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ボーンライフ  作者: ユキ
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晴れときどきドワーフ

「みんなぁ〜〜!!! 今日は……ありがと〜〜ぅ!!!」


「……あり……がと」


 最後の曲も終わり、ステージ上で観客に感謝の言葉を投げかけるトゥライトの二人。


 その言葉に答えるように、会場中から……いや、国中から歓声と、感謝の言葉が溢れ返った。



 会場に設置された大型画面には今回の作戦が大成功した証である、トゥライトの文字の横に表示された支持率99.9%の文字。


 俺たちは……トゥライトは、目標を大きく上回るどころかほぼ完全勝利と言うべき数字を叩き出して見せたのだ。


 ここまで行くと逆に残りの0.1%が気になる所だが、よっぽど頑固なドワーフか、何か理由がありライブを見れなかったドワーフがいたのだろう。


 何はともあれ、本当に素晴らしいライブだった……あとでアカリたんとヒカルたんにサイン貰おう。



 すっかりトゥライトファンになった俺がそう決意を固めていると、観客席の方が何やらざわめきだした。


 すると前方の観客が左右に割れ、その道を筋肉国宝と髭国宝が歩いて出て来たではないか。


 バックダンサーとしてトゥライトの後ろに控えていたクロッソたちが警戒して前に出るが、トゥライトの二人が心配ないと声をかけて後ろに下がらせる。


 流石にあれだけライブを楽しんでいた国宝二人が今更トゥライトに危害を加える事はないだろう。


 そう考えた俺もスキルでステージを形作っていた骸骨を元に戻して行くと共に、トゥライトたちの乗っている台座を変形させ、国宝二人の元へと移動させた。



「先程のステージ……素晴らしかったわ。恥ずかしながらわたくしも周りに開花されてついはしゃいでしまいました」


「年甲斐にもなく全く恥ずかしい奴だ……と、言いたい所だが……本当に素晴らしいステージだった。国民たちも皆我らと同じ意見のようだし、やり方はアレだが、それでも君たち二人が我らより支持された事には変わりない」


 国宝二人の言葉に照れながらも笑顔になるトゥライトの二人。


「ゴンズの孫のアカリとヒカルだったな……君たちは国民に選ばれた。……君たちこそ、ロード オブザ ビューティフル……この国の初代ビューティフルキングだ」


 筋肉国宝の言葉に国中で割れんばかりの歓声が響き渡る。


 その歓声に泣き出すアカリたん。


 そんなアカリたんを支えるヒカルたんも、その目から涙が溢れている。



 するとそんな二人に更に近づいた髭国宝がとんでもないことを言い出した。


「アナタたちは髭も筋肉も……そして鍛治師として命であるハンマーすら握れない不吉の象徴と呼ばれる容姿ですが……それでも今、この場の誰よりも一番、美しい。……そんな美しいアナタたちに、私の髭国宝の座を是非引き継いでもらいたいわ」


「なっ!? それはズルイぞカロッソ! 透き通るような声の中に力強く響き渡るその歌声、この二人には筋肉国宝こそ相応しいではないか!!」


「何を言っているのですか? ステージを舞う流れるようなあの姿はまさに髭のそれ! 髭国宝こそトゥライトのお二人には相応しいでしょう!」


 互いに互いの国宝の称号を譲りたがる二人。


 普通は称号を取られるのは悔しい事だろうに……よっぽどトゥライトのライブに感動したのだろう。



「ぐぬぬ……!? そうだ! 二人いるのだからそれぞれ好きな方をお二人に選んでもらえばいいじゃないか」


「筋肉国宝にしては良い提案ですね。トゥライトのお二人、どちらが至高の美しさ、髭国宝をお継になられますか?」


「筋肉の極地、筋肉国宝は良いぞー、毎日筋トレし放題だ」


 トゥライトが二人いる事に気付いた筋肉国宝の提案に同意した髭国宝は筋肉国宝と共にトゥライトの二人へ詰め寄り互いに自らの国宝の素晴らしさを力説する。


 アンタら全く意見が合わない水と油のような性格じゃなかったか? 完全に息ぴったりじゃないか……。


 共通の趣味は関係性すら変えるんだな……でも。



「私たちは髭国宝にも筋肉国宝にもなりません!」


「「なっ!?」」


 アカリたんの言葉に驚き後退りする国宝二人。


 双子の想いを聞いていた俺たちは当然だろうとばかりに頷く。


「誰もが羨む筋肉国宝の座を断るなんて……」


「髭国宝になれるなら全財産投げ出す者すらいるのにどうして……。


 真っ当な疑問だね。


「私たちが名乗る国宝は既に決まっています」


 アカリたんの言葉に一瞬何を言っているのかわからない表情をした国宝二人だが、すぐに驚きの表情に変わる。


「名乗る国宝……まさかゴンズの鍛治師国宝か!? しかし……鍛治師国宝は三つの国宝の中で唯一、美しさではなく鍛治師としての腕が一番優れた者が名乗れる称号……流石にこの大会に優勝したからと言って、名乗れる称号では……」


「……アイドル……国宝」


「「アイドル国宝?」」


 ヒカルたんの呟きに今度はキョトンとした表情になる二人。


 先程から全く同じ反応で表情がコロコロ変わって見ていて面白い。



「私たちはアイドルです。ですから筋肉国宝でも髭国宝でも、ましてや鍛治師国宝と言うその道のプロが名乗る称号ではなく、新たな称号……アイドル国宝を名乗りたいと思っています」


「「「……」」」


 アカリたんの言葉に国宝たちだけでなく、周りで話を聞いていた観客たちも黙り込む。


 そんな周りの様子に少し不安げな表情になるトゥライトの二人。


 俺も不安になってきた。


 やはり新たな称号を作るのは難しいのだろうか……。



「す……」


 その時それまで唖然とした表情で固まっていた筋肉国宝が俯き、すの一言だけ発するとそのまま固まった。


「……す?」


「……すっ……ばらしいいぃぃぃいい!!! アタッ!?」


 その大きな体のように会場中に響き渡る大声に、思わずトゥライトの二人は耳を両手で塞ぎながら後退りする。


 俺たちより小さい分、筋肉国宝の大声は何倍にも大きく聞こえるのだろう。


 それに気付いた髭国宝がすかさず筋肉国宝の頭をドつく。


「単細胞がうるさくてごめんなさいね。しかし……筋肉国宝の言う通り、アイドル国宝とは本当に素晴らしいアイデアですわね!!」


 筋肉国宝を咎めながらも、結局最後は自分も大声になる髭国宝。


 それだけトゥライトの提案は二人にハマったと言う事かな? 


 周りの観客も筋肉国宝の大声で我に返った後、それぞれ言い方は違えど賛成の言葉を言ってくれている。


 そんな中、髭国宝の興奮は収まる気配がない。


「トゥライトの溢れ出す美しさは髭国宝でも、ましてや筋肉国宝でも収まりきらない程の輝きを持っていますわ! そんなトゥライトが名乗る新しい称号にアイドル国宝といつ新たな称号を名乗るのは、これからのワッフル公国を導く者としてこれほどピッタリな称号はないですわね!」


 何故だろう……この早口はどこか見覚えが……。


「もう、ねーちゃん、そのぐらいにしろよ!」


 ……()()()()()!?


 突然髭国宝であるカロッソをねーちゃん呼びした人物……。


 それはクロッソだった。


「あら、やっぱりトゥライトの後ろで踊ってたのはクロちゃんだったのね。可愛らしいお髭だったから直ぐにわかったわ」


「ちょっ!? 人前なんだがらクロちゃんは辞めろ!」


「あら……クロちゃんこそねーちゃんだなんてはしたない呼び方せずに、お家で呼ぶようにお姉様って呼んで頂戴」


 ……うん、この会話は完全に姉妹だね。


 良く考えれば名前もそっくりだし、髭の色も同じ赤色だね。



「親父もいい加減落ち着け」


「ウス」


 クロッソに続き筋肉国宝であるローソを親父と呼んだのはこれまたビックリ、クロッソの部下のソルだった。

 また後ろでロートも声をかけたことから、ロートもまた筋肉国宝の息子のようだ。


 そして始まる痴話喧嘩という名の家族の会話。


 人の家族の会話って、聞かれる方も恥ずかしいけど、聞く側も恥ずかしいんだね……。



 そんな事を考えていると、ふと頭の片隅に何か引っかかる物があった。


 家族……何か大事な事を忘れているような気がするな。


「……リー……。ヒ…………ゥ」


 その時どこかで聞いた事のある声が会場の外で叫んでいるのが聞こえてきた。


「…カリー……。ヒカ………ゥ」


 その声は段々と近づいて来る。


 そしてその人物が叫びながら会場に登場した事である事を思い出した。


「アカリーーィ!!! ヒカルーーーゥ!!!」


「「お爺ちゃん」」


 そうだった、ゴンズさんの事すっかり忘れてた。



 会場に駆け込んで来たゴンズは、そのままアカリたんとヒカルたんを見つけると文字通り目の前の観客を吹き飛ばしながら双子の元へと駆けてきた。


 ニューエルフの里でも似たような光景を見たが、普通人が空から降ってくる光景なんてそうそう見ないよなぁ……。


 流石アルスが四天王に推薦するだけあって凄まじいパワーだ。


 ……あっ、降ってきたドワーフたちが運の悪いことにジンの頭上に降り注いでいく……。


 普段なら避けられただろうに、流石に全力のダンスで疲れ果てて今にも倒れそうだったジンには避ける事が出来ずに「グエッ」とカエルが潰されたような声を上げて白目を剥いて気絶した。



 そんなジンを眺めていると目の前まで来たゴンズの大声で現実に引き戻された。



「アカリ!!! ヒカル!!! 探したぞ!!! 三日間もどこに行ってたんだ!?」


 そう質問するゴンズの姿は三日前に会った時のままの服装だが、どこもかしこもボロボロで、生傷だらけ、目の下には大きなクマまで出来ている。


「わ、私たちは……ライブの準備を……ゴニョゴニョ……そ、そんな事より! お爺ちゃんこそ大丈夫? すごい格好だよ」


「大……丈夫?」


 心の底から心配しての発言だろうが、かなり誤魔化した感ありありの質問だった。


 しかしそんな事にも気付かない程精神的に疲労しているようで、誤魔化した事など気にせず双子の指摘で今気付いたように、自らの格好を見て気まずそうにするゴンズ。


 自分の状態すら忘れる程心配して双子を探し回ってたんだなぁ……ホント、忘れててごめんなさい。


 でも、どんだけ孫ラブお爺ちゃんだよ。こりゃ国中探し回ってたんじゃないか?



「あぁ……これは、この三日間お前たちを国中探し回ったがどこにも見つける事が出来なくて……もしかしたら人族軍が攫ったのかと思ってちょっと突撃してきたから時にちょっとのぉ……」


 想像を超える孫ラブお爺ちゃんだったぁ!!


 単騎で一万の人族軍に突撃って……しかも見た感じ生傷はあっても大きな怪我はなさそうだし……実力者だとは聞いていたが、それにしてもおかしくないか?


 これは逃した魚は大きかったって奴だったかなぁ……まぁ、トゥライトのライブを特等席で鑑賞出来たし後悔はしてないが。



「もう……いつも無理しちゃダメって言ってるでしょ!」


「……メッ」


 双子の孫に怒られションボリするお爺ちゃん。


「すまんすまん……しかしお前たちこそ二人だけで家を出たらいかんとあれ程言い聞かせていたじゃないか。……心配したんじゃぞ」


「うっ……ごめんなさい」


「……なさい」


 今度は逆にお爺ちゃんに悲しそうな顔をされて申し訳なさそうに謝る双子。


 うん、仲のいい孫とお爺ちゃんと言った感じで見ていてホッコリするな。



「でも……お陰で私たちやったよ! この国の人たちに認められて……アイドル国宝になったの!!」


「アイドル……国宝? アイドルと言えば、お前たちの母さんが集めてた勇者の世界の話に出てくるあのアイドルか?」


「……そう」


「それはまた……そうか……お前たちが国宝に……しかもあの子が昔から夢見たアイドルで……そうか……」


「うん……うん……」


 双子の言葉に涙ぐむゴンズと、そんなゴンズの言葉を聞き同じく涙ぐむ双子。


 話を聞く限り、双子が国宝として国の人たちに認められた事だけでなく、アイドルは双子の母親……ゴンズの亡くなった娘が夢見た職業のようだった。


 そりゃ親としてもお爺ちゃんとしてもダブルで嬉しくて泣いてしまうよな……思わず俺ももらい泣きしそうだ。

 骸骨だから泣かないけど。


「これでもう、お爺ちゃんはこの国の人たちの為に人族軍に引き渡される事はないよ! 私たちがそんな事絶対させないから!」


「……ビューティフルキングの……名にかけて」


「お前たち……まさかその為に……うぅ……アカリィィ!! ヒカルゥゥ!!」


 二人の思いを聞き、遂にその場に崩れ落ち泣き出すゴンズ。


 そんなゴンズを慰めようと、台座を降りてゴンズの元へ向かう双子。


 良い家族だなぁ……。


 周りのみんながその光景を見て、感動で涙を浮かべていたその時……それは突然起こった。




 双子の地面から突如として巨大な手が飛び出したかと思うと、双子はその手に捕えられてしまったのだ。

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