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ボーンライフ  作者: ユキ
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巨骨兵

 中央で特大の魔力砲が上空に向かって発射された。


 先程規模は小さいが同じような魔力砲がヒカルたんたちが乗るゴーレムから発射された事から十中八九ヒカルたんたちのゴーレムが放った一発だろう……。


 あんなものまともに喰らったのなら、いくらサリー様でもチリも残らず消滅するよなぁ……。


 結局サリー様は救えなかったか……。



 たが……これでやっとこの戦争も終わる……。


 そう考えながら見回す戦場には既に生きて立つ人族兵は一人もおらず、何千と言う死体とボコボコになった大地が広がるのみだった。




 時を遡る事数十分。


 あるアイデアが浮かんだ俺は早速その方法をとるべく意識を戦場で戦う千体の分体へと向ける。


 千体と言っても実際は各指揮官に渡した連絡用の分体や、アカリの乗る骸骨龍もいるので実際は千体弱になる。


 ちなみに敵の主力部隊やサイクロプスにやられた分はスキルでチャージ済みだ。



 意識を分体に集中し、考えを共有する事で俺の想像通りに動き出す分体達。


 目指すは近くの分体。


 お互いが近づき手を取り合うと、繋いだ手から何かが溶け出すように集まり融合して行く。


 融合が完了した事でそれまで分体が立っていた地面に残った不要物。


 それは先程まで分体が装備していた武具や服……そして皮や肉と言ったかつては人間の肉体だった肉片たちだ。


 あとは先程何かが融合し合って出来上がったモノが中央に出来上がる。



 それはそれまでより一回り大きくなった……骸骨兵だった。



 至る所で融合し、肉片を残して一回り大きな骸骨兵になる分体たち。


 一度融合して一回り大きくなって終わりではない。


 融合して出来た骸骨兵同士がまた近づき、再び融合し合う。


 それは何度となく繰り返され、その度にどんどん大きくなる骸骨兵。



 何度も繰り返し融合し、最後に出来上がったモノ……。



 それは優に10メートルを超える巨大な骸骨兵だった。


 東西の戦場に一体ずつ、サイクロプスたちを抑える為に一体……計3体の巨大な骸骨兵を作り出した俺。



 出来上がった分体の内一体に近づきその体に触れ、俺自らも巨大な骸骨兵と融合する。


 俺が融合する事で、額に黒いツノが生える巨大骸骨兵。


 融合が完了すると意識が巨大骸骨兵に移り、視界は今までより遥かに高くなり、戦場全体を見渡せる程になった。


 試しに腕を動かしてみるが、普段と変わらず思うように動かす事が出来る。



 どうやら上手く行ったようだな。


 想像通りの結果に満足げに頷くと視界の端で気絶したルナーレを背負った驚いた顔のルカと、目をキラキラさせながらこちらを見上げているミルカの姿が見えた。


「クリス……凄く……大きい」


「すごいすご〜い!! ヒカルくんのゴーレムも大きくてカッコいいけど……お兄様の巨大骸骨兵はもっとカッコいい!!」


 なんだが卑猥な表現に聞こえるルカの発言は意識しないようにしつつも、褒められた事に満更でもない俺は、ルカとミルカの言葉と自分でも想像以上に上手く行った結果に内心テンションが上がり調子に乗った。



「巨大な骸骨兵だから……この骸骨兵達は、巨骨兵【キョコツヘイ】と名付けよう」


 我ながら思い付きで付けたにしてはいい名前じゃないだろうか。


 そんな事をしみじみ考えていたが、俺が調子に乗った結果……ミルカもまた、テンションが爆上がりした。



「巨骨兵……かっこいぃ!!



 私もやりたい!!」


「へ……?」


 俺が言葉の意味を理解出来ず固まっていると、目の前で起きた事象で無理やり理解させられた。



 その言葉通り、戦場に突然現れる俺の巨骨兵と全く同じ姿の巨骨兵たち。



 その数6体。


「ハァハァ……流石に、このサイズの幻術を具現化するのは……疲れるね」


 息切れしながらもいい笑顔で笑うミルカ。



 な、なんて末恐ろしい子なんだ……。


 俺は正直3体の巨骨兵を維持しているのもかなりしんどい状態なのに……そんな俺の全力を疲れた様子があるとは言え、笑顔で超えていくミルカ。


 これでまだまだ子供だと言うのだ……今後の成長を想像すふと、その笑顔に戦慄を覚えずにはいられない。


 と言うか、周りに魔王などと呼ばれ……その上最近トントン拍子で強くなっていく自分に、俺は少し……調子に乗っていたのかもしれない……。



 俺はあくまでもルカの代わりに魔王になったのであって、実力で魔王になったのではないのだから。


 魔王になったからと言って、強くなったつもりになってはいけない。


 今までの人生……いや、骸骨生の中で、世の中俺より強い者なんて山ほどいると嫌でも思い知らされてきたではないか……。



 この戦いでワッフル公国の裏で助力していた魔族として俺たちの存在は少なからずヤマト王国に伝わるだろう。


 そうなれば否応なしに警戒される。


 今はまだ俺が魔王になった事は大々的に発表されていないので、危険な魔族の一人と言う認識にしかならないだろう。


 しかし、この先俺が魔王になったと言う事実が公表されれば、今回の実績と結びつき人族たちはこう思うだろう……。



 一万の人族軍を壊滅させた危険な魔王が誕生し、魔族たちを引き連れまたヤマト王国に攻めてくる……と。



 そうなればどうなる?


 当然、そんな危険な魔王を人族がほっておく訳がなく、例え俺が何もしなくても最優先討伐対象に指定されるだろう。


 そうなれば必ず派遣されるのはあのチート神態勇者だ。



 それだけではない。


 弱肉強食のこの魔族の世界では、魔王の座を狙う者や、己の強さを証明する為に魔王である俺に戦いを挑んでくる強者が現れてもおかしくない。


 いや、必ずいる。



 今の俺にそんな強い魔族や、実力も変態度も次元の違う勇者を倒せるだろうか?


 魔族はともかく、勇者は無理だ。


 もし攻められれば、俺など簡単に殺されてしまうだろう。



 俺が殺された時……果たしてルカはどうする……?



 答えは簡単だ。


 例えルカより強い勇者だとしても……ルカなら必ず、俺の仇を取りに勇者に戦いを挑む……。


 その結果、自分も殺されてしまうとしても……。


 いや……あの神態じゃ、今度こそルカを捉えて今回の人族のように奴隷の首輪で無理やり言う事を聞かせてもおかしくない。


 と言うか、アイツは絶対にやる! だって神態だもの!



 それで良いのか?


 ミルカの横で俺を見守るルカの顔が目に映る。



 いや、良い訳ががない!!


 そんな事は絶対にされてはいけないんだ!!!



 ルカにはもう二度と辛い思いをされたくない。



 いつも笑顔で笑っていて欲しいから。



 なら俺はもっと気を引き締めていかなくちゃ行けない!


 ルカとこれから二人、共に生きてきたいのなら、今よりずっと……挑んでくる者やあの勇者ですら倒せる位、強い男にならなくてはいけない!!



 その為には……。


 再び戦場へと視線を向ける。


 この戦場の……全ての敵を倒して、俺が強くなる糧とする!!



 改めて強くなる決意を固めた事で動き出す俺と周りの巨骨兵たち。


 ミルカの幻術の巨骨兵たちも同じように動き出し、10メートル強はある巨骨兵が合わせて9体、戦場を歩きながら強化された人族兵を踏み潰していく。


 その内の1体をサイクロプスたちへ向かわせるとミルカも2体援護に巨骨兵を向かわせてくれたので、向こうは大丈夫だろう。



 踏み潰される人族兵の中には、先程まで俺の分体を簡単に葬っていたスキル保持者と思われる敵の主力部隊もいた。


 パワータイプのスキル保持兵はその怪力で振り下ろされる巨骨兵の足を受け止めようとするが、巨大化した事で増した重量とパワーにより、大した抵抗も出来ずに潰され絶命する。


 スピードタイプのスキル保持兵はそのスピードで翻弄しつつ巨骨兵の足に攻撃を加えるが、やはりジンの劣化版スキルと言った感じで、スピードが上がったところで対して攻撃力が上がった訳でもなく、サイズが違いすぎる為擦り傷程度の傷をつけるだけに終わる。


 そんな傷など巨骨兵の動きに支障をきたす訳もなく、その上、スキルで周りの骨の形状を変化させてくっ付ければすぐに元通りだ。


 不死身の骸骨兵としての本骨頂によりジリ貧となったスピードアップのスキル保持兵は、最後にはスキルの多様で動けなくなり、こちらも呆気なく潰されて絶命した。



 最早これは戦争ではない……。


 巨骨兵による一方的な蹂躙だ。



 更に中央で繰り広げられるもっと巨大な巨人とゴーレムの戦いもあり、この戦場は人と魔族の戦争と言うよりも怪獣大決戦のように様変わりしていた。


 そんな中央の戦いも動きがあり、遂に雌雄を決っしようとしている。



 明らかに勝敗のついた戦い。


 だが、敵の総大将であるメルルは諦めていないようで、操られている兵士達は最後まで巨骨兵に群がり抵抗し続ける。


 向かってくる兵士たちは操られているせいで皆瞳に正気が感じられず、まるで生者に群がる地獄の亡者のような光景だった。


 実際は死んでいるのはこっちなんだが。



 しかし、敵とはいえ、同情を禁じ得ない……。


 殺されるとわかっているのに、操られ……自分の意思とは関係なしに攻撃を続ける人族兵たちにやるせない気持ちが込み上げてくるが、先程の覚悟がそんな気持ちを押し殺し、容赦なく踏み殺していく。



 ……お前たちの力は俺が強くなる為、一片残さず俺が貰い受ける。


 その代わり……お前たちを操っている者には、必ず報いを受けさせてやるからな。


 心の中で踏み潰していく兵士たちに呟きながら、最後の一兵まで残さず殺し尽くす。


 そして、ヒカルたんのゴーレムが巨大な魔力砲でサリー様に勝利した頃、戦場に立つ人族兵は一人もいなくなり、沢山の人族兵の屍と巨骨兵が9体、そして巨骨兵によって拘束されたサイクロプスたちが倒れるのみとなったのだった。

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