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ボーンライフ  作者: ユキ
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トゥライトフェスティバル

 煙が晴れ姿を表した骨で出来た第三の巨大なステージ。


 そのステージの中央には、一メートル程の高さの台座の上に更にもう一つ、第三のステージと全く同じデザインの縮小サイズの骨のステージが設置されていた。



「……カロッソ、これは一体どう言う事だ? 神聖なボディビル大会においてこんなふざけた真似が許されるとでも思っているのか?」


 低く怒りの籠った声で髭国宝へ問い詰める筋肉国宝。


 これはこの国の代表を決める大会。


 そんな大事な大会で自分の預かり知らぬ事が起きれば、勝つために相手がやった事だと疑うのも当然だろう。



「わたくしが知る訳ないでしょ。……アナタのとこの頭まで筋肉で出来たような部下の誰かがやったんじゃなくて?」


 だがしかし、そんな事は知らない髭国宝もまた、同じように相手の仕業と疑う。


「ああ!? テメェの方こそ、外見しか磨かねぇから脳みそのちっちゃい、部下の誰かやったんじゃねえのか?」


「何ですってぇ!?」


「何だぁ!?」


 その結果、唖然とする周りを他所に言い争いを始める国宝たち。


 話通り本当に仲が悪いんだな。


 まぁいい……邪魔の入らない今のうちに、始めようか。



 俺が合図を送ると、会場中に響き渡る爆音でリズミカルな音楽がなり始め、リズムに合わせてステージに設置された色鮮やかなスポットライトが点滅したり照らし出す場所を縦横無尽に変える事で会場を盛り上げる。


 そして音楽が歌唱部分に入ると同時に、小さなステージに設置されたセリから、バックライトを当てられシルエット姿のアカリとヒカルのトゥライトの二人がゆっくりとステージ上に迫り上がったきた。


 そんな小さなトゥライトの姿を、いつものライブでは観客にも見えるようにバックスクリーンに映し出しているのだが、今回は違う。


 トゥライトの登場と共にミルカの幻術により本人たちと全く同じ姿のトゥライトが大きなステージに登場した。


 しかも俺たちの倍程ある大きさでた。


 その幻術のトゥライトは本物トゥライトと全く同じ動きをし、まるで本人たちが大きくなりそこで踊り歌っているように見せている。


 しかも、元のトゥライトたちは小さなままなので重力の影響も小さく、トゥライト最大の魅力である妖精が舞い踊るようなフワッとした幻想的なダンスはそのままにだ。



 そこへ幕下から顔を隠し骨で作られた衣装を着た数人のダンサーが登場し、幻術のトゥライトの振り付けに合わせてバックダンサーとして踊りステージを華やかにする。


 更に仕掛けはまだ終わらない。


 会場に潜ませていたトゥライトのファンクラブのメンバーたちが、トゥライトの歌に合わせてこれでもかと言う程の激しい踊りと掛け声、通称オタ芸でライブを盛り上げていく。



 それら全ての演出が、アイドルと言うこの世界ではマイナーな分野でライブを見た事のない人々が殆どのこの国の人々にはとても大きなインパクトとして映り、スピーカーから爆音で流れるノリのいい曲は観客の体の芯から脳へと問答無用で直接響く事で、先程まで言い争っていた国宝の二人も思わずケンカをやめてステージに魅入っていた。



 完全にトゥライトのライブ会場と化したその場。


 そうなればもう、こっちのものだ。


 元々わずか二年の間に隠れながらしか活動出来ない中で、マイナスイメージのドワーフたちの意識を変え、人口の六分の一にあたる五百人近いドワーフたちを自分達のファンにしてきたトゥライトの二人だ。


 その実力も……そして見る者を魅了させるアイドルとしての才能も抜群である。


 最初はあまりのインパクトに思考停止していた観客たちも、その魅力に魅了され、周りで踊るトゥライトファンたちに感化され次第に一人、二人と音楽に合わせてリズムを取りだした。


 もちろんこの映像は国中に放送されている。


 しかも、それまで放送されていたボディビル大会とビアード アンド ムスタッシュ大会はテレビ画面に映し出されていただけの平面の映像でしかなかったが、トゥライトのライブは、始まると同時にミルカの幻術によりトゥライトの二人が画面から飛び出し、リアルな3Dの姿として目の前に……時には道のど真ん中に……そして上空に大きく出現したのだ。


 今回は実態はないが、いつぞやの人族の王都でミルカがやってみせたゾンビフェスティバルと一緒だ。


 言うなれば今回はトゥライトフェスティバルだな。



 今この瞬間……このドワーフの国、ワッフル公国は、国中をトゥライト一色に染められた。


 その光景を分体の骸骨兵から得た視覚で確認しているが、その圧倒的な迫力とリアルなトゥライトの魅力に魅了され、国のあちこちでこの会場と同じく音楽に合わせてノリだす国民が出始めている。



 そこまで確認してから意識を会場に戻し、会場に設置された大型画面に目をやる。


 そこには計画通り新たに増えたトゥライトの名前と得票数、そして支持率が表示されていた。


 これは機械に詳しいクロッソが細工してくれた物だ。


 今頃国民の端末にも同じようにトゥライトの名前が表示され、投票出来るようになっている筈だ。


 ライブを行うトゥライトやバックダンサー、徐々にだが、確実に笑顔が増えていく観客達。


 それに合わせて画面のトゥライトの得票数と支持率が徐々にだが、確実に増えていく。


 その結果を見て、計画通りことが上手く行っている事に思わずほくそ笑みそうになる。

 骸骨だから表情はないけど。



 今回の作戦は単純だ。


 俺たちはただ、トゥライトのアイドルとしての実力を信じてそれを最大限活かせる場と環境を作っただけ。


 その為に利用した今回の大会がこのタイミングで開かれたのは、ジンの言った通り運命なのかもしれない。



 そして作戦の肝となったのは三人。


 幻術を操りトゥライトの姿を全国民に披露するミルカ。


 気付かれないように運営の機械を弄り、トゥライトの名前を表示されるようにしたクロッソ。


 そして最後の一人は、このステージやルナーレ達の衣装を骨で作ったこの俺だ。


 流石に国中にトゥライトの幻術を作り出しているだけでも相当負担の多いミルカに、これだけの規模のステージを幻術で作るのは難しいし、いくら機械に詳しいクロッソでも、こんな規模のステージをバレずに隠れて作るのは無理だ。


 そこで俺のスキルにより密かに潜ませていた骸骨兵を使いこのステージを()()()()作り出したのだ。



 この力はルカとのキスでスキルが進化した事によって新たに得た能力だ。


 その能力は簡単に言ってしまえば、骨の形状を自分の意思で自由に変える事が出来る力。


 自由と言ってももちろん限界はあるが、それでも骨さえあればこのように巨大なステージを作る事も、ルナーレ達が着ている骨の衣装のように細かな細工も施せる。


 そんな俺は現在自ら作ったステージの中央の上部に設置された骸骨のモニュメントの一部に融合している。


 ライトの操作や、ギミックの起動などを行う為と言う理由もあるが、流石に作りだした物がこれだけ巨大だと常に魔力を供給していないと維持し続けるのが難しいからだ。



 そうしてみんなの協力により実現する事が出来たゲリラライブは想像以上に順調に進んで行った。


 ライブも中盤に差し掛かる頃には殆どの観客が曲に合わせてノリノリで踊るか、ウットリとした目でステージ上のトゥライトの二人を見ている。


 しかしそんな中でもただ佇み続ける者が二人。


 筋肉国宝と髭国宝の二人だ。


 しかし、国宝たちは既に動揺から覚めているのだが、心配したライブの邪魔をするでもなく、腕を組んで佇んでいるだけだった。



 ……いや、よく見ると指や足が曲に合わせて少しだがリズムをとっている。


 どうやらトゥライトのライブは国宝たちをも虜にしつつあるようだ。


 ……恐るべきトゥライトの求心力。


 このまま行けばファンを倍にするどころか、三倍でも四倍でも……下手をしたらワッフル公国の国民全員がトゥライトのファンになってもおかしくないのではないだろうか……。



 そんなトゥライトの二人であるアカリとヒカルも、最初は緊張していたようだったが、観客達の変化を見て今ではライブ自体を楽しんでいるようにすら見える。


 凄いな……これが国民的アイドルって奴なのかもしれない。


 俺は今、そんな国民的アイドルになり得る実力を持った二人がプロとして誕生した瞬間をこの特等席で目の当たりにしている事になる。


 そう思うとなんとも言えないゾワゾワとした感情が体の内側から全身に広がっていく。


 これは……感動しているのだろうか……。


 歴史的瞬間共言えるこの瞬間に……


 そして目の前で披露される二人の素晴らしいライブに……。



 いかんいかん、今はこのステージの維持に集中しなくては。


 しかし……ルナーレとアルスも凄いな。



 二人は実はバックダンサーとして顔を隠して出演しているのだが、その動きはプロ顔負けで、トゥライトのライブをより盛り上げる役割を担っている。


 ゲリラライブを計画するにあたり俺とミルカ以外の仲間達にはライブをより華やかにしてもらう為、バックダンサーをやってもらう事になったのだが……バックダンサーなどした事もなかった筈の二人だが、少し練習しただけで瞬く間にトゥライトの振り付けをマスターし、完璧に踊れるようになっていた。


 更にルナーレの場合は社交ダンスの経験があるお陰か、顔を隠してもその美しい金色の髪を靡かせながら踊る様は気品すら感じさせる程でつい見入ってしまう。


 アルスもその有り余る身体能力で、安定感がありながらパワフルなダンスを披露しており、上半身が露出したその衣装により、ダンスによる筋肉の動きは見る物を楽しませ、ダンスと言うなの演武を披露しているようだった。



 他のバックダンサーとして、ジンとクロッソ、ソル、ロートの四人も踊っているのだが、彼女らはお世辞にもダンスが上手いとは言えない。


 しかし、彼らが踊るそのダンスはいわゆるオタ芸の独特な激しい要素が多分に含まれていて、有り余るトゥライトへの熱い思いが込められたそのダンスは会場で同じようにオタ芸を披露するトゥライトファンたちと共鳴し、会場中に妙な熱い一体感を作り出していた。



 ミルカのリアルな幻術


 ルナーレたちのプロ顔負けのダンスにジンたちの想いの籠ったダンス。


 そして何よりもトゥライトのアイドルとして放つ……圧倒的なカリスマ性。


 それらが全てが合わさったからこそ……この結果を導く事が出来たのだろう……。


 トゥライトの曲に合わせて一体となり盛り上がる全ての観客たち。


 それはここだけではない。


 ワッフル公国中のドワーフたちが皆、同じように盛り上がり、トゥライトの虜になっているのだ。


 そして先程まで難しい顔をしていた国宝たちもまた、他の観客と共に飛び跳ねながらライブを楽しんでいる。


 そうしてライブは終盤へと入り、国中がトゥライトのライブを楽しむファン一色になったその時……。


 大画面に映り出されたトゥライトの得票数は三千を超え、支持率は99.9%と言う、とんでもない数字を叩き出したのだった。

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