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ボーンライフ  作者: ユキ
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解決しないといけない問題

 ここは高層マンションが立ち並ぶ街の中。


 ……そう、まだボーンシティに居ます。



 前回の話の流れからドワーフの国に行っているのかと思われたかもしれないが、俺はまだそこへ行く訳には行かない。


 何故なら解決しなくてはいけない二つのある問題が残っているからだ。


 一つ目は今向かっている場所にいるとある人物だ。



 そこは高層マンション立ち並ぶこの街でも一際高い高層マンションの上層階……魔王軍でも幹部の為に用意されたエリアだ。


 目的の人物に会う為、その人物が暮らす部屋の目の前まで辿り着いたのだが、そこにはある筈の物がない。


 ポッカリと空いた穴。


 荒らされた室内。


 外から室内が見える事からわかる通り、玄関の扉が破壊され無くなっているのだ。



 室内に入ると戸棚は開かれ靴や物が飛び出し散乱している。


 まるで泥棒にでも入られたようだ。


 そのまま廊下を進むと、今にも外れそうな扉は開かれ、その先には広いリビングと、キッチンがある。


 そこは前世でも勝ち組が住んでいるような部屋で、大きく見晴らしの良い窓があり、夜には美しい夜景が見える最高の部屋だが……部屋は荒らされ、自慢の大きな窓は割れ、外から冷たく強い風が吹き込んでいる。



「……手遅れだったか」


 その部屋を見て思わずそう呟いたが、よく見るとこの部屋の持ち主の姿が見えない。


 連れ去られた可能性もあるが……。


 そう考えながらもおもむろに割れた窓から眼下の街並みを見ると、高層ビルの上を誰かが飛び移りながら移動しているのが見えた。


 身体倍加を目に集中させてその人物を良く見ると、後ろ姿でも見分けがつくその特徴的な見た目から、それは探している人物を追っているであろう人物たちだとわかった。



  *****



「ハァハァ……クソ! 何で俺の場所がわかったんだアイツら!」


 そう愚痴りながらも俺は必死に路地裏を走る。


「ジンちゃん、まってぇ〜」


 その後ろをその巨大をものともせず、かなりの速さで走るオカマが迫る。


 このオカマ……クリスの話だとニューエルフだったか……? 奴らは執拗に俺を見つけては追って来た。


 別に倒す事は簡単だ。


 俺のすぐ後ろまで迫るニューエルフの目の前から突然消えると、次の瞬間追って来ていたニューエルフが倒れ、その後ろに立っていた。


 防御力は化け物じみているが、それでも以前のバーサーカ化した時に比べて防御力も攻撃力も劣るので、今の俺ならスキルを使えばそれ程苦労する事なく倒す事が出来るのだ。



 しかし、奴らの恐ろしい所はそれだけではない。


 実に恐ろしいのはその驚異的な回復力だ。


 いくら倒して倒しても、すぐに回復しては、どんな場所でも……それこそビルさえ飛び越え執拗に追ってくる。


 このニューエルフも数分もせずに起き出し、また俺を追ってくるだろう。


 しかし、下手に拘束した所で拘束をぶち壊してしまうし……。


 とりあえずニューエルフが起き出す前にその場を急ぎ離れる。


 だが、追っては一人ではない。



「ジンちゃ〜〜ん!!」


 近くで俺を探すニューエルフの声がする。


 何故だが奴らの里の時と違い、今回はどこに隠れようとすぐに俺の居場所を見つけて追ってくる。


 どんなトリックか知らないけど、そのせいでまともに休む事も出来ずに逃げ続ける事となり、このままではいずれ体力が尽きてスキルも使えなくなり、奴らに捕まってしまうだろう。



「うん〜ん……ハァハァ、近くからジンちゃんの匂いがするわ」


 その声は目の前の曲がり角の先から聞こえた。


 俺の匂いって何だよ!! アイツら俺の匂いで居場所を突き止めていたのか!?


 その間にも曲がり角の先から伸びた人影がだんだんとこちらへ向かってくるのが見える。


 カツン……カツン……カツン。


 路地裏に反響して響く、ハイヒールの歩く音。


 森では素足だったが、ジンに会う為にわざわざオシャレをしてきたようだ。



「ああ〜、匂うわ匂うわ! この先ね!」


 クッ……このままじゃジリ貧だ! 何とかしなくちゃ!


 そして角の壁にニュッと大きな手がかけられる。


 とりあえず今はコイツを倒すし……か?


 ドスーーン!


 俺が身構えスキルを発動しようとすると、目の前から姿を現したニューエルフはそのままゆっくりと地面に倒れ伏した。


 一体誰が?


 俺の疑問に答えるようにその人物は姿を現す。


 倒れたニューエルフの代わりに姿を現したのは、頭に黒いツノが生えた二メートルを超える見慣れた骸骨姿の、俺の友であり、魔王様の姿だった。



  *****



 俺が解決しなくては行けない問題、その一つがジンを何とか説得してドワーフの国へ連れて行く事だ。


 と言うのも、アルスの話ではドワーフの国で今ある問題が起きていて、もしかしたらジンを四天王にする為の実績を作る事が出来るかも知らないからだ。



「ハァハァ、助かったよクリス。でも奴ら俺の匂いで居場所をつきとめているみたいで……またすぐに復活して俺を追ってくるんだ」


 悲壮感に満ちた表情でいつもの死んだ魚の目に死人みたいな顔が加わったジン。


「それなら大丈夫だ」


 そう言うと、俺の後ろから現れた骸骨兵二体が地面に倒れたニューエルフを起こし拘束する。


「俺の分体に拘束させるから、逃げる事は出来ないだろう」


 その言葉を聞いた途端、パァーっと明るい表情へと変わるジン。


「ヤバい……今ならルカレット様や、お前に惚れてる女性達の気持ちがわかるわ」


 そんな気持ち悪い事を言われても嬉しくありません。


「バカな事言ってないで、行くぞ」


「行くって……どこにだ?」


 怪訝な表情で聞いてくるジン。


「ドワーフの国だ」


「はぁ? いきなりドワーフの国とか、何言ってるんだ!? 行く訳ないだろ」


 そりゃそうだよね……でも。


「ほぉ……本当に良いのか?」


「な、何だよ……そんな思わせぶりな態度で言ったって行かないものは行かないからな! 俺はやっと戻ってきた安泰の地であるこの街で安全に暮らすんだ!」


 よっぱどニューエルフの里での事がトラウマになっているようで、まるで駄々っ子のように拒否する。


「それなら別に構わないが……これから向かうドワーフの国では今いざこざが起きているらしくてな……戦力が必要になるかもしれないから、必要になった時に向こうでスキルを発動すると思うんだが……その場こちらの分体は普通の骸骨兵に戻る事になるが……果して、普通の骸骨兵にコイツらを拘束する事が出来ると思うか?」


 嘘である。


 いや、ドワーフの国でいざこざが起きているのは本当だが、新たにスキルを発動しても、総数が百体以内なら俺の自由に以前のスキル発動で得た骸骨兵をそのまま残す事も出来るのだ。


 しかし、そんな事を知らないジンには、ニューエルフ達を拘束していた俺の分体が普通の骸骨兵となる事で、ニューエルフ達が拘束から解き放たれ、自分を捕まえるまで永遠に追いかけ続ける姿が容易に想像出来た事だろう……。


 そうなると選択肢は一つしかない。


「行かせて頂きます魔王様!!!」


 こうしてジンのドワーフの国への同行がアッサリ決まったのだった。



  *****



 そして問題がもう一つ……。


 俺は見慣れた家の扉をノックする


「……ルカ……居るかな」


「……」


 家の中にいるであろう人物に声をかけるが、中から反応はない。


「……入るよ」


 意を決して部屋へと入ると、この家の主人であるルカが天蓋付きのベットの上で体育座りをした状態で頭から毛布をかぶって俯いていた。


 どうやら今回は逃げないでくれたようだ。


 最近知った事だが、吸血女王に進化したルカは、それまでの魔力が見える特殊な目だけでなく、魔力を匂いで嗅ぎ分ける特殊な鼻をも得たようで、以前気まずくなった時はそれで俺の存在を察知して逃げていたそうだ。


 つまりはあの時クマのぬいぐるみの中に隠れていたのはバレバレだったと言う事で……それを聞いた時は酔った勢いとは言え、穴があったら入りたい程恥ずかしかったです。



 話がそれたが、今のルカは再び俺から逃げていてもおかしくない精神状態である。


 と言うのも、ニューエルフでスッポンポン鍋のせいとは言え、俺に迫ってくるは、取り押さえたアルスを黒焦げにするわと大暴れをしたうえ、仕舞いには自分から俺にキスをしたのだ。


 お酒のように記憶を無くしていたらまだ良かったのだが……残念な事に、スッポンポン鍋は本能を暴走させる程の精力増強効果はあっても、記憶を消す効果はない。


 ニューエルフたちのように最初から本能で生きているような人種なら問題ないだろうが……ルカのように繊細な女性には、あの時の自分の行動は、とても受け入れられるものではないだろう。


 と言う事で現在進行形で落ち込んでこうやって引きこもっているのだが……なんだが日を増すごとに悪化している気がする……。


 これがドワーフの国に行く前に俺が解決しなくてはいけないもう一つの問題だ。


 こんな状態のルカをそのままにしては行けないからなぁ……。



「ルカ……調子はどうかな?」


「…の…………………」


 ん? 何か呟いているが小さくて聞こえない。

 少し耳をそばだてて聞いてみる。


「…の………ト……が」


 ダメだこれでも聞こえない。


 俺の存在に今だに気付かないので、ルカが何を呟いているのか気になり静かにルカの横まで近づく。


 しかしそれでも俺の存在に気付かないルカ。


 相変わらず念仏のようにブツブツと何かを呟き続けている。


 心ここに在らずと言った感じだな……。


 俺はそんかルカへ顔を近づけ、耳に身体倍加を集中させて聴力を強化してルカの呟きを聞く。


「……私のファーストキスが」


 おぅ……。


 ただひたすらに私のファーストキスが、と繰り返すルカ。


 俺はてっきり自分の行動を恥ずかしがって引きこもっているのかと思っていたが……どうやらそうではなく、ファーストキスをあんな状態で終わってしまった事を後悔しているらしい。


 男の俺からしても、ファーストキスが酔った勢いみたいな状況でした事に少し思う所があるのに……女性であるルカからしたらその比ではないだろう。


 しかも恋愛知識小学生レベルのルカにとって、自分の中での愛情表現の最上級であるキスの……しかも、ファーストキスともなれば相当特別なものだろう。


 これはどうすれば良いんだ……。


 恋愛経験皆無の俺は解決策も思い付かず、一人悩むのだった。

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