表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボーンライフ  作者: ユキ
67/196

双子の捜索

「探すったって俺たちはその双子の顔も知らないのに、どうやって探すって言うんだよ」


 ゴルズの家を出た俺たちの後を追いかけてきたジンが、殴られた頭をさすりながらそう言ってきた。


「それなら私は会った事あるからわかるわ」


 そう答えるのはアルス。


 さすがゴルズと夜の営みに誘われるだけあって、それなりにゴルズ家とは親しいようだ。


 あれ? よく聞くファンタジーのエルフとドワーフって仲悪いんじゃなかったっけ?


 ……いや、アルスはエルフじゃなくてニューエルフだったな。


 脳筋の考え方はエルフじゃなくドワーフ寄りだし、見た目と言うかその肉体美がドワーフたちの好みみたいだし、それで意気投合したのかもしれない。


 仲が良いのはこれからの魔王軍運営的に良い事だが……なにぶんその絵面がなぁ……。


 古いイメージのオカマの悪い部分を濃縮したようなニューエルフと、見た目オッサンしかいないドワーフの濃厚なラブシーンとか誰得だよ!



「ねぇねぇ、アカリとヒカルってどんな姿なの?」


 俺がまた余計な事を考えていると、先程から気になっていた事をミルカがアルスに質問した為、意識をそちらへ向ける。


「それは会ってからのお・た・の・し・み・よ」


 口の前で指を立て、一文字毎に指を左右で揺らし最後にはウィンクのオマケ付きと言う、目を逸らしたくなるその行為に思わず悪寒が走る。


 ミルカも質問した事を後悔しているのだろう。

 苦虫を噛み締めたような顔をするとそれ以上質問する事は無かった。



「と、とりあえず街の人たちに聞いてみましょうか」


 気分を変える為に話を変えるルナーレの姿が、先程のアルスとの落差で一瞬天使に見えた。




 そうして人通りの多い場所へと向かった俺たちは手分けしてすれ違う人たちにゴルズの孫たちの行方を知らないか聞いて回った。


 その結果双子の行方をわからなかったが、違う事は理解出来た。


 それはゴルズの言う通り、双子がこの国で相当悪い印象を持たれていると言う事だ。


 双子の行方を聞いて嫌な顔をされるて無視されるのはまだ良い方で、酷い人だと悪態を吐いたり、中には勝手に死んだと決めつけ喜ぶ者までいた程だ。



「……辛い思いを……してきたんですね」


 ひと通り聞き込みをしたあと集まった俺たちの中で、泣きそうな表情で呟くルナーレ。


 他の面々も皆同じように辛そうな表情をしている。


「……うぅ……何て可哀想なんだぁぁああ」


 その中で一人号泣しているのは、先程まで気怠げに聞き込みをしていたジンだ。


 わかるよ……歳を取った分いろんな経験してるから、感情移入しやすくなるんだよね。


「絶対に……ぜっったいに! 見つけて……俺らの街に連れて行ってあげるがらだぁぁぁああ」


 わかったからいい加減泣きやめ。


 ミルカもゴミを見る目で見ないであげて。



「あっ、でも、何人かのドワーフは双子の話してもそんな悪い反応してなかったよね」


 その時ミルカが思い出したようにそんな事を言った。


 言われてみれば……双子の話をしたら怒りや軽蔑の表情ではなく……一瞬どこか表情が緩んだドワーフたちがいたな。


 結局その後は皆同じで、何か思い出したように慌てて無視を決め込みそそくさと立ち去るのだが……アレは何だったんだろう……?



「それはきっと百際にも満たない若いドワーフたちね。私が聞いた子たちも若い子たちはみんなそんな反応だったわ」


「えっ? 若いドワーフなんていたか?」


 ジンの疑問に激しく同意する。


 何故ならこの国に来てから見かけたドワーフは、全て髭の生やしたずんぐりムックリのオジさんだけだからだ。


「何言ってるの、沢山いるじゃない。……ほらあの子なんてまだ十歳位の子供よ」


「「「……えっ?」」」


 そう言って指差した先にいるのは、普通のドワーフより一回り小さいが、髭をしっかり生やした顔はオッサンのドワーフだった。


「あの……子? 方? は本当に子供なんですか?」


 ルナーレが困惑しながらもアルスに確認しているが、俺たちはそれに激しく頷いた。


「そうよ? あんなに可愛らしいんだから当然じゃない。……あら、あっちのお姉さんは髭も艶やかでとても美人ね」


 そう言ってアルスの見つめる先には、確かに他のドワーフより艶やかな髭を生やした、オッサン顔のドワーフ。


「「「……」」」


 どうやらこの世界のドワーフたちは皆、男も女も、子供も全員……中年オッサンみたいな顔をしているようだった。


「えっ? と言う事は……俺たちが探してる十六歳の双子ってのは……」


 ジンの言葉で思わず想像する双子の姿。


 ドワーフたちの誇りである、髭や筋肉がない見た目オッサンのドワーフ……それってただのチビガリの髭のないオッサンじゃん!!


 会ったら失礼の無いようにと思っていたが……一気に不安になった瞬間だった。




「右を見てもオッサン……左を見てもオッサン……私たちが探しているのもオッサン……そんなオッサンを探すオッサン」


「ミルカちゃん……誰がオッサンかなぁ?」


「そんなのジンに決まってるじゃん。他に私たちの中にオッサンはいないもん」


「ぐはぁッ!?」


 あれから何の手掛かりも得られない中、聞き込みを続ける俺たち……ただ流石に何も手掛かりの得られないこの状況に飽きたのであろう、ミルカがジンをイジって遊び始めた。


 地味に俺はミルカの中でオッサンじゃないと言う事実に喜ぶ俺。


 そんな俺を恨めしそうな目で見てくる胸を押さえてうずくまるオッサ……じゃなく、ジン。


 そんな優越感に浸っていた時、とうとう変化が訪れる。



「オイ! お前らか? ここらで迷惑な聞き込みをしてるって連中は?」


 声をかけてきたのは、普通のドワーフより一回り小さいが威圧的なドワーフだった。


 先程のアルスの話通りなら、その身長からまだ十歳位の子供だろうが、この言葉遣い……なかなか思春期拗らせてるなぁ。


 またその後ろには、ずんぐりムックリのドワーフにしては珍しく身長が普通の人間位はある太ったドワーフも居る。


 この場合、年齢はどうなんだ?



「なんだ君は? 今お兄さんたちは大事な子たちを探してる所だから、邪魔だから親御さんの所に行ってなさい」


 急に絡んできた子供ドワーフをあしらうようにシッシと手を振り話すジン。


「テメェ……俺は二百超えた大人だ!? 舐めてるのか!!」


 怒り出しジンの胸ぐ……じゃなく身長的にズボンを持ち上げる子供改め小さな大人ドワーフ。


 地味に大事な所にズボンが食い込んで痛そうだ。


 ……いや、ジン。お前は悪く無いと思う。

 あんなのわからんって。



 すると、アルスがしょうがないわねぇと呟き前に出ると、小さなドワーフを宥めてくれた。


「ごめんなさいね、このおじさん見る目が無くて。こんなカッコいいお兄さんなのにね。私たちはただゴルズの孫の双子のアカリちゃんとヒカリちゃんがいなくなっちゃったから探しているだけなの」


 アルスの肉体美はドワーフたちには魅力的らしく、先程までの聞き込みでも双子の話をしても一人だけ罵声を浴びる事なく、むしろ協力的な者が殆どだった。


 きっとこの小さなドワーフも……。



「あ、あぁ……そうか」


 ……おや? 今までのドワーフなら欲望の眼差しでアルスの筋肉を見ていたのに、アルスが前に出て話しかけた瞬間どこか苦虫を噛み締めたような表情になり、一歩後ろに下がりながらよそよそしく返事をする小さなドワーフ。


 その姿はまるで俺たちがアルスを見た時の反応のような……。



「とにかく事情はわかったが、こんな大通りであの子らの話をされたらみんなの迷惑だ。話は聞いてやるからついて来い」


 あの子ら……どうやらこの小さなドワーフは何か知っているようだな。


 大通りでこの国で忌み嫌われている双子の話をしていれば、誘拐されたにしろ出かけたにしろ、もしかしたら本人もしくは関係者がコンタクトを取ってくるかもと考えていたが……どうやら上手くいったようだ。


 そう考えながらも太ったドワーフを従え先を歩く小さなドワーフについて行く。


 大通りから路地裏へ……そして路地裏でも人通りが少ない方へとどんどん進んでいく小さなドワーフ。


 やっと立ち止まった場所は、周りを高い建物で囲まれ前方が袋小路になった何も無い場所で、周りに人の気配がまったくなかった。


 よっぽど人に聞かれたく無い話か……もしくは、悪巧みを考えているのか……。


 後者だとしても、こちらの戦力なら警戒する事でもないので、ドッシリと構え相手の出方を伺う。



「それで……アンタらはあの子らのお爺さんの関係者みたいだが……あの子らを見つけてどうするつもりだ?」


「どうすると言っても……ゴルズさんが心配してるから探してるだけで、無事ならあとは本人達次第だか?」


 もしゴルズのはやとちりで、ただ本人の意思で出かけただけなら無理やり連れて帰るのも違うしな。



「そうか……無理やり連れて変えるつもりはないんだな……それならこれ以上騒がれても迷惑だから協力してやらなくもない……」


「やはり、双子の居場所を知っているんだな?」


「……あぁ、あの子らは今ある目的の為、とある場所にいる」


「ある目的?」


「来ればわかるさ」


 そう言っておもむろに横の壁に手を当てる小さなドワーフ。


 すると手を当てた壁が凹み、その横の壁に切れ込みが入ったかと思うとスゥーと開き、人が一人通れる通路が現れた。



「こっちだ」


 小さなドワーフに促されるまま通路へ入る。


 中は小さな明かりが等間隔に設置された薄暗い通路で、そのまましばらく歩くと前方に出口と思われる明かりが見えた。


 そして辿り着いたその場所。


 そこは体育館程の広い室内で、天井に吊るされたライトや前方に設置されたスピーカーらしき設備からライブ会場らしき場所だとわかった。


 そしてその会場には埋め尽くす程の沢山のドワーフたちがいる。


 背の低いドワーフたちのお陰で満員の会場でも身長の高い俺には全体を見回す事が出来、目的の双子の姿らしい人物がいないか探す。


 だが、それらしい人物は見つからなかったが、この会場の不自然な所に気付いた。


 ライブ会場にある筈のステージがないのだ。


 前方にはステージの代わりにドワーフと同じくらいの高さの台が一台置かれているだけだった。



「ここは……」


 思わず呟いた俺の言葉を打ち消すように突然激しい音楽が鳴り響き、台の上に煙が勢い良く吹き出した。


『みんなぁぁ、お待たせぇぇぇ』


「「「うぉぉぉおおぉぉぉ」」」


 スピーカーから聞こえた可愛らしい声に反応するように雄叫びを上げるドワーフたち。


 突然の事に驚く俺たちを他所に、台の上の煙が晴れると、そこには某有名玩具メーカーの着せ替え人形のような、オレンジの髪と水色の髪の可愛らしい人形がニ体、それぞれこれまた髪の色とマッチしたヒラヒラのアイドルみたいな可愛らしい洋服を着てポーズを取って立っていた。


 何故か天井のスポットライトが二体の人形を照らし出す。


 巨大なバックスクリーンにはその二体の人形がアップで映し出されていた。



 これはまさか……。


 その予想通り、先程までポーズを取っていた人形と思っていた二人が突然流れる音楽に合わせて踊り出す。


 よく見ると手にはマイクが握られており、口元へと持っていき音楽に合わせて歌い出す。


「〜〜〜〜」


 その歌声はとても透き通った綺麗な声で、二人の奏でるハーモニーが何とも言えない心地よさをもたらし、そのキレキレのダンスも合わさり見る者全てに熱い高揚感を抱かせる。



「すごぉ〜ぃ……妖精の歌姫みた〜ぃ」


 隣で胸の前で手を組みキラキラした目でステージを見つめるミルカから思わずそんな感想が漏れる。


 本当にその通りだ。


 と言うか、あの姿……きっと彼女たちは本物の妖精なのだろう。


 まさか見た目オッサンしかいないこのドワーフの国で、こんなにも可愛らしく、素晴らしい歌声の妖精に出会えるとは……。


 そんな感動を抱いていたが、ふと目的の人物たちがいない事を思い出す。


「……ん? でも肝心の双子はどこだ?」


 俺の呟きに横にいた小さなドワーフが呆れた顔をする。


「……お前たちは姿も知らないで探していたのか?」


 はい……お恥ずかしい話、その通りでございます。


 恥ずかしさで黙った俺たちに、この後衝撃の事実が告げられた。



「全く……あのステージで歌っているのが、ゴルズの孫でお前たちの探している、アカリとヒカルの二人だよ」




「「「……ッ!? ええぇぇぇぇ!?」」」


 アルス以外のみんなで声を揃えて驚く。


 どうやらみんなも双子はチビガリのオッサンの姿だと思っていたようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ