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ボーンライフ  作者: ユキ
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友達

 マッサージが終わったあと、部屋にはやり切って満足した俺と、あまりの気持ち良さにそのまま眠りについてしまったルカレット様がいた。


 マッサージ中は夢中だったので忘れていたが、マッサージが終わり冷静になった事で、先程まで自分が自らの意思で体を動かし、マッサージをしていた事を思い出した。


 遂に体を自由に動かせたぞ! ……でも待てよ、さっきは夢中だったし、もしかしたら勘違いって事もあるかもしれない。喜ぶ前にもう一度確認をしてみよう。


 先程の感覚を思い出しながら、改めて右手に意識を集中して動かそうとしてみる。


 ……グーゥ、……パーァ


 よし!動いたぞ! でも少し動きが鈍いな。


 グー、パー、


 グッ、パッ、グッ、パッ


 グッ! パッ! グッ! パッ!


 最初は動かしづらかったが、だんだんとコツを掴みスムーズに動かせるようになってきた。


 そのまま意識を左手へと、左手も思うように動くようになったら次は腕、そして足へと体の先から徐々に中心へと時間をかけ、スムーズに動くよう何度もチャレンジしながら動かして行く。


 そして遂には全身全て、細部まで自由に動かせるようになった。


「よし、よし……よし!!」


 そこまできてやっと自由を取り戻した事を実感した俺は、あまりの嬉しさにその場でガッツポーズをとった。



「やっぱり……、キミ、普通の骸骨兵じゃないな」



 その時横から突然話しかけられ、驚きながらそちら見る

 そこには先程まで眠りについていた筈のルカレット様が起き上がり、こちらを見ていた。


「普通、今みたいに命令にない行動を骸骨兵はしないものだ。さっきのマッサージだって、命令した術者のイメージ以上の動きは出来ない筈なのに、途中からは私も想像もつかない凄いテクニックだった。……とても……気持ち良かったけど……。」


 最初は怪訝そうな表情で言葉遣いを元の堅い感じに戻して威厳を保とうとしていたが、見た目が可愛い部屋着な上に最後は少し俯き、赤くなりながら喋るルカレット様はとても可愛いかったです。


 ……じゃなかった! こおいう時はどうすれば良いのだろうか。


 説明して良いものなのかもわからないし、そもそも喋る事が出来ないのだから、どお説明すれば良いのだろうか。


 ……いや、本当にこの体は喋れないのか?


 目も無いのに見える。何ならクマのぬいぐるみを着て目隠しされているような今の状況でもだ。


 鼻も無いのに匂いを嗅ぐ事が出来て、耳も無いのに聞く事が出来、皮膚もないのに触った感触まである。


 それならば……喉が無くても喋る事が、出来るのでは?



「聞いているのか? それとも……誤魔化しているのかい?」


 また俺の悪い癖が出てしまった。俺が思考の海に潜っていた間、体の方は命令がないので先程から動かずソファに座ったままだ。


 その為反応がない事に痺れを切らしたルカレット様が更に話しかけてきた。



「もし、キミが普通の骸骨兵じゃなくて、何か特別な……例えば、意思のある骸骨兵だったとして……」


 まさかの図星である。


 これ、俺に意思があるってバレたらヤバいんじゃないか? 周りに内緒にしている素のルカレット様を知ってしまった訳だし……最悪は……殺される!?


 いきなり確信をつかれて内心焦る俺。


 そんな俺を他所に話を続けるルカレット様。



「もし……もし、そうだったとして……ここでの事……誰かに言うつもりじゃない……よね?」


 後半になるにつれ、言葉遣いが素に戻ると共にどんどん不安な表情になり泣き出しそうになるルカレット様。


 その姿を見て俺は気付く


 俺はバカだ。

 ルカレット様は普段の高圧的な態度で勘違いしてしまうが、本当は自分の事より周りを優先してしまう、優しく、心の綺麗な方なんだ。


 そんな方が秘密をバラされない為に誰かを殺す事を真っ先に思い浮かぶ訳がないじゃないか!


 自分の愚かさに怒りを覚えたが、今はルカレット様の恐怖を早く取り除いてやる事が先決だ!


「この部屋でのルカレット様の事は絶対に口外致しません!! ルカレット様の友として。ルカレット様に頂いたクリス十六世の名にかけて誓います!」


 これ以上ルカレット様の悲しい表情をさせたくなかった俺は、それまでの心配も気にせずそう返答した。


 返答してからぼんやりと、やはりこの体は喋る事が出来るんだなと思いながらルカレット様の様子を見る。


 俺の言葉で一瞬目を見開きビックリした表情になったが、すぐに安心した表情になるルカレット様。


 その表情を見れただけでも喋ったかいがありました!


「そう、それなら良かった……。なら、キミが一体何者なのか……と、友達の……私に、教えてくれる?」


 少し照れながら質問するルカレット様。


 質問に答えた時点で既に俺が普通じゃない事はバレている。そしてルカレット様が俺の事を知りたいと聞いてくれている。これはもう話すしか選択肢はない!


 俺はこれまでの事をルカレット様に話し出すのだった。



  ******



「そう……骸骨兵に意思がある事もだけど、生前の記憶が無くても知識があるなんて、今まで何千、何万と骸骨兵を使徒してきたけど見た事も、聞いた事もないわ。本人から聞かされなければとても信じられない事ね」


 どうやら俺のような存在は今まで確認された事がないようだ。なら、俺は一体何なのか……。


「……でもこうして実際に目の前のキミは意思があり、生前の、それも違う世界の知識を持っている……、驚くべき事だけど、これはもう信じるしかないわね」


 自分の存在は謎ではあるが、今はルカレット様が俺の話を信じてくれた事を喜ぶべきかな。


「キミの事は分かったわ。それで、これからの事だけど……、キミさえ良ければこのまま私の側近として働かない? このままここを離れても、その見た目じゃ人の集まる場所には行けないし、一人で生きて行くにはこの世界は魔物も沢山いて危険だと思うの。それにこの世界で私ほど骸骨兵を使徒してきた人はいないから、誰よりも骸骨兵については詳しいと思うんだ。だから、きっとこれからキミの事を知る上で役に立つと思うの。あとは……ほら! お互いの秘密を知ってる者同士、近くにいた方が安心だし! ……何より……私たちお友達、だから……そばに居てくれたら嬉しいし……。」


 最後は顔を真っ赤にしながら小さい声で話すルカレット様。


 この反応を見るに、魔王軍幹部と言う肩書きもあるし、きっと今まで友達が出来た事なかったんだろうな……心を許せる相手はこのクマのぬいぐるみぐらいだったみたいだし……でもそんな所がやっぱり可愛い。


 ……じゃなかった。気を取り直してルカレット様の提案を自分なりに考えてみる。


 ルカレット様の言う通り、この見た目じゃ人の集まる場所じゃ怖がられてまともに暮らす事は出来ないだろう。てか、あの戦った兵士のような強さを持つ者が他にも沢山いるようなら、きっとすぐに討伐されてしまう。


 一人で生きて行く……いやいや、化け物や魔物が普通にいる世界で生きていける自身なんてないから。


 ルカレット様の戦闘が良い例だ。何したか知らないけどルカレット様達の立ってる場所以外の半径数十メートルは地面がえぐれてたからね。


 魔族ミサイルかなんかなんですか、このヤロー。


 さすがに魔王軍四天王だし、あのレベルはゴロゴロいる訳じゃないだろうけど、魔族ロケットランチャーレベルなら沢山いても可笑しくない。


 それならこんな見た目骸骨なだけの弱小魔物なんてイチコロだ。


 ルカレット様の知識についてはとてもありがたい。これから自分について知る上でこれほど心強い方はいないと思う。


 秘密の共有については特に気にする必要はないと思う。

 俺がルカレット様の素を言いふらした所で、普段のルカレット様を知る人がそんな話を信じる訳ないし。

 俺の話も、短い間しか知らないとはいえ、ルカレット様がわざわざ相手をおとしめるような事をするとは思えないんだよな。


 仮に誰かに話すのだとしたら、きっと俺の為を思っての行動だと思うから、その時はルカレット様におまかせしようと思う。


 と言う事で、俺のとる選択はルカレット様の提案と言うか好意を有り難く受け取る事だ。


 そもそも、俺はルカレット様達に召喚され使徒される骸骨兵だ。本来なら自分の意思でどこかに行く権利もないし、こんな提案をしてもらう立場ではない。


 それをこのような形で俺に選択肢をくれているのは、ひとえにルカレット様が俺を使徒する道具ではなく、友達と思ってくれているからだ。


 なら尚の事、その誠意に応える為にも、俺の答えられる言葉は一つだけだ!


「もちろん! これからは側近としても、お友達としても、よろしくお願い致します!」


「……うん!よろしくね!!」


 俺の返事に満遍の笑みで答えるルカレット様。この笑顔をこれから絶対に守ると誓う俺であった。

 あっ、その前に大事な事をお願いせねば!


「側近として働く上で2つだけお願いがあるのですがよろしいでしょうか?」


「うん、もちろん。私に出来る事なら何でも言って!」


「では失礼ながら……、出来れば、定期的な休息と、美味しい食事を食べさせて下さい!」


「ふふ、わかったわ」


 例え疲れない体だとしても、もうブラック労働はこりごりです!!


 そしてこれでやっとマ○クが食べられる! ヤホー!!

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