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ボーンライフ  作者: ユキ
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勝者の一時

 ミュートの念話で元凶であるメルルも倒し、サイクロプスたちの解放も済んだことが知らされた。


 ミュートは転生した事で強さはそれこそそこらのベビードラゴンと変わらない程になってしまったが、その豊富な知識や元々使えた多彩な魔法はそのままだった事もあり、今回単身人族軍に潜入調査して貰っていたのだ。


 本来ならある程度調査が完了したら内部から攻撃を加えて混乱した所を俺たちがトドメをさす予定だった。


 調査の中でサイクロプスたちの存在が判明した事で、万が一ゴンズが奴隷の首輪の解除に失敗した時を考えて、メルルを極限まで追い込みサイクロプスたちの主導権を譲渡させてから倒す作戦に変更したのだ。


 まぁ、全部ミュートの発案なんですけど……。


 発案から実行までやってもらって……今回はレベル上げの為と意気込んでいたのに申し訳ない限りです。


 まぁ、何にしてもうまくいって良かった良かった。



 今回の戦闘で負傷者はいてもこちらの死者はいない。


 対して人族軍は戦闘に参加した全ての兵士が全滅……。


 普通ならあり得ない慘状に、報告を受けたヤマト王国は今後下手にドワーフたちワッフル公国に手を出す事は出来ないだろう。


 サリー様の事は残念だったけど……奴隷の首輪で従わされていたサイクロプスたちも無事解放出来たようだし、完全勝利とは行かなかったが俺たちにとってはほぼ理想的な結果となった。


 トゥライトの二人もドワーフたちに認められ、国の安全も確保された。


 これで俺たちの役目も終わりだな。



 全ての戦闘に方がついた事を確認し、巨骨兵から元の姿に戻った俺は、女性であるルカにいつまでも気絶したままのルナーレを背負わせる訳には行かないので代わりを買って出ると、いわゆるお姫様だっこでドワーフたちの撤退した山の麓へと戻っていく。


 おんぶでも良かったのだが、なにぶんその体制だと背中に当たるものが……ね。


 流石に肩で担ぐのもあれだし、消去法でこうなりました。



「ルナーレだけずるーぃ。私も疲れた〜ぁ、お兄様おんぶ〜ぅ」


 そう言って俺の背後からもたれかかってきたミルカは、そのまま俺に飛び付き首へ腕を回してくる。


 咄嗟にミルカが落ちないように前屈みになる。


 ルナーレと違ってミルカをおんぶしても気にするものがないから別に構わないが、いきなり飛びつくのは勘弁して欲しい。



 ……ミシッ。


 そんな俺の思考を読んだかのように、俺の首に回すミルカの腕の力が増す。


 ……まだまだ成長期な訳出し気にする事は無いと思う。なにより、その慎ましさも魅力だと思うんだ……だから力を緩めてくれないかな……。


 それでも緩む事のないミルカの腕。


 痛みは無いけど首が動かないので勘弁して下さい。


 なんせこの体勢……不味いんです。


 何がって……前屈みになる事で自然と服の上からでも大きく自己主張するルナーレの二つの膨らみが顔の目の前まで近ずき触れそうになるのだ。


 必死に目を逸らそうとするが、ミルカがガッチリ首にしがみついている為動かす事が出来ない。



 ……いや、言い訳はよそう……。


 この体なら視線など意識次第で360度どこでも見れるのだから……。


 でも俺も男だ。

 まるで目にチャームでも掛けられているように、目の前の誘惑から抗えない。



 ジーーーーィ。


 その時横から視線を感じた。


 確認するまでもなく、ルカである。


「こ、これは、決してわざとじゃないんだ! 別に胸を見ようとした訳じゃなくて、ミルカが落ちないようにしたら自然とこうなってしまったと言うか、なんと言うか……ゴニョゴニョ」


 必死に弁解しようとするが、目の前の二つの大きな膨らみがだんだんと俺の顔に近づいてきて上手く頭が回らなくなる。


 10㎝……5㎝……あと3㎝。



「……って! おい!! ルナーレ、お前起きてるだろ!!」


「ふふふ、バレてしまいましたか……もう少しでしたのに……残念です」


 何がもう少しだっのかな!?


 明らかに俺は体を動かしていないのに近付いてくるのは案の定ルナーレがわざとやった事だったようだ。


 マジでルカが見ている前でやめて欲しい。



「では……次はルカが居ない所でしますね」


 いや! 見ていない場所でやって良いって意味じゃないからね!


 イタズラな顔で可愛らしく舌を出すルナーレに心の中でツッコム。


 てか、当たり前のようにみんなして俺の思考を読むな!!


「ふふふ」

「あはは」


 心の中のツッコミにさえ反応するルナーレのミルカ。


 マジで、何でこんなにも思考読まれんの?



 トン……。


 そんな俺の疑問も優しく感じた衝撃で何処かへ飛んで行く。


 動かない首の代わりに視線を向ければ、そこには俺の腰に横から抱き付くルカがいた。


「……」


 しかし、怒っているのかルカは俺に抱き付いたまま黙って顔を埋めている。


「いや、だからわざとじゃ……「私も……抱っこして……欲しいな」……ッ!?」


 黙って抱き付くルカに怒っているんだと思って再び弁解をしようとするが、どうやらそれは勘違いだったようだった。


 ……ルナーレたちを見て羨ましくなっちゃったのか?


 と言うか俺の嫁が可愛いです。


 これは頑張った俺に神がくれたご褒美だろうか?



 ただ、現状この格好ではルカを抱っこするどころか、ミルカですら落ちてしまいそうだ。


「ルナーレ、目覚めたのなら自分で「無理です」……」


 すかさず俺の首に回される腕と、有無を言わさぬルナーレの圧にそれ以上言えなくなるヘタレな俺。


 これは……ご褒美かと思ったらヘタレな俺への試練でした。



 前にはルナーレ、後ろにはミルカが抱き付き、横には抱きつきながらジッと俺を上目目線で見つめるルカ。


 考えろ俺! 今こそ頭をフル回転させる時だ!!



 そうだ! 分体カモンッ!!


 閃いた解決策を実行すべく、近くにいた2体の分体を呼び寄せる。


 そして、やってきた分体とスキルにより融合する事で俺の体は一回り大きくなり、更に2体分の腕が生えてきた。



 これぞ名付けて阿修羅フォーム!


 計6本の腕になった事でルナーレとミルカ、そしてルカを抱き上げる。


 満足気な三人。


 俺は成し遂げた……この試練を乗り越えたぞぉ!!



「心配して来てみれば……何やってんだお前」


 心の中で叫んでいると、黒騎士ことジンが呆れた顔で俺に声をかけてきた。


「いや……あの……これは……」


 試練を乗り越える為全集中していた俺は、咄嗟の言い訳も思い付かない。


「ハァ……イチャコラするのも大概にしてくれ、みんなが待ってるんだから」


 ジンが頭を掻きながら反対の手で背後を指差す。


 ワッフル公国の入り口近く、そこには出陣したドワーフたち以上のドワーフたちが集まりこちらに手を振っていた。


 恐らくワッフル公国の国民の殆どが俺たちを出迎える為その場に集まってくれているのだろう。



「今回の戦いの主役なんだから、とっとと挨拶してこい」


 そうだった……客観的に見てもワッフル公国が勝てたのは俺たちの活躍があったから。


 と言う事は、昨夜のジンのように晒し者になると言う事で……。



「俺も大々的にお前のお陰だと広めてやるからな。いやぁ〜今夜の宴が楽しみだ」


 良い笑顔で先に歩き出すジン。


 コイツ……昨日の事根に持ってやがったな!


「あっ、そうそう……アイツにもお前が今回大活躍で疲れてるだろうから労ってやれって伝えといたから」


 そう言って笑顔で振り返るジン。


 アイツ……?



 まさか!?


「まお〜〜〜さま〜〜〜〜〜ぁ!!!」


 どこからともなく聞こえる俺を呼ぶ野太い声。


 声のする方を見るとそこには土煙を上げてこちらへ駆けてくる人物が見える。


 鍛え抜かれた筋肉隆々の体でアスリート走りするその人物は数十メートルは離れた距離で突然立ち止まる。


「トウッ!!」



 かと思えば、変な掛け声と共に勢いよく飛び上がりこちらへ向かい驚異的なジャンプをした。



 咄嗟に横にズレて躱わすと、それまで俺たちが立っていた地面にそのままの勢いで埋まるソイツ。


 いや、硬い地面に埋まるって! どれだけ勢いつけて抱きつこうとしてるんだよ!


 ズボッ!


「うもぉー、どうして避けるのよぉ!」


「そりゃ避けるだろ! アルスのタックルなんて受けたら普通は粉々になるわ!!」


 地面を突き破り這い出して来た者は、ニューエルフで四天王のアルスだった。



「魔王様なら受け止められるでしょ。私のタックルも……私の愛も」


 うわぁ……上手い事言ったみたいな顔でウインクしないで欲しいです。


 その間にもレスリングのタックルする構えを取りながらジリジリと近づいてくるアルス。



「昨日は看病と言う名で散々な目にあわされたからな……お前も少しは俺の苦しみを味わえ」


 その後ろでは影のある笑顔でそう告げるジン。


 よっぽど酷い目にあったのか、よく見るとその体は震えている。



「戦闘で疲れた身体を愛人である私が癒す……そして二人はあの夕日の彼方へ……あぁん! ジンちゃん何て名案なのかしら! ……魔王様……今私が癒してあげるからねぇ」


 完全にイッてる顔で自らの体を抱きしめ身震いするアルスの姿が俺の恐怖を誘う。



 まだ昼間だから! 


 てかあの野郎……俺を売ったな!



 ……まぁ、昨日ジンを売ったのは俺だけど……。


 それはそれ! これはこれだ!


 どうにかしてその場を切り抜けて……目にもの見せてやる!!



 しかしどう切り抜ける。



 シュタタッ!


 ん?


 再びのピンチにどうすべきか考えていると、急に目の前に人影が2つ現れた。


「お兄様を癒すのは私だよ!」


「いいえ、従者であり一番の愛人である私がご主人様を骨の髄まで癒し尽くします!」


 言わずとも知れたミルカとルナーレである。


 アルスの作戦を聞き、自分たちも名乗りを上げたのだ。


「アナタたちは散々魔王様の近くで楽しんだんだから、ここは私に譲りなさい」


「あら、あなたは昨夜ジンとお楽しみだったのですから、そちらへ行けばいいんじゃないかしら?」


 ビクッ!?


 睨み合うアルスとルナーレ。

 そんな二人の言い合いからの思わぬ飛び火に、昨日の事を思い出したジンの表情が一瞬で恐怖一色に変わる。


「お兄様〜ぁ、ミルカが癒してあげるねぇ」


 ガシッ!!


 そんな二人を無視して俺へ再び抱きつこうとするミルカの両肩は、二人の手により抑えられる。


「「抜け駆けは


許さないわよぉ」

許しませんよぉ」


 そのまま三人による言い争いが始まったので、俺はこれ幸いとソーッと忍足で抜け出す。


 俺に続くように静かに歩き出したジンと合流して向き合った俺たちは頷いた。


 お互いこれ以上足を引っ張り合うのはもうよそうと。


 二人の男の思いが通じ合った瞬間である。


 そんな中ルカはただ1人、俺に抱きしめられたまま幸せそうな表情でいる。


 正妻の余裕か、ただ幸せで周りが見えていないのか……完全に後者だろうね。



「あっ、お兄様たちが逃げてる!」


 そんな事を考えていたらミルカに逃亡がバレた。


 すぐに追いかけてくる3人にすかさずダッシュで逃げ出す俺たち。


 目の前にはそんな俺たちを手を振りながら歓声で迎えるドワーフたち。


 慌ただしいけど平和な日常の一コマ。


 そんな時間にようやく戦争が終わったのだと、安堵と達成感に包まれるのだった。

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