアカリは顔をニヤけさせている。


 だけだ僕はあまり素直に喜べない……。


 そんな僕の反応に、お爺ちゃんは再び真剣な表情になると話を続けた。



「そして、サリーの事でヒカルが責任を感じる必要はないぞ。元はと言えばワシが昨日の戦いで止められていれば良かった事なんじゃから……今回もせっかくヒカルがこんなに凄い力で助けてくれたのに……ワシに魔力が……もっと力があれば、助けられたかもしれなかったんじゃ……」


「そんな事……」


 お互いに自分が悪いと自らを責める2人。


 するとそんな二人に先程まで照れていたアカリが何かを思い出したようにハッとすると、申し訳なさそうに声をかけてきた。



「……あのぉ……責任を感じ合ってる所悪いんだけど……




 サリー様なら、生きてるよ」


「「えっ!?」」


 見た目は全く違くてもやはり血が繋がった祖父と孫……予想だにしない言葉に驚く表情はそっくりで、思わずアカリは笑ってしまった。


「ふふふ……あっ……ごめんね。えーとね……説明すると、最後の攻撃の後サリー様が気を失った瞬間に私のスキルで私の中に残った力を全部サリー様に移したの。だからトゥライト砲……だっけ? あの攻撃を受けてもギリギリ持ち堪えられた筈だよ」


「「……」」



「えーと……おーい! あれ? ……聞こえた?」


「「……」」


 アカリの説明に固まる二人。

 そんか二人の反応に心配になったアカリが声をかけるが、全く反応が帰ってこないまま少しの時間が流れ、ようやくゴルズの口から声が漏れ出てきた。



「や……」


「や?」



「……やっぱりワシの孫は最高じぁぁぁああ!!」

「凄い!! ……凄いよアカリ!! あの状況でそこまで出来るなんて! もしかして天才なんじゃない!?」


「ちょっ……2人してそんな褒めないでよぉ……照れるでしょ」


 先程までの沈黙が嘘のように捲し立てるようにアカリの思いもよらないファインプレーを喜び褒め称える二人。


 諦めていたサリーが生きていたのだ、無理もない。


 その時ばかりは閉じ込められている事を忘れて3人で心の底から喜びあった。



 しかし、そんな喜びを壊すように、3人に再び悪夢が襲う。



 ゴゴゴゴゴゴ……。


「ちょっ!? 待って! なんか揺れてない!?」


「……確かに揺れているのぉ?」


 突然操縦席が揺れだしたかと思えばそれは徐々に大きくなり、至る所がガラガラと崩れる音が響きだした。


「もしかして……」


「もしかして、なに!? 何か心当たりがあるの!?」


 ヒカルの呟きに食い気味に問いただすアカリ。

 まともに動く事も出来ないこの状況で起きた異変に不安でしょうがないようだ。



「うん……あのね、スキルで作ったゴーレムだから、もしかしたらスキルが解除された事で地面に戻ろうとしてるの……かも?」


 ふと思い浮かんだ考えだが、自然とその予想が正しいと心が告げてくる。


 その証拠に揺れはだんだんと大きくなっている。



「えぇ!? マズいじゃない!? このままじゃ助けが来る前に私たち生き埋めになっちゃうよ!! 何とかならないの!?」


「と言っても……僕たちはもう動けそうにないし……お爺ちゃんは?」


「うむ……」


 ヒカルの言葉に体を動かそうとするお爺ちゃんだが、その動きはとてもゆっくりで小刻みに震えている。


 やはりまだスキルにより失った体力と限界まで魔力を使った影響が大きいようだ。


 それでも何とか腕を動かし僕たちを操縦席から抱え上げると、自分の胸元へ抱き寄せてくれた。



「ハァハァ……どうやら、今はこれが限界のようじゃ」


「そんなぁ……私たち……このまま死んじゃうの? ヒック……せっかくサリー様も助けられたのに……」


 その事実にアカリはお爺ちゃんの腕の中で震えて思わず泣きだしてしまった。


 いつもは勇敢なアカリも、周りの目を気にする必要の無い現状と死を実感した事で昔の泣き虫なアカリに戻ってしまったようだ。


 今度こそ僕がアカリを守る時なのに……こんな時に限ってスキルの後遺症で体はおろか、指一本動かせない。


 どうして僕はこうも肝心な時に役に立たないのだろう……。



「心配するな……例えこのまま生き埋めになろうとも、二人だけはワシが守ってみせるからな」


 僕たちを守ると言ったその思いは、お爺ちゃんが僕たちを抱き締める腕に入った僅かな力身でいやでも伝わってくる。


「お爺ちゃん……」


 結局僕は周りに守られてばかりなんだ……。



 そして最後は守ってくれた人を不幸にしてしまう……。



 やっぱり僕は、みんなにとって……疫病神。


 崩れゆくコクピット内で、死を目前に自らの呪われた運命を感じ、再び絶望が僕を襲う。



 しかし、そんな僕を救い出してくれるヒーローが現れた。



「3人とも大丈夫か!? 助けに来たぞ!!」


 サリー様の一撃で無くなったコクピットの天井の縁に手をかけ、太陽の光を背に一人の男性が僕たちに声をかけてきた。


 その姿は太陽の光でハッキリとは見えないが、その渋い声を僕が間違える筈がない。


「助かった! ワシらみんな魔力切れとスキルの後遺症で動けんのじゃ! 助けてくれ!」


 お爺ちゃんの言葉にコクピット内に飛び降りた事で、その人物の姿がハッキリと認識出来た。


 ボサボサの髪に無精髭がとてもワイルドで、その瞳に鋭い光を宿す……僕がピンチの時に颯爽と現れ助けてくれる、僕の憧れのヒーロー……ジンさんがそこに立っていた。



「俺が来たからもう大丈夫だ。俺の上に乗って……」


 ジンさんはお爺ちゃんの横へ来ると僕たちを預かりお爺ちゃんをその背に背負う。


 そして僕とアカリをその腕に優しく抱きしめてくれた。


 あぁ……憧れのジンさんの腕の中にいるだなんて……何て、幸せ何だろう……。


「少し揺れるからな、しっかり捕まっててくれ」


 ジンさんの声に釣られて上を見上げれば、そこにはジンさんの凛々しいお顔。


 昨日と同じく僕を助けてくれた時に見たそのお顔がそこにある。


 それはあまりにもカッコよくて……ヒーローどころか……まるで、キラキラ光る王子様のように見える。


 そんなジンさんに僕は思わず見惚れて、時が止まったように感じた。


 いや、実際はその逆で止まっていたのは僕の方だったのだけど……。


 気づけば僕たちは既に外に居て、たくさんのドワーフたちが僕たちを囲むように集まり心配して声をかけてくれていたのだ。


 突然の周りの変化に驚き戸惑う僕。


 そこでふと我に戻る。


 いくら憧れのヒーローだからってこんなにもドキドキしたり、顔が熱くなったりするのだろうか……?


 それどころか、抱きしめられて嬉しいと思う自分がいる……。


 ましてや……僕の事を見ていて欲しいって思うのは……まるで……。


「ヒカルたん……大丈夫? ……ッ!? もしかしてどこか怪我したのか!?」


 考え込み周りの言葉に反応しない僕の様子に心配したジンさんは、心配が更に飛躍し、僕が怪我をしたのではないかと勘違いして手のひらに乗せた僕をいろんな角度から真剣な眼差しで見つめて来た。


 心配して確認してくれているのに、僕は自分の体を隅から隅まで確認してくるジンさんの視線にいっきに体が熱くなるのを感じた。



「だ、だ、大丈夫です! どこも怪我してませんから! だから、あんまりジロジロ見ないでください!!」


「ハウァ!?」


 僕の言葉に変な声を出したジンさんは、絶望のドン底のような表情になると、僕たちを近くの人に託してお爺ちゃんを背負ったまま膝から崩れ落ちた。


 そんなジンさんの様子も心配だけど、今の僕はジンさんに見つめられたことで心の奥底から湧き出した抑えきれない恥ずかしさと、自分がどうしてそんな反応をしてしまったのかわからない、混乱した頭で謝る余裕すらなかった。


 だってさっきまでは、あんなにジンさんに僕の事を見て欲しかった筈なんだから……。


 僕のおかしな反応に心配そうにするアカリの声や、その後ろでは何やらお爺ちゃんがジンさんの首を絞めて怒鳴っている声が聞こえるが、全く頭に入ってこない。


 ただ熱いぐらいに火照る頬に手を当て自分に起きた不可解な変化に頭を悩ませる。


 一体僕は、どうしてしまったのだろう……。

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