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ボーンライフ  作者: ユキ
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アカリとヒカルと……

 目の前には巨大な体でゆっくりこちらに向かってくるサリー様。


 トゥライトロボの頭部を破壊された事で、その光景が目の前に広がり、よりその大きさが際立って見える。



 後ろの操縦席に座るシルバーは魔力を最後の一滴まで出し切り既に意識はない。


 僕も殆ど魔力は残っていないけど、圧倒されそうな今の状況でも、気力だけで意識を保ち目の前のサリー様と対峙している。



 だけど……それも時期に終わる。


 サリー様がここまでくれば抵抗の出来ない今の僕たちは簡単に殺されてしまうだろう。


 この力は大切な人を守る為の力だなんて言っておきながらこの有様だ……。



 付き合ってくれたシルバー……いや、お爺ちゃんには悪い事をしたなぁ……。



 本当はサリー様を助けてあげたかったけど、あの体の状態を見るに、時期に動けなくなり、死んでしまうだろう……。



 サリー様は助けてあげられないけど……これで国のみんなに被害が及ぶ事はない。


 それだけが唯一の救いだ。



 こんな僕でも、少しはみんなの役に立てたんだ……。



 これで憧れだったヒーローに少しは近づく事が出来たかなぁ……。



 魔力不足でボヤけた視線の先。


 そこには昨日僕たちを助けてくれた時に見上げて見た、ジンさんの顔が浮かんで見えた。



 とうとう幻覚が見える程になってきたらしい



 でも……



 ジンさん……カッコよかったなぁ……。



 幻覚とはいえ、最後にジンさんを見れて良かったぁ……。



 欲を言えば、もっとお話したかったけど……もうそれは叶わない。



 僕はここで死んでしまうのだから……。



 次に浮かんだのは既に亡くなり今は天国にいるお父さんと、写真でしか見た事がないお母さんの姿だった。


 二人は仲良く並び、僕の事をジッと見ている。



 あぁ、僕もすぐにそっちに行くからね。



 そしたら、お父さんも……そして、お母さんも……僕を褒めてくれるかな……。



 僕の思いに応えるように、二人はニコリと微笑んでくれだが、次の瞬間にはその姿を薄れさせていった。



 思わず待ってと叫んだけど、それは叶わず……二人の姿が完全に消え去ったその後には、代わりに両手を腰に当て怒った表情の双子の姉……アカリの姿があった。



 いつも優しく、時には強引に僕を引っ張ってくれたアカリ……。


 どんな時でも笑顔で僕を守ってくれた。


 だけど、たまにこうして怒った表情をする時は、決まって僕の為に怒ってくれている時だった。


 今も死を覚悟して、一人いなくなる僕に怒っているのだろう……。



 その時、ふとある疑問が頭をよぎる。


 僕がこのまま死んだとして……一人残されたアカリは、どうするのだろう……。



 アカリは周りに対して自分を強く見せているが……僕は知っている。


 本当は凄く繊細で打たれ弱い……か弱い女の子なんだと。



 お父さんが死んでしまった時、僕よりもショックを受けていたのは本当はアカリの方だった。


 それでもあんなに強くいられたのは、お父さんからいつも頼りない僕を守るように言われていたからだ。


 そして、その言葉を言い訳に、弟である僕を守る事で自分の弱い心を偽っていた。



 今更ながら理解した。


 幼かった僕は、そんなアカリの事をわかっていたからこそ、自ら弱い自分をそのままにし守られる道を選んだんだ。


 アカリの心を守るために……。



 だけど、そのままではいけない。


 弱いままではアカリはいつまでも僕に依存し……僕もまたアカリに依存してしまって前に進む事が出来なくなってしまう。


 そんな状態で、もしどちらかが死んでしまったら……きっと、もう一方も同じく、後を追うように死を選ぶのだろう……。



 だからこそ僕は、弱い自分を変え、守られるだけの存在から、守る側に立とうとしたんだ。


 お互いが支え合って、頼り頼られる対等な立場に立ってこそ……この先お互い別の道を歩む事になったとしても、しっかり前を向いてそれぞれの道を歩いていけると思ったから……。



 だけど……今の僕は、それが出来たの?



 このまま僕が死んだとして……アカリは一人生きていけるの?



 きっと無理だ。



 僕は変わろうとした……。



 でも、まだちゃんと結果を出せてないし……なによりアカリはまだ、そんな僕を受け入れられていない。



 僕は……



 僕はまだ、死ねない!!



 アカリの為にも死ぬわけにはいかない!!



 アカリに笑って生きてもらう為にも……。



 僕はまだ、アカリを一人残して死んじゃいけないんだ!!



 僕の考えが変わった事で、目の前のアカリの幻覚は怒った顔からニッコリといつもの優しい笑顔に変わった。



 幻覚ではなく、本物のその笑顔を再び見る為、僕は必死にこの状況を打開する方法を探す。


 現状トゥライトロボの両手は破壊され、今まさに両足もサリー様に踏みつけられ破壊された事で、最早動かせる部分はトゥライト砲のみ……。


 でもトゥライト砲を打つにもエネルギーとなる魔力はもうない。



 どうすれば……。



 どうすればいいの……お姉ちゃん。



 ……ル…………。


 その時、どこからか聞き慣れた声が聞こえた気がした。


 とうとう幻覚だけでなく、幻聴まで聞こえるようになってしまったようだ。



「…カル………ッ!。」


 いや! 幻聴じゃない! ……あの声は!



「ヒカルーーーッ!!!」


 空から聞こえる慣れ親しんだ声。


 僕が上空を見上げると、そこには骸骨龍に乗り、必死の表情で僕の名前を呼びながら僕たちに向け急降下してくる本物のアカリの姿があった。


 そんなアカリの呼び掛けに答えようと口を開いた次の瞬間、あろう事かアカリは直前で骸骨龍の背からジャンプすると、僕に向け飛び降りた。


 ビックリしながらも必死に受け止めようと両手を伸ばす。


 幸い小さな体のお陰で飛び降りても大したダメージにならずに受け止められたけど、いつもの事ながらこのあと先考えない行動は勘弁して欲しい。


 思えばお爺ちゃんの為にアイドルをやろうと言ってきた時もそうだ。


 僕の話など聞く耳持たずに強引に僕を巻き込んで……「ヒカル! 大丈夫!? お姉ちゃんが来たからもう大丈夫だからね!!」


 アカリは両頬を両手で挟むと怪我がないか一通り見回しながら早口で聞き、最後にはギュッと抱き締めて言った。


 その言葉に、先程までの不満はどこかに飛んでいき、思考が停止すると共に、いつの間にか安心している自分が居る事に気付く。



 生まれた時からそこに居て、いつも僕を励まし守ってくれたアカリの声と温もりに、自然と張り詰めた精神が解けさせられたようだった。


 そして体の内から湧き出してくる力。


 アカリが側に居るだけで、先程まで瞼を開けるのも億劫な程怠かった体にこんなにも力が湧いてくるのだから、改めてアカリが僕の中でどれだけ大きな存在なのかがわかる。


 本当にこんなんで僕は守る側に立てるのだろうか……。


 アカリの存在に安心しながらも不安を覚えると言う矛盾に悩んでいると、ふとある事に気付く。



 ……あれ? 気持ちの問題にしては、異常に力が湧いてくるな?



 と言うか、さっきまで殆どのなかった魔力が完全に回復してるよね!?


「これは一体……」


 体から溢れ出す魔力に戸惑っていると、抱きしめていたアカリがガバッと僕を離す。


「話はあと!! まずは目の前のサリー様だよ!!」


 見れば、目の前には今まさに僕たちに向け拳を振りかぶりトドメを刺そうとしているサリー様の姿があった。


 その光景に、既に頭で理解するよりも早く、いつものアカリの一喝に体が勝手に反応し、トゥライト砲のチャージを始めていた。


 自分のスキルで作ったゴーレムだから別にボタンを押さなくてもトゥライト砲は使えるのだ。



 そこで更に自分の体の異変に気付く。


 先程はトゥライト砲のチャージにゴッソリ魔力持って行かれた筈なのに、何故か今回は大量に魔力を持って行かれた筈が全然減っている気配がないのだ。



 それどころか……どんどん増えている?


 その時チャージ完了を知らせるランプが灯ると同時にサリー様の拳が振り下ろされたので、そんな疑問は吹き飛び、すぐさまトゥライト砲を発射した。



 ぶつかり合うサリー様の拳とトゥライト砲。


 先程はサリー様ごと呑み込み黒焦げにした攻撃なのに、今はむしろサリー様の拳に押されてだんだんと拳がこちらに向かってきている。



「クッ!? 100%の出力で押し負けるなんて……」


 その光景に思わず焦り、漏れ出る呟き。


 すると、操縦桿を握る僕の手に、ソッと柔らかな手が乗せられた。


「大丈夫……お姉ちゃんがいるから」


 アカリの言葉に答えるように、僕の体から更に溢れんばかりの魔力が吹き出す。


 それはあまりにも膨大な魔力で、見えない筈の魔力がまるで水色に光っているように見える。



「これは……」


「私の新しい力……スキル『みんなのアイドル』だよ』


「アカリの……スキル?」


「そう……その効果は、ファンの応援を力に変える能力。そして……それを他者に渡す事も出来る……今ヒカルの中に溢れる魔力は、私たちを応援してくれているファンの人たちの想いから生まれた力なんだよ」


 そう言ってアカリが指差した先には、撤退したワッフル公国のみんなが必死に僕たちを応援してくれているのが目に映った。


「僕たちのファンの……想いの力……」


 体の中からとめどなく溢れる魔力、その魔力が途端に暖かなものに感じ、溢れる力以上に力が湧いてくる。


「それなら……ファンの為にも僕たちは勝たないとね!」


「うん!」


 僕の言葉にニッコリ微笑むアカリ。


 そんなアカリの為に新たに操縦席を作ると、アカリをそこへ座らせる。



「僕たちは二人で一つのアイドル、トゥライト……ワッフル公国のアイドル国宝トゥライト!! みんなを守る為……お姉ちゃんッ! 力を貸してッ!」


 アカリに声をかけると共に操縦桿に魔力を流し込む。


「お姉ちゃんに……任せなさい!!!」


 アカリも力強く返事をすると共に、同じように操縦桿に魔力を流し込み始めた。


 二人の込める魔力に呼応するように、発射されるトゥライト砲がだんだんと太くなっていく。


「120%……150%……200%ッ!?……230……」


 限界を超える魔力量にトゥライトロボの至る所から魔力が暴発し、小さな爆発を起こす。


 しかし無理をしてでも出力を上げたお陰で先程まで押されていたサリー様の拳は、次第にトゥライト砲の威力と均衡し、逆に押し返し始めた。


「250……頑張って……トゥライトロボ……275%!」


 ここまでくると既に押し合いはこちらの方が優勢になり、拳どころかサリー様の体全体を押し、地面を抉りながらだんだんと後ろに後退させていった。


「285……290%! ……サリー様……ごめんね……僕たちは……みんなを守るよ!! エネルギー充填率300%!!!」


 その瞬間、何とか抵抗していたサリー様は完全にトゥライト砲に負け、全身をトゥライト砲に呑み込まれていった。


 その際、僕の呟きが聞こえたのか、ニッコリと微笑みありがとうと呟いた。

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